尖閣問題―人民解放軍タカ派が狙う台湾・中国「共同抗日」謀略に対処せよ!
2012/07/26/Thu
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■中国軍タカ派の東支那海制覇の夢
南支那海の制覇を急ぐ中国は七月二十四日、周辺諸国と係争中であるスプラトリー諸島(南沙諸島)、パラセル諸島(西沙諸島)、マックルズフィールド堆(中沙諸島)を管轄する三沙市を一方的に設置。これについて「私の提案が高度に重視されたためだ」と喜んでいるのが、軍タカ派のスポークスマン的存在で知られる羅援少将である。
羅援氏は三月に開催された全国政治協商会議で、南支那海での「権益」を守るためとして、行政、法律、軍事、経済、世論の五領域での方策を提案。「行政」面での方策として「南海特別行政区を設置し、東沙、西沙、南沙の三市を設けるべきだ」としていた。
中共中央軍事委員会は広州軍区の要請を受け、三沙警備区も設置したが、これについても「もしそこに敵機が侵入したら、必ず断固として撃墜すべし」と意気軒高。相変わらず「軍タカ派の夢」を語り、周辺諸国を恫喝している。
さてその羅援氏だが、もちろん東支那海に関しても「夢」を語らないではいられない。
七月九日に中共機関紙人民日報系の環球時報や国営新華社が配信した同氏の発言は、「軍の尖閣侵略の夢(戦略構想)」の一端を示すものとして、注目に値する。
「主権は我に属するとのスローガンを行動に移すため」として、行政、法律、軍事、法執行、経済、世論面での提案を行っているのだ。
■「三沙市」に続き「釣魚鎮」を設置せよと建議
そこでは「行政」面に関し、次のように建議する。
―――中国台湾宜蘭県釣魚鎮を設立する。両岸(台中)間には保釣(尖閣防衛)問題で、ある程度のコンセンサスが存在する。そこで釣魚島を以って両岸を結びつけ、大陸、台湾、釣魚島の三位一体の生命共同体、行政共同体を形成すべきだ。
―――両岸軍人は提携して「祖権」を防衛するべきだ。当面は協同作戦を行えなくてもかまわない。それぞれが戦うことで、順々に出撃すると言う効果が生じ、日本を不利な両面作戦へと追い込むことができる。
ここでいう「祖権」とは、「同じ中国人の祖先が残した主権」のことであり、台湾と中国にはそれを共同で守り抜く権利、義務があるとの政治的主張を込めた造語である(羅援氏あたりの発明か)。
中国(あるいは台湾の国民党政権)の尖閣領有の主張の根拠は、十六世紀に中国人が尖閣を発見し、かくてそこは中国領台湾の付属島嶼となったという「史実」である(もっとも当時の中国人は台湾を領有していなかったばかりか、一般にはその島の存在すら知らないでいたが)。
そのため台湾政府はすでに尖閣を宜蘭県の管轄と規定しているが、中国も「祖権」に従い、それを容認しているわけだ。
■台湾取込みのためにも欠かせない中国の尖閣侵略
したがって中国の尖閣奪取の動きは、たんに領土拡張欲や海洋(東支那海)制覇の野望に基づくだけのものではなく、そこには台湾との統一戦線(共同戦線)工作上の策謀もあるということがわかる。
羅援氏の提案は、中国および中国軍部には、台湾と「祖権」奪還で共同歩調を取り、共に「中国人」としてのアイデンティティを確認し合い、台湾と日本(あるいは日米同盟)との間に楔を打ち込もうとの謀略を抱いていることを実証するものなのだ。
そしてこのような謀略を知っているからこそ、李登輝政権も陳水扁政権も、そして現在の馬英九政権も、尖閣問題での中国との協調を避け、日中対立をも静観してきたのである。
ことに李登輝氏は、総統在任中は国内の保釣熱を抑えることに努め、退任後は尖閣が日本領土であることを盛んに強調している。
ところが中国の影響下に転落しつつある馬英九政権は、このところ変化を見せつつある。先頃巡視船を派遣し、尖閣で中国国旗を掲揚するため出航した保釣活動家の漁船の領海侵犯を護衛させたのはその一例だ。羅援氏が「両岸間には保釣問題でコンセンサスが存在している」と述べたのも頷くことができよう。
■構想される法律・軍事・経済面での尖閣奪取戦略
ちなみに、羅援氏の建議をさらに見ると、
「法律」面では「すみやかに釣魚島の領海基線を定めて立法化し、対外公示を行うべし」
「軍事」面では「付近に軍事演習区、ミサイル発射区を設けるべし。かつてそこには米軍の射撃演習情があった。また漁民の拿捕、射殺を回避するため、漁業合作社を作って集団操業を行い、海上自衛人民戦争に打って出る。
民兵、予備役を乗船させ、これ以上漁民に単独自衛の闘争をさせない。軍用機、軍艦を派遣し、領土と漁民を防衛する」
「法執行」面では「速やかに国家沿岸警備隊を創設して海上法執行の主力とすべし。これ以上海監船、漁政船に日本海保の準軍艦との非対象対抗を行わせない。
我々は最早弱さを見せるわけにはいかず、強行に権利を守るべし。日本政府が“悪い子”(尖閣に接近する日本人)を抑えられないなら、我々が代わりに抑えてやる」
「経済」面では「釣魚島経済開発集団を設置し、漁業開発、エネルギー資源開発、観光開発を進める。資金は宝くじなどで集める」
「世論」面では「中国には領有の歴史と法的根拠があることを広範に宣伝し、国連や各国大使館に宣伝資料を配布すべし。新造空母に“釣魚島”と名付けるなどする」
こうした提案は何も羅援氏、あるいは軍タカ派の独創ではないだろう。そのどれもが、中国側がに必然的に構想し、そしてすでに一部は実行に移しているであろう極めて合理的な尖閣奪取の戦略と言えそうだ。
■なぜ世界一「親日反中」の台湾人と提携しない
尖閣問題の「棚上げ」を日本側に要求する中国だが、あの国はそのようにして、日本側の尖閣防衛の強化を控えさせ、その間に尖閣侵略の準備(軍備拡張)を着々と進めていることは言うまでもない。
したがって日本もまた、そうした動きに有効に対抗するための行政、法律、軍事、法執行、経済、世論面で諸施策が求められている。
そしてその必要性は政府、政界、メディア、世論の間でも従来になく強く認識されつつあり、東京都に至っては奇想天外とも言える尖閣購入計画も出打ち出した。
ただそうした中、なかなか語られないのが「台湾」にいかに対処するかだ。
上述のように中国は、台湾に統一戦線工作を仕掛け、「国共合作」「共同抗日」の局面を作り出そうとしている。そのようにして尖閣を奪い、東支那海を制覇し、さらには台湾を併呑して東亜・西太平洋地域を勢力下におさめることを目指しているのだ。
言うまでもなく台湾国民は世界一「親日反中」の人々だ。この人々は中国から「共同抗日」を求められれば求められるほど、あるいは馬英九政権がそれに応じる姿勢を見せれば見せるほど反撥し、日台離間を懸念し、危機感を抱いている。
さらには反撥するあまり、一部では尖閣が日本領土であるとの事実に目を向け始めつつあるのである。
こうした友好勢力の存在を、日本官民はいつまで無視、軽視し続けるのか。
今こそ「尖閣は日本領土である」ことを真摯に伝え、理解を求めるべきではないだろうか。
そして「尖閣は台湾領土ではない」と言うことだけでなく、「台湾は中国領土ではない」との認識もはっきりと示し、その現状の防衛に協力する姿勢を見せれば、台湾国民はきっと日本の誠意を受け入れ、「尖閣の真実」を理解し、国民党・馬英九政権の中国傾斜の抑止に向けて、さらにいっそう立ち上がることになるはずだ。
そして中国の尖閣・東支那海に対する侵略政策は日本だけではなく、台湾と言う新たな隘路に直面することになるはずである。
そうした台湾に対する戦略的な思考を、日本官民は忘れてはならない。
中国が「聯台」で日本を脅かそうとする以上、それに先んじて「聯台」の道を模索するのは、日本の国家戦略上における基礎中の基礎だとは思わないか。
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