落語、大工調べの冒頭では、江戸の風を思わせるフレーズとして、鯉のぼりのことわざが引用される。

 

鯉のぼりは風がないと泳がない。

 

生命現象は物質だけでは成り立たない。風がなければならない。つまり、気象現象によって生命現象が引き起こされる。

地球の自転などの動きによって気圧や気温の差が生まれ、それによって風が生じる。風によって物が動き、生命が生まれ活動する。

 

無と有をつなぐものが、風ではないか。

 

動物は呼吸という風で、体内に空気の循環を起こす事によって、生命活動を維持している。そして、呼吸があるから、意識が生まれる。また、呼吸は意識でコントロールして意識状態を変えることもできる。

 

風によって生命現象が起き、人間が生まれ、意識が生まれ、事を起こし、物が生まれる。このようにして人は、実体のない意識によって、実体として生きていると感じることができるのである。

 

風雨に耐えたり、心地良い風を感じたりしながら、自分はどんな風を吹かせるのか。つまりは、変えられない自然としての人間と、変えられる人間としての意識をどうとらえ、行動にしていくかが人生ではないか。