マンちゃんは、生まれたとき、逆子でした。 

そして、逆子に多いといわれる

股関節の発育不全、

『先天性股関節亜脱臼』がありました。

生後2カ月でレントゲンを撮り、股関節の軟骨の発育が悪いことが判りました。

当時輸入されたばかりだった、

リーメンビューゲルというギプスをはめて治しました。





マンちゃが若い頃どれだけ股関節の疾患とかけ離れた生活をしていたかということを

はじめに説明してみると。





マンちゃはとても活発な子どもだったので、

小学校では1〜6年までずっとリレーの選手。

体育の成績は5段階中の5でした。

中学生の頃はほぼ3年間器械体操部。





中2 の頃SAJのスキー1級を取り、

競技スキーを始めて

アルペンスキー競技の東京都強化選手となり、

中2、中3と全国中学生大会に東京都代表の一員として参加しました。






高校1、2年生の時にも同じようにスキーのアルペン競技でインターハイや関東大会に出場していました。





そんなこんなで

すっかり治ったと思っていたら、

46歳のときに、突然、

股関節に激痛が起こりました。






調べたところ、

この股関節の後遺症、

「股関節の臼蓋(きゅうがい)形成不全による、変形性股関節症・前期」

だということが判りました。




堪え難い痛みがある上に

放っておけば、

数年後には、

人工関節になってしまいます。





人工関節になると、

足先に自分の手が届かなくなるので、

靴下も、ぱんつも

ズボンも、スカートも、

下から履くものは

すべてマジックハンドを使用しないと

はけなくなってしまいます。




おまけに

床に落ちたものも自分では拾うことができません。






足の爪も

自分で切ることは出来なくなってしまいます。





しかも、人工関節は、

東大病院で治験が行われている

アクアラライナー以外は





10年でカップのプラスチックの破片が痛みを引き起こす

人工関節障害が引き起こされ始め、

5年程次第に強くなる痛みに耐えたあと

また激痛の手術をして

入れ替えをしなければなりません。




つまり、15年に一度は入れ替えないとならないのです。






痛みが出た46歳から

85歳まで生きるとして、

2回は入れ替えないといけません。






しかも、

両脚ですから、

計6回、出産より痛いと皆さんが言っていた激痛の手術しなければならないことになります。





片足1本の人工関節が

120万円。

入院費が、別にかかります。






股関節の患者さんは、

整形外科の

上得意になっているのです。






こんなに科学が発達しているのに、

股関節症の患者さんは、

山ほどいるのに、

摩耗しない人工関節を、

これまで作ろうとするメーカーさんは

ありませんでした。





先の事を無視する人工関節だと

骨と融合してしまう素材で作られているために

15年後に入れ替えが出来ない

という悲惨なものまであります。





これは例えば

非常に高齢で15年以内に亡くなる方なら

とても良いと言えるのでしょうけれど、

90歳以下の方には決して薦められないですよね。






「股関節症の患者さんは

98パーセントが女性。





「女性は出産を前提になっていて痛みに強いから、

何度入れ替えしても問題ない。」






というのが、

男性医師たちの見解です。






回転術も人工関節も、

股関節の手術はどれも

硬膜外麻酔をしても

しばらくは

眠れないほどの激痛が伴うので、

患者さんは、

一度あれを体験したら

出来るだけ手術したくないのです。









マンちゃんが入院していた部屋は、

マンちゃん以外は、全員人工関節置換の患者さんでした。





彼女たちは全員、

出産経験があったのですが、

みなさん口をそろえて、

「人工置換の手術は、

出産よりも痛い!」と言ってました。






だから、

最終的には、

人工関節になってしまうかもしれないマンちゃとしても

出来るだけ後に伸ばしたい。






いつまでも、

自分の股関節で、

丸くなって眠ったり、

膝を抱えて床に座ったり、

床に敷いてあるお布団で眠ったり、

狭いお風呂に入ったり、

平泳ぎしたり、

自分の手で

靴下を履いたり、

足の爪を切ったり

パンツはいたり

床の拭き掃除をしたりしたい。






急いで股関節専門の病院をさがし、

予約を取りました。






上手な先生だったので、

週に2回手術していても、

5カ月待ちで、

やっとこさ、

自分の骨を切って回転させる、

特殊な大手術を行いました。





別種の回転術は

別の医師の手術では、

死亡した例もある、

一か八かのカケでした。






マンちゃは無事に手術は成功しましたが、

年齢が手術の適齢を過ぎていたために、

通常の「半年」では回復せず。




まあそれは術前から予想はしていたので、

マンちゃは回復までの期間を2年位と考えて準備していました。





ところがどっこい。

状態は悪くはならないものの、

目に見える形では、

良くもならない・・・





ゆーくり、ゆーくり

良くなっているという感覚がらないまま

回復の先が全く見えず

途中3年間は鬱になったりしながら





結局

都心に一人で出られるようになるまでに、

5年を要しました。







結果的には、

それまでの友人関係をほとんど捨て去って

新しい、

温かくて、

進歩的で、

素敵な仲間たちに、

めぐり合うことができました。





現在は仕事はしていませんが

家にいる時は

痛み止めを使っていません。






月に2〜3回出かける時や

短い旅行に行く時だけ

いちばんゆるい効き目の痛み止め

セレコックス(12時間もつ)を使います。






走る事は出来ませんが、

跛行もなく自然に歩いています。





バスに乗るときや横断歩道では

たまに小走りします(笑)






