プラットフォーム 本編
椎名響
響 Episode4 一歩前進
1/10
コンサート当日。
悠月さんから指定された待ち合わせ
場所はサンドリオンのロビーだった。
(今回のコンサートも発表されたと
同時に完売したって聞いたけど)
(さすが北大路悠月。約束通り
チケットを手配できるなんて…)
○○「お待たせしました」
ロビーで待っていた悠月さんと
廣瀬さんに駆け寄る。
悠月「……!」
遼一「……」
(わ、ふたりとも正装してて、
カッコいい)
(やっぱ、オーラが違うな~)
○○「すみません、準備に時間が
かかってしまって…」
悠月「チッ」
遼一「やっぱりな」
私を見るなり、ふたりは
対照的な顔をした。
○○「え? え? 何ですか?」
遼一「お前の服装でちょっとした
賭けをしてたんだ」
「今日も、俺の勝ちだな」
悠月「わかってる。何度も言うな!
これで何勝何敗だよ」
遼一「あー、確か…」
悠月「やっぱ、いい。言うな」
悔しがる悠月さんに廣瀬さんが
肩を抱いて慰める。
○○「また人で遊んでたんですね…」
悠月「あー、くっそ! ほんとなんでお前、
そんな格好で来てんだよ」
○○「そんな格好って…」
(何か変? 友人の結婚式で
着ただけのドレスだし)
(よれてないはずなんだけど…)
○○「気合入れすぎたでしょうか?」
悠月「逆だ、逆」
遼一「その可愛らしすぎる
花束もどうかと思うけどな」
廣瀬さんは私が手に持っていた
花束を指さす。
○○「これは椎名さんに…」
「クラシックのコンサートって
ステージに届けるじゃないですか」
「あれ、やってみたかったんですよね」
遼一「それは無理。俺たち2階の
ボックス席だからな」
悠月「つーか、そんなのどーでもいい。
まずは、その服だろ」
「マーシャ、やっぱ出番」
(え? マーシャさん?)
マーシャ「ゆづちゃんは人使いが荒いんだから。
私もうヘトヘトなのよ?」
悠月「コイツ見てもそう言えんの?」
マーシャ「あら…まあ…」
(なんか『まあ』の部分が
すごく嫌そうなんですが…)
マーシャ「任せてちょうだい、10分で十分よ」
悠月「頼んだぜ、マーシャ」
マーシャ「さ、行くわよ。完璧に
スタイリングしてあげる」
私はマーシャさんに手を掴まれると、
近くの部屋に連れ込まれた。
‐‐‐
Mission
(クラシカルデザインドレスコーデ:3,600pt(300コイン))
‐‐‐
2/10
豪華なコンサートホールに入ると、
入口には溢れんばかりの
花が置かれている。
その前には何台ものテレビカメラが
並び、雑誌記者も集まっていた。
悠月「着替えて正解だっただろ」
○○「はい…」
遼一「ま、○○のキャパじゃ、
あれが限界」
「そのドレス、いいんじゃないの?」
悠月「さすがマーシャだよな。最初、
見たとき別人かと思ったぜ」
遼一「女はみんな怖いねえ」
2階のボックス席に案内され、
着席するとステージが良く見えた。
しばらくすると、ステージの照明だけ
残しホールが暗転する。
ホール中から拍手が起り、
椎名さんが出て来た。
(椎名さん…)
響「……」
静かにピアノの前に座ると、
重厚な音がホール内に響く。
感嘆さえ聞こえてきそうなほど
静まった客席で、心が震えた。
(これが…椎名響の演奏なんだ…。
これが…)
ボックス席の手すりに
乗り出してしまいそうなほど、
私はステージに見入っていた。
演奏終了後。
悠月「おい、泣くなっての」
○○「は、はいっ…うっ…す、すみません…
すごく感動して…」
ハンカチで涙を拭きながら、まだ
感動が身体中を駆け巡っていた。
遼一「こりゃあ、憧れだってのは
嘘じゃないんだな」
(すっごく良かった。クラシックは
堅苦しいって思ってたけど、全然違う)
(なんだこんなに素敵な曲を弾ける人が
あんな人なんだろう…)
悠月「んじゃ、行きますか」
○○「い、行くってどこにですか?」
悠月「決まってるだろ、響のとこだよ。
ほら、行くぞ」
「いつまでもビービー泣いてんな」
○○「あっ」
悠月さんに腕を掴まれると、
関係者入口と書かれたドアを開け
ホールを出た。
3/10
花やプレゼントでいっぱいの
細い通路を抜けた先。
警備員の立つドアを悠月さんは
何てことない顔で開けた。
悠月「よう、響」
(ちょ、ちょっといきなり
入っちゃっていいの!?)
