アポロ17号が月面に降り立ってから既に51年の年月が過ぎ去っておりましたから,2023年の12月のことでございます。九州は長崎県のとある駅のホテルに一泊したときのことでございます。
そのホテルは駅の改札内に受付カウンター以外の全ての施設が内包されているというたいへん珍しい構造になっておりました。チェックアウトの際,わたくし自分の荷物は全て持って出たのですが,改札の外へ出たあとになって,部屋の鍵を忘れたことに気がついたのでございます。
今になって考えてみれば鍵を取りに戻る必要などなかったのかもしれませんが,そのときはそんなことは頭になく,改札の駅員さんに断って再度入場させてもらいました。
ホテルの部屋に戻るためには,いったん発着ホームに出て,その端まで行かなければ,部屋のある階に昇るためのエレベーターに到達できない構造になっておりました。ところが,これがとんでもなく遠いのでございます。いつまでたってもホームは終わらず,おまけにホーム上には飲食店や土産物店などが軒を連ね,空腹状態にあったわたくしは,先に食事をしてしまおうかなどと考え始めておりました。
時刻は既に正午に近く,朝食をとっていないわたくしの身体にとっては,いつ果てるとも知れぬエレベーターへの道のりはあまりに遠く,肩に食い込む旅の荷物の重さと相まって,わたくしを苦しめるのでございます。
もうおわかりでございましょう。せっかく長崎に来ているのだから,ちゃんぽんでもなどと考え,そこでつい食事をしてしまったことが,結果的に命取りとなったのでございます。
食事を済ませホームを再び歩き始めましたが,やはりどこまで歩いてもエレベーターなど見当たらず,今度は逆に満腹のため,歩き続ける気力は早々に失せ,空いていたベンチにいったん腰を下ろせばもう立ち上がることはできません。
往来激しいホームであるにもかかわらず,昨夜までの疲れもあって,わたくしついつい寝入ってしまいました。