重いものを持ち運ぶのは苦手ですが、

最近はずいぶん重たい荷物も

一時的には持てるようになり、

自転車での買い物も楽になりました。







お嬢さんのいらっしゃるご家庭で、

もし、「お姉さん座り」(トンビ座り、W字座り)をしているお子さんがいらっしゃったら、

即座に改めましょう。




股関節の臼蓋の発育を

妨げる原因になる事があるからです。





臼蓋形成不全による変形性股関節症は、

42歳以下であれば、

手術で温存は出来ますが、

進行性の疾患ですし、

現在では、

西洋・東洋医学のどちらでも、

治す手立てがないからです。





マンちゃんも、小さなころから、

お姉さん座りをしていたのを思い出しました。







インドの正式な座り方は、あぐらです。

インドにも正座はあります。

ヴァッジラーサナという、

メディテーション・ポーズです。

消化を助ける姿勢でもあります。







でも、

インドでは一般的には、

正座する人はいません。





日本も、昔は胡坐だったようです。






雛人形が、

があぐらで座っているのに、

気づいた人はいませんか?






なぜ、現代の日本にだけ、

股関節に障害がある女性が多いのか、

以下の文章から、解ってくるかと思います。




日本の伝統衣装から袴がなくなり、

着物だけになった時から、

日本の女子は股関節脱臼の脅威に

晒されることになったのかもしれません。





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以下は、

小児股関節疾患では、

現在、日本でトップクラスの

鈴木医師のブログからの引用です。






●以下引用

2015年6月30日。

子供の座位の姿勢について。

「お姉さん座り」(トンビ座り、W字座り)を止めよう。

いままで私は子供の座り方については気にしてなかったのですが、

最近考え方が変わりました。

この半年の間、

私は先天性股関節脱臼の治療を行ったお子さんの

その後の股関節の発育を調べていました。

そこで分かったことは、

股関節の発育(骨盤の発育)は

座位姿勢と深い関係があるということです。

骨盤の上部の横幅が狭くなると

股関節臼蓋の発育も悪くなります。

骨盤の上部の横幅が狭くなるお子さんでは、

多くの場合、

小さいころからいつも「お姉さん座り」(トンビ座り、W字座り)を

していたことが判明したのです。

現在まだ調査中ですので、

断定的なことは言えませんが、

これまでの予備調査でははっきりしています。

そして、

「お姉さん座り」をしていたお子さんは

歩行開始すると、

たいていの場合「内旋歩行」(うちわ歩行、足先を内に向けて歩く)を行います。

「お姉さん座り」が股関節の形成によくないことは、

手術中にも気が付きました。

というのは、

たとえばソルター手術をする場合、

臼蓋を形成させるときは「お姉さん座り」と逆の

「お父さん座り」(あぐら)の姿勢をとらせなければ

効果的な臼蓋形成手術はできないのです。

ひとたび気が付いてしまえば、

「なんだ、そうだったのか」ということだったのですが、

もっと早く気が付くべきでした。

日本の女性の股関節臼蓋形成不全の発生率が高いことは

国際的にも有名であり、

これに関するいくつかの論文もありますが、

私は女性の座り方にその一因があると推測しています。

つまり、われわれ日本人は正座をするのですが、

女性の場合は正座の機会が多く、

また正座は長くできないので、

崩れて「お姉さん座り」になりがちなのです。

骨盤の上部が狭くなる、

という現象は

実は以外な事実とつながっています。

先日骨産道を専門にしている産科の先生と話す機会がありました。

そこで分かったことは、

妊婦が分娩の際に胎児の娩出を無理なく行う為には

骨盤上部が横に広くなくてはならない、というのです。

すなわち、整形外科の望ましい骨盤形成と、

産科学にとって望ましい骨盤形成とは

偶然かどうかわかりませんが、

同じだったわけです。

これを読んだ皆様で

お子様がおられる場合は、

今からでも決して遅くはありません。

お子様がもし「お姉さん座り」をしていたら注意していただき、

できれば「お父さん座り」(あぐら座り)を積極的にさせてください。

女の子の場合、

お行儀という問題はありますが、

そんなことを言っている場合ではないのです。

ところで私は

ときどきバレリーナのお子様の診察をすることがあるのですが、

バレリーナの方は、

骨盤上部の横幅が広く、

理想的な骨盤をしています。

これはどうやらバレーの先生が

「内旋歩行」を禁止していることと関係ありそうです。

また、スポーツも一般的には勧められます。

たいていのスポーツは「外旋歩行」つまり

「あぐら」と同じ格好をするからです。