(しかも、警備員さんも止めないし、
顔パスって…)
遼一「お疲れさん」
響「ああ、お前ら来て…」
「お前…」
○○「お、お疲れ様です」
響「公演にまで来るなんて、
本当にしつこいな」
○○「しつこいです。だから
いい加減取材を…」
その時、たくさんの花や贈り物が
並んでいる中に
見覚えのある名前を見つけた。
(週刊オーロラ、立花恵実って…)
○○「立花さんからの差し入れ…?
マイナスイオン発生器って…」
他にも、絵画や観葉植物、
中には高級カーペットまである。
遼一「だから言っただろ、そんな
可愛らしいのでいいのかって」
(あれってそういう意味だったんだ)
(どうしよう…こんな花束じゃ、
全然ダメだったんだ)
悠月「お前はそれがいいと思ったんだろ?」
(そうだ。私、この花の香りは
リラックス効果があるから…)
‐‐‐‐‐
A
○○「つまらない物ですが…」
響「つまらない物ならいらん」
○○「確かに、他の花からしたら
小さいですし」
「実用的でもなく…でも!」
「この花、香りがいいんです」
「疲れた時に、リラックス効果が
あるから…」
‐‐‐
B
○○「立花さんとは…」
響「……」
○○「もしかして、取材受けるんですか!?
それって…差し入れにほだされて…」
響「…お前、相当の馬鹿だろう」
「もしかして、手に持っている
その花…」
○○「あ…」
「この花、香りがいいいんです」
「疲れた時にリラックス効果が
あるから…」
‐‐‐
C
○○「お疲れ様です。
演奏、すごく素敵でした」
「やっぱり本物は違うんだなって」
「鳥肌が今でも消えないくらい
感動してます」
響「…まるでニセモノの演奏を
聴いたことがあるような口ぶりだな」
○○「い、いえ…。あ!」
「この花、香りがいいんです」
「疲れた時にリラックス効果が
あるから…」
‐‐‐‐‐
4/10
響「……」
○○「けど、小さくてすみません。
次からはもっと豪華なものを…」
肩を落とすと、近づいてきた
椎名さんに花束を奪い取られる。
響「花もお前に持って帰られるより、
俺に愛でられる方が嬉しいはずだ」
○○「ありがとうございます!」
響「お前に礼を言われる覚えはない」
「しかし…馬子にも衣装ってやつを
初めて見た」
悠月「だろ。でも響が褒めるなんて
珍しいな」
響「どこをどうしたら、褒めているように
聞こえるんだ」
遼一「俺はアリだね」
○○「あっ」
廣瀬さんに腰を抱き寄せられると
頬をくっつけられる。
遼一「嫌いじゃない」
○○「そうやって、
からかわないでください」
悠月「だってよ。ほら、遼一。
俺たちは帰ろうぜ」
遼一「ああ、そうだな」
○○「え、もう帰るんですか!?」
(まだ感想言い足りないのに…)
悠月「お前は置いて行く。
響に用事があるんだろ」
(え…)
遼一「じゃあな。後はふたりで
よろしくやれよ」
○○「よ、よろしくって…」
ふたりはからかうように笑いながら
楽屋を出ていく。
(用事って…取材のこと…。
私にチャンスをくれたのかな)
響「おい」
○○「はい!」
突然、声をかけられて飛び上がる。
響「いつまでいる気だ、
お前もさっさと帰れ」
○○「帰りません! 今、追い出されても
また来ます」
「企画書を見ていただけるまで…
ずっと追いかけます!」
響「……」
(うわ、すごく嫌そう…)
○○「悠月さんと廣瀬さんが
チャンスをくれたんです」
「今日は簡単には引き下がら――」
響「わかった…」
(え…?)
