はい、今日も10年前にヤングあるが書いたメルマガの続きです。

シリーズ途中の「愛ってなに」ともつながる内容。

今回から読んだ人は1回目から読んでね。
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ではどうぞ~☆

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2001.11.1

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私、何が引っかかるんだろう?
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月曜日になっても、支配人から電話は来ませんでした。

問い合わせようかな、とも思いましたが、
向こうの出方を待ってみることにしました。

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実は、ホテルで5人がかりで責めているときから、
私の中にほんのわずかに、違和感があったのです…。

自分でもそれが何か自覚できないくらい本当にわずかな…

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フロントでの返金の後、
残った友人の弟2人と勝利に酔っていました。

「正義は勝つ!」

と言って、3人でげらげら笑いながら、
美味しいといううどん屋さんに向かいました。

「そりゃみんな、お金は欲しいよねー。気持ちはよーく分かる!
でもやり過ぎちゃったねー。6倍はや・り・す・ぎ!」

「うまく5割増くらいにしとけばずっと気付かれなかったのにねー」

「でもリッツカールトンの部屋にあったフリスク、700円だったよ!!」

「うそー!ぼったくりじゃーん!」

などと馬鹿笑いして、みんな上機嫌でした。

しかし、何かちょーっとフォローしてあげたくなって、
「でも、あのフロントの男の子、ちょっと可哀想だったねー」
と言いました。

「だって、バイトみたいじゃん。
機械が6倍もとってたなんて何も知らなくて、
いきなりガンガン言われてさあ」

と言うと、2人も

「確かに、半泣きになってたよね」
「悪いのは支配人なのにねえ」
「ちょっと痛々しかったねー」

と同意していました。

私が「あのMくんと飲みに行きたいなあ」と言うと、
2人も
「支配人の愚痴とか聞いてあげよっか」
「ごめんね、って言いたいね」
と言っていました。
やはりみんな、同じ気持ちみたいでした。

「でも、フロントに一人しかいない以上、
彼がホテルの代表なんだから
スタッフの教育がなってなかったってことだね」

と落ちつきましたが。

実は、私は、フロントの坊やを責めているときに
あまり口を出せませんでした。

もちろん、私が言わなくても、
私を守るためにみんなが言ってくれていたというのも大きかったし、
もしかしたら、本当はみんなと同じくらい
私も口を出していたかもしれません。

でも、何か言いづらさ、のようなものは感じていました。
心の中で何かが少し苦しかったのです。

他の4人には聞いていないのでわかりませんが、
もしかしたらそう思っていた人もいたかもしれません。

もちろん、不当に払わされた料金は絶対に返してもらいたかった。

そうするまでは絶対に泣き寝入りしないで
理詰め理詰めで話をしていたでしょう。

でも、なにか、しこりのような引っかかるものがあったのです。

そして、マスコミで報道するという手段や、
ゆすって金をとるという手段について考えているときに、
そのしこりのようなものは
意識の水面下でますます大きくなってきたように感じました。


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ついに電話が来た!
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翌火曜日、友人と昼ご飯を食べて店の外に出た時に
携帯電話の着信音が鳴りました。

ハッとディスプレイを見ると、未登録の06から始まる電話番号が。

「来た!」と、どきどきしながら通話ボタンを押しました。

その電話は支配人からではなく、例のフロント坊やからのものでした。

「なんで支配人からかけて来ないんだ」といぶかしく思いながら
こちらからはまずは何も詰め寄らずに、相手の話を待ちました。

「先日は申し訳ございませんでした」と話す彼の声は、
言葉とは裏腹にとてもすがすがしくなっていて、
ショックから立ち直ったようでした。

意外と図太いなあと思いながら「はい」と答えると、

「料金の計算方法なんですが、
置いてある機械に組みこんでいたNTTの通話料金のデータがですね、
機械を導入した昭和63年当時のままになっていた
そうなんですよ」

とさわやかに説明しました。

(はーっ、なるほど、そういう理由だったのか。思いもよらなかった)

と思いながら、

「ということは、今まで10何年間、
昔の高い料金をみんなに払わせていたということですよね?

積もり積もって何百万になっているかもしれない
ということなりますね?」

と聞くと、

「はぁ…。申し訳ございませんでした。
でも、もう機械を交換させて頂きますので。
本当に申し訳ございませんでした」

とまた最後の方の口調が明るくなっていて、特にへこみもしません。

きっと支配人が月曜日に調べて、
『これから機械を変えれば今までの分はなんの制裁も受けない』
ということを知ったのかな。

だからフロント坊やに
『俺が出るまでもない。原因を説明して、後は謝っとけば大丈夫だから』
と指示したんだな。
それでフロント坊やもすっかり安心したんだな、と思いました。

この、「謝っておけばいい」というのは、
PHSのサービスセンターのお姉さんをやっていた時に
自分が毎日していたことですから、よくわかるのです。

「ごねてる奴には頭を下げればそのうち収まる」というのは
上から指示もされたし、経験でもすっかり身についたことです。

だからこそ、それで収まると思われて、
口先で何度も謝って終わり、
「のど元過ぎれば」になられることがすごく嫌だったのです。

なぜなら私は、自分個人のことをいつまでも怒っているのではなく、
ゆえに謝罪を求めていた訳でもなかったのですから。

私は結構、自分さえよければいい、めんどくさいのイヤ、
のインドア派で、うちにこもり系だと思っていたのですが、
めずらしく「正義感」のボタンを押されてしまったのです。
(昔から自分がボられた場合は、返すまで諦めなかったのですが…)

何かにとり憑かれたようになっていました。

だって、何も知らないでみんな6倍の料金を払っていたんですよ。
ホテルが印刷してきた紙に書いてあるのだから、と従順に。

それはもちろん、気付かない人、気付いても気が弱くて言えない人
にも責任はあります。

でも、私が見つけてしまったからには
「ごねてるめんどくさい奴をなだめ終わった。やれやれ」
という話で終わらせてはならなかったのです。

ギャフンと言わせたかったのです。

「しめしめ」「ギャフン!」にしたかったのです。

「してやった」とこちらが納得するまで懲らしめたかった。

してきたことに見合うくらいの罰を与えたかったのです。


10数分だけ我慢して謝り続ける、くらいでは済まないくらいの
累計金額にのぼっていると思ったのです。

そこで最終兵器(と勝手に思っていたこと)を発動しました。

つまり、

「今までずっと法外な料金取りつづけてたんでしょ?
謝ったということは、完全に認めたと言うことですね。
実は、こっちはマスコミなんですけどねえ。
記事にさせてもらうこと考えてるんですけどねえ」

と言いました。

ドラマみたいに…。どきどきしながら言っちゃいました。

向こうの反応はあまり覚えていないのですが、
つまりあまり反応がなかったのでしょう。
「はあ。はあ」という感じだったのでしょう。

「ということなので、では」

と電話を切り、再び頭はぐるぐると回転を始めました。


次回(明日発送)、「拘置所の塀沿いで…」に続きます。

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この、「昭和63年からそのままになっている」という理由、
本当に思いもよらなかったし、すごく納得&拍子抜けでしたよ。

ではまた明日!