名著探訪 : 実語教 ~ 日本人千年の教科書 NO.2 | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。


名著探訪 : 実語教 ~ 日本人千年の教科書 NO.2

■5.「孝」が"流れるプール"の原動力

「老いたるを敬うは父母の如し」という言葉は、その水流の原動力が、父母への「孝」であることを示している。「人として孝なきものは、畜生に異ならず」という一節を、齋藤氏はこう解説する。

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「孝」という字は前にも説明しました。これは「恩」という気持ち、感謝の気持ちといってもいいでしょう。親に感謝して恩返しをしようとする気持ちです。

 恩を感じて生きるという姿勢を持つと、それは自分自身の心の柱にもなります。「ここまで育ててくれて、ありがとう」という気持ちを持っている人は、自分も強くなれます。そう考えると、恩の気持ちは単に人に感謝するだけのものではなくて、自分自身が豊かになっていくためにも大事なものなのです。[1,p92]
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 これは「孝」がなぜ昔から、道徳の最初の項目として説かれているか、という事に関する見事な説明である。親の子どもに対する愛は無償の愛である。それに気がついて、親の思いを推し量ることができるようになると、周囲の他人にも気遣いができるようになる。

 したがって親の自分への無償の愛に気がつくことが、他人の心への思いやりを抱く出発点になる。「孝」こそが、"流れるプール"の水流を起こす最初の原動力なのである。


■6.「山高きが故に貴(たっと)からず」

 親の期待に応えて、立派な大人になるには、どうしたら良いのか。実語教はその冒頭でこう説く。

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山高きが故に貴(たっと)からず
樹有るを以て貴しとす。

 山は高いからと言って価値があるわけではありません。
 そこに樹があるからこそ価値が出てくるのです。[1,p18]
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 この一節を齋藤氏はこう解説する。

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 なぜ樹があると貴いのでしょう?

 樹を斬って材木にして、家を建てたり、箸(はし)を作ったり、社会のために役立てることができるからです。「何かの役に立つ」ということがとても重要です。そのときに初めて価値が生まれるのです。[1,p19]
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 人も同じで、社会的地位の高い人が偉いのではなく、世のため人のために役立つ人が偉いのである。


■7.「智有るを以て貴しとす」

 どうすれば、世のため人のために役立つ、立派な人になれるのか。第2条は続けて説く。

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人肥えたるが故に貴からず
智有るを以て貴しとす。

 人は太ってふくよかであるといって立派なのではありません。
 知恵があるからこそ立派な人ということができるのです。[1,23]
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 昔は太っているとう事は金持ちのあかしだった。だから、この節は財産を持つ事よりも、智を持つ方が貴い、ということである。人は智を持つことによって、初めて世の中の役に立てるからである。

 第4条では「人学ばざれば智なし。智なきを愚人(ぐにん)とす」として、智のない人は世の中の役に立たない愚人であり、そのためには学ばなければならない、と説いている。

 福沢諭吉の『学問のすゝめ』は、冒頭の「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」という一節のみが有名になって、あたかも「人間はすべて平等だ」と言っているように思い込んでしまうが、それは誤解である。

 諭吉はその後に続けて、世の中には賢い人も愚かな人も、金持ちも貧乏人も、貴人も下人もいるのは、どうしてか、と問うて、こう答える。

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『実語教』に、人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なりとあり。されば賢人と愚人の別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。[1,p2]
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 諭吉は、ここから『学問のすゝめ』を説いていく。その説は「人が世のため人のために役立つ人物になるには、智が必要であり、そのために学問が大切だ」という事で、まさに実語教の教えを下敷きにしているのである。

 江戸時代には、すでに日本人の基礎的教養になっていた実語教の教えが、新しい文明開化の時代にも通用する、と説いたからこそ、『学問のすゝめ』が大ベストセラーとなり、明治日本の急速な発展の後押しをしたのだろう。


■8.水流のエネルギーを取り戻すために

「子どもやお年寄りを助けるのが良い社会」という方向に水流が流れている欧米と日本が近代化にいち早く成功したのは、偶然ではない。そのような水流に後押しされた国民は、世のため人のために役立つ人間になろうと努力し、学問に励む。そのエネルギーが国を近代化し、発展させるのである。

 個人主義教育やゆとり教育が蔓延して、いよいよその水流が弱まってきた過去20年間、我が国が発展のエネルギーを失って、長期停滞に落ち込んでしまったのも当然だろう。現下の諸問題を解決し、より幸せな国を築いていくためにこそ、今まで持っていた水流のエネルギーを回復させなければならない。

「日本人の千年の教科書」と呼ばれる『実語教』が、いままた思い起こされてきたのも、その兆しであろう。

(文責:伊勢雅臣)


■リンク■

a. JOG(602) 外国人の見た「大いなる和の国」
「私たちは日本にくると、全体が一つの大きな家族のような場所に来たと感じるの」
http://bit.ly/YlvNwH


■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 齋藤孝『子どもと声に出して読みたい「実語教」』 ★★★、致知出版社、H25
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/488474988X/japanontheg01-22/


■編集長・伊勢雅臣より

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