5/10
どうせまた断られると思った。
だから身構えていたのに
言葉か続かなくなる。
響「取材、受けてやる」
○○「ほ、本当ですか!? 嘘みたい…」
「私、誠心誠意、記事を
書かせていただきます!」
「椎名さんの本当の姿を私に――」
響「ただし」
(え…)
椎名さんは椅子から立ち上がると
私の目の前に立つ。
そして、値踏みをするように足の先から
頭のてっぺんまでを見る。
響「しばらく俺のアシスタントをしろ」
「俺の言う事を聞いて、俺の役に
立てば、取材を受けてやってもいい」
○○「アシスタント…? それで
受けてくれるんですね」
「わかりました。いつから
始めますか? 私は何を…」
響「そんなに嬉しいのか?」
○○「はい、嬉しいです! やっと
椎名さんに近づけた気がします」
響「言っておくが、俺は厳しいからな。
使えないなら切り捨てる」
○○「もちろんです、それはここ数日で
良く分かってます」
響「だろうな」
冷ややかな目をしながらも口元は何故か
不敵に笑っているように見えた。
翌日。
陣内「でかした! やっぱりお前は
何かもってるな」
「めいっぱい張り付いて、
情報持ってこい」
○○「はい。やっと突破口を
開いた所ですから」
「気を抜かないでアシスタントでも
何でもしてきます」
陣内「その意気だ」
○○「じゃあ私、準備しますね」
企画書を手に気合を入れた時。
――♪~♪~♪~
(あ、電話…椎名さんからだ!)
○○「はい! □□――」
響『遅い。俺からの連絡には
3コールで取れ』
○○「そんな無茶な」
響『お前が必要だ。今すぐ
昨日のコンサートホールに来い』
それだけ言うと電話は切れた。
○○「お、お前が必要だって…
紛らわしいっての!」
「って、まずい。急がないと
また機嫌損ねちゃう」
私はバッグを手に街へ飛び出した。
6/10
コンサートホールに着くと、
たくさんの人が出入りしている。
昨夜の賑やかさとは
また別の多さだった。
○○「お、遅くなり…ました…
はぁ、はぁ…」
肩で息をしながら、ホールの中で指示を
出していた椎名さんの横で立ち止まる。
響「遅い。俺を待たせるとはいい度胸だ」
○○「そんな! これでも急いで…」
響「何か言ったか?」
(くっ…、ここで口答えしたらダメ!
根性見せるのよ、私!)
○○「いえ…。お待たせして
すみませんでした」
それでいい、とでも言うように
椎名さんが視線をホールのほうに戻す。
響「さっそくだが、そこの箱を車に運べ」
○○「え、荷物運び…ですか?」
響「荷物運びじゃ不満か?」
○○「い、いえ!」
(私が必要って、そういうことか)
響「終わったら、そこの箱全部だからな」
○○「え、この箱全部ですか!?」
箱は何段にも積み重なって
塀の様になってた。
響「つべこべ言わずに手を動かせ」
○○「は、はい!」
(この箱の中身…ファンの人たちからの
プレゼントやファンレターだ…)
(すぐに捨てたりしないで
全部持ち帰ってるんだ)
響「なにボサッとしてる。さっさとしろ」
○○「はい!」
響「余計な物に触れるなよ」
玄関までは入ったことのある椎名さんの
部屋に初めて足を踏み入れる。
そこには、まるでドラマか何かでしか
見た事ない
洗練された部屋が広がっていた。
○○「すごい…。こんな部屋に住める人が
本当にいるんだ…」
「世界が違いすぎる…」
響「今頃、気づいたのか?
めでたい頭だな」
「花でも咲いてるんじゃないのか?」
○○「そんなこと言っていいんですか?」
「椎名さんだって可愛い趣味
あるじゃないですか」
響「何の事だ?」
○○「だって…」
部屋を見渡すと部屋の片隅に
置かれたケージを見つける。
(いた!)
‐‐‐
Mission(必要発行部数 1,600)
‐‐‐
Special Story 1
‐‐‐
7/10
○○「はじめまして、トゲトゲちゃん」
響「! 勝手に名前をつけるな」
ケージの中でハリネズミが
不思議そうな顔をしている。
○○「トゲトゲちゃん可愛い」
「トゲトゲしてるところがまた、
すっごく可愛いですね」
響「だから勝手に名前を付けるな。
剣山だ」
○○「ケンザン…?」
「それ、もしかしてトゲトゲ
してるから…あの剣山ですか?」
響「…」
(なんて安易な…)
私の質問をわざと無視する椎名さんに
小さく笑うと
ケージの中の剣山に指を近づける。
○○「はじめまして、剣山。
私、○○。よろしくね」
○○「剣山は愛されてるんだね。携帯の
待ち受けにされてるくらいだし」
響「お前、それ…誰にも
言ってないだろうな」
○○「言ってませんよ」
「言ってたら今頃、悠月さんたちが
からかってきてるはずです」
響「…」
「絶対に誰にも言うなよ」
○○「はいはい、わかりました」
響「…お前、調子に乗って…」
必死に眉を寄せ怒る椎名さんに
つい笑みがこぼれる。
(誰にも言うなよ、か…)
(もしかして、これって私だけしか
知らないことなのかな)
響「腹が空いた。ちょうどいい、
腕試しに何か作ってみろ」
「食材は冷蔵庫の物を適当につかえ。
俺は仕事があるから、邪魔をするなよ」
そのまま奥の部屋に
入ろうとして振り返る。
響「スタジオには絶対に入ってくるな」
「用がある時はそこのボタン押せば
中のランプがつくから気づく」
○○「ボタンって、これですか?」
響「今、押してどうする。
ほんとへんちくりんな女だ」
椎名さんはそう言うと
スタジオの中に入ってしまった。
(カレー好きだといいんだけど…)
キッチンで材料を切っていると、
玄関から物音がしたような気がした。
???「響ー。いるんでしょ、響」
(あれ、誰か来た…?)
