■坂本龍馬小説知名度No.1のコミカライズ
「竜馬がゆく」
原作:司馬遼太郎
漫画:鈴ノ木ユウ
坂本龍馬を好きになった切っ掛けといったら、龍馬ファンの間で多いのが、司馬遼太郎先生の小説「竜馬がゆく」と小山ゆう先生と武田鉄矢さんの「お~い!竜馬」、それから大河ドラマの「龍馬伝」の三つが非常に多いですが、その中で最も古いものが「竜馬がゆく」になります。
司馬遼太郎原作「竜馬がゆく」は、坂本龍馬人気に大きく貢献した名作です。
そして、先日2022年4月28日発売の週刊誌「週刊文春」にて、新しく連載が始まった漫画があります。
その作品こそが司馬遼太郎先生の「竜馬がゆく」のコミカライズ作品です。
漫画を執筆されるのは、過去にドラマ化もされた人気産婦人科医療漫画「コウノドリ」で知られる鈴ノ木ユウ先生。
「竜馬がゆく」がコミカライズされるのも今回初めてですが、鈴ノ木ユウ先生の表現の仕方がとても面白く、一話から魅力溢れる作品になっていました。
鈴ノ木ユウ先生は、「漫画化するにあたり何度も小説を読み返しました。司馬先生が何を伝えたかったか、何を後世に残したかったのか、を常に考えながら描いていきますので応援よろしくお願いします」と語っており、とても期待度の高い作品です。
■スクエニファンタジー龍馬
「BAT×DRAGON」
作者:林 ふみの
スクウェア・エニックスのウェブコミック配信サイト『ガンガンONLINE』で2010年3月18日更新から連載されました。
コミックも全二巻で非常に短いですが、発想がとても面白い作品です。
よく、現代人が現代の知識や技術を持って幕末にタイムスリップするという物語は目にしますが、こちらは戦国時代の大名の子がタイムスリップして未来の幕末に転移してしまうというものです。
そのタイムスリップしてしまう大名の子が、「長宗我部元親」です。
長宗我部元親と聞くと、坂本龍馬ファンの方はお気づきかもしれませんが、後に土佐を統一して土佐の大名となる武将です。
この長宗我部の家臣こそが、幕末で坂本龍馬達の身分である下士のご先祖です。
まだ脆弱な長宗我部元親が、幕末へタイムスリップして坂本龍馬と出会う事で成長する一風変わった作品です。
話の展開が楽しみであった為に、二巻で終わってしまった事が悔やまれますが、作者の林ふみの先生は、現在異世界ちゃんこという作品を連載中です。
また、このBAT×DRAGONが連載していた「ガンガン戦-IXA-」という雑誌では、2010年夏の陣号で表紙をディズニーツイステッドワンダーランドのキャラクターデザインを担当されている枢やな先生が坂本龍馬のイラストを描かれた事でも有名です。
■現代にタイムスリップした武市半平太
「サムライせんせい」
作者:黒江S介
こちらは坂本竜馬の親友である武市半平太が、現代にタイムスリップして、現代で学習塾をすることになるのですが……。
作者の黒江S介先生も「竜馬がゆく」が好きという事もあり、基本的には竜馬がゆくがベースになっており、度々幕末の回想録では「お~い!竜馬」からインスピレーションを得たのだろうなと思わせられるシーンがあります。
そして何よりこの作品の魅力は、主人公を坂本龍馬ではなく、武市半平太にした所にあると思います。
武市半平太というと、岡田以蔵を使って暗殺を繰り返した悪人といったイメージが先行してしまいがちですが、史実の武市半平太は、とても優秀で武士の鏡の様な存在だったのだと思います。
統率力や政治力にも長けていましたし、もし処刑されずに生きていたら、長州藩の偉人と肩を並べ明治以降、国の要職についていたのだと感じます。
岡田以蔵の人斬りを指示した事に関しても、現代の物差しで計れば殺人かも知れませんが、当時の人からすれば、人斬りは言わば水面下での戦争でした。
そのような武市半平太が、現代にタイムスリップしたらどのように感じるのか?
またどのように生きようとするのか?
このサムライせんせいは、とても読みやすく武市半平太と坂本龍馬を取り巻く偉人達が紹介されています。
■刀剣に宿ったジャンプヒーロー
「活劇刀剣乱舞」
原作:刀剣乱舞-ONLINE-
作画:津田穂波
「活劇刀剣乱舞」は、月刊少年ジャンプを全身とするジャンプスクