異なるアーティストが全く異なる楽曲に,同一のタイトルを付けていることがあります。
ちあきなおみさんの「夜間飛行」は1973年6月25日の発売だそうです。
対して,Led Zeppelin "Night Flight"(邦題「夜間飛行」)が発表されたのは,1975年2月24日のアルバム"Physical Graffiti"発売時です。
実際は,後者が録音されたのは4thアルバム・セッション時なので,おそらく1971年には既に出来上がっていたと思われます。
両者にはタイトル名以外には類似点は一切ありませんが,どちらも素晴らしくよい曲という点では,共通していると言えます。
Led Zeppelinのほうは,ドラムスとオルガンを基調とした上に,凄まじいくらいにあっけらかんとしてオプティミスティックなロバート・プラントのヴォーカルがフィーチャーされています。それこそ宇宙まで突き抜けるかの如きハイトーンが響きまくっておるのでございます。
曲が進むに連れ,サビの決め"Night,Night,Night..."の連呼の強度が有無を言わせず増大して行くのが何とも快感です。ちなみに,この曲においてジミー・ペイジは,ほぼバッキングに徹しています。
一方のちあきさんのほうはと言いますと,ゆっくりゆったりしたリズム&音像の上に,やや後ノリっぽい感じで,落ち着いた中にも艶やかさが薫るヴォーカルが乗っております。この曲の「夜間飛行でこのままずっと,何処へも降りず,この空の果てまで飛び続ける,そして二度と帰らない。」というイメージが,何とも言えない解放感を味わわせてくれはります。
ちあきさんのヴォーカルが後ノリになるのは,とりわけライヴにおいて顕著なようで,歌詞の区切りの末尾がすぐに消えず,後を曳くように伸びる感じが,何とも表現しようのないまったり感を醸し出しています。「悲しみ模様」やあの超有名な「喝采」も,ライヴのほうが圧倒的に,この後ノリ感,というよりも,後曵き感を味わわせてくれるのでございます。
ということで,夜間飛行(Night Flight)は,奇しくも東西の屈指の名曲のタイトルに偶然にも付されていたということが,今宵,判明したと言ってもよいかもしれません。