彩音「あら? やだ、もしかして
響の彼女?」
8/10
(椎名彩音!? ど、ど、どうしよう)
椎名さんのお姉さんを前に私は――
‐‐‐‐‐
A
○○「あ、あの…」
彩音「へえ、響に彼女がね~」
何も言えなくなっていると、
急に彩音さんが笑い出す。
彩音「冗談よ。あなたが最近、響に
つきまとっているっていう記者の方?」
「響がすごく怒ってたから、
気になってたんだけど…」
「そう、部屋にまで上げるなんて…」
「しかも食事まで作らせて…」
○○「私はただ、頼まれて…」
彩音「ふーん、それは健気ね」
「そうだ、いいこと教えてあげる」
「メニュー、カレーでしょ?
付け合わせは――」
彩音さんはいたずらっぽく
微笑むと私に耳打ちする。
彩音「…わかった?」
○○「はい…」
彩音「じゃあ、私は記者さんがいるなら
今日は帰るわ。お邪魔しちゃ悪いしね」
○○「え、あの…」
(絶対に勘違いしてる…)
彩音さんは合鍵を持つ手をヒラヒラ
させながら、部屋を出て行った。
‐‐‐
B
○○「違うんです。私はただの
アシスタントで…」
彩音「アシスタント? 初耳ね」
彩音さんは訝しそうな目で私を見る。
○○「椎名さんの記事を
書かせていただくには」
「アシスタントをしなければ
ダメだと言われたので…」
彩音「あら、じゃあ記者さんなの?」
○○「はい」
彩音「ふーん、それは健気ね」
「そうだ、いいこと教えてあげる」
「メニュー、カレーでしょ?
付け合わせは――」
彩音さんはいたずらっぽく
微笑むと私に耳打ちする。
彩音「…わかった?」
○○「はい…」
彩音「じゃあ、私は記者さんがいるなら
今日は帰るわ。お邪魔しちゃ悪いしね」
○○「え、あの…」
(絶対に勘違いしてる…)
彩音さんは合鍵を持つ手をヒラヒラ
させながら、部屋を出て行った。
‐‐‐
C
○○「違うんです。私、週刊シンデレラの
記者をしてまして…」
彩音「記者さんが響のご飯を作るの?」
○○「えっと、これは…記者として
信用してもらうためにお手伝いを…」
彩音「ふーん、それは健気ね」
「そうだ、いいこと教えてあげる」
「メニュー、カレーでしょ?
付け合わせは――」
彩音さんはいたずらっぽく
微笑むと私に耳打ちする。
彩音「…わかった?」
○○「はい…」
彩音「じゃあ、私は記者さんがいるなら
今日は帰るわ。お邪魔しちゃ悪いしね」
○○「え、あの…」
(絶対に勘違いしてる…)
彩音さんは合鍵を持つ手をヒラヒラ
させながら、部屋を出て行った。
‐‐‐‐‐
夕食のセッティングをしてから
壁のボタンを押した。
だけど、ドアが開く事はなく、
もうすでに30分は過ぎている。
○○「剣山、ご主人様、出てこないよ?」
「押せば出てくるって言ったのにね。
あれ? 剣山? あっ!」
少しだけ開いていたケージから
剣山が飛び出す。
○○「えっ、剣山!?」
「ま、待って!」
走る剣山を追いかけ、
部屋の奥へと向かった。
9/10
(嘘…! バスルームの方に
いっちゃった)
○○「お邪魔しまーす…けんざーん…
いるんでしょ?」
「お願い出てきて。お願いだから」
――ガサゴソガサゴソ
洗濯物の入ったカゴの中から
物音が聞こえ、床に座り込む。
○○「剣山、ここ? 出られなく
なっちゃったの?」
座り込んだままカゴの中に手を入れる。
(どこ…? こっちかな、こっち?)
洗濯物を取出しながら、
カゴの中を覗き込む。
???「おい、何してるんだ」
○○「えっ、あ、これは…」
背後から聞こえてきた声に慌てて
正座するとカゴを背に隠す。
○○「ちょ、ちょっとお掃除を…」
手にしていた布を振って見せる。
響「お前、それ…」
○○「それって…」
椎名さんの視線を追うと
私の手に握られていた布を見ていた。
(これって…まさか…)
広げてみると黒の
ボクサーパンツだった。
○○「わあっ! 違うんです!
こ、これにはワケが!!」
響「とうとう、下着まで
漁るようになったのか」
○○「ですから、これにはワケが…あっ」
カゴから出て来た剣山が今度は
私のスカートの中にもぐりこむ。
○○「ひゃっ!! け、剣山!? こら」
スカートを持ち上げると思いっきり
下着が丸見えになった。
響「お前、なんてものを見せるんだ!」
○○「え、あっ! わああっ、み、見た?」
響「馬鹿が…」
真っ赤になりながらうずくまる
私を見て、
椎名さんは呆れたような顔をしていた。
○○「どうぞ」
カレーを盛り付け、
椎名さんの前に置く。
響「カレーか」
○○「カレー粉があったので、
お好きなのかと思いまして」
――ぐう。
椎名さんにスプーンを渡すと、私の
お腹が自分も食べたいと主張した。
(ちょっと、なんてタイミング…)
響「…お前も食べるといい」
○○「へ!?」
そんな事を言ってくれるとは
思ってもいなくて、
声がひっくり返ってしまう。
10/10
響「なんだ、いらないなら帰れ」
○○「い、いります。いただきます!」
「あ、あとこれも、どうぞ」
「カレーの付け合せは、
やっぱりらっきょうですよね?」
(さっき、彩音さんがそう
言ってたけど、本当なのかな?)
響「……」
響さんは何も言わず黙々と食べる。
○○「お味ははどうでしょう?」
響「まずい」
(あ、そうですか。でも、そのわりに
食べてますけどね)
○○「食後のコーヒーも淹れますね」
響「お前…」
○○「はい?」
「あ、私も食べますよ。椎名さんに
コーヒーを淹れてから」
響「……」
(一応、気にはしてくれてるんだ…)
食事を終えた椎名さんにコーヒーを
出すと、私もカレーを食べる。
その間、椎名さんはソファで
写真集を眺めていた。
(あれは風景ばかりの写真集…?)
響「綺麗だ…」
○○「え?」
(突然、なに? 綺麗って…)
響「お前に言ったんじゃない。
この景色のことだ。」
○○「そんなこと分かってます。
急だったので驚いただけです」
椎名さんは写真集を掲げて見せると、
呆れたように笑う。
響「お前には分からないだろうな。
こういう景色の良さが」
○○「私だって、綺麗なものは
綺麗だと思います」
「椎名さんの曲も――」
響「食べ終わったならさっさと帰れ」
(うっ…。取材っぽくなるとすぐ
機嫌が悪くなるんだから)
黙り込んでしまった椎名さんを横目に
食事を終え、片付けもすました。
○○「じゃあ、私はこれで失礼します」
響「まだいたのが不思議なくらいだな」
(はいはい、邪魔なんですね)
○○「椎名さんはまだお仕事ですか」
響「当然だ。締め切りは待っては
くれないからな」
(これからまだ仕事。本当、
ストイックな人だよね)
(休みなんてないんじゃないの?)
○○「じゃあ、これで…」
響「おい、俺が呼んだらすぐに来いよ。
並程度に食事は作れそうだからな」
椎名さんはそう言うとまた
スタジオに入って行った。
○○「ご飯ね…」
(これじゃ、アシスタントというより
家政婦?)
(ご飯しかしてないから、
メシスタントかな)
(まあ、いっか。何事もなく
終わったしね)
○○「おやすみ、剣山。またね」
剣山のケージに触れた後、私は
リビングの電気を消し部屋を出た。
To be Continued...
2015-10-** **:**:**
From:椎名響
Title:『食後のコーヒー』
You got a mail
淹れておいたのか?
まあまあの味だが…。
点数で言うなら60点か。
俺は90点以上じゃないとコーヒーとは認めない
からな。
『Next Story』
「…くすぐっ…た…もう…あんっ」
響「馬鹿! 早く取り出せ! いい加減に
しないと服を剥ぎ取るぞ!」
少しづつ近づく距離――
響「綺麗だろ。写真だけじゃ感じられない
からな」
時折見せる柔らかな表情――
「ちょ、ちょっと椎名さん…?」
響「…ん…なんだ…もっと、来い…」
アシスタントは肉体労働!?
次話「音楽への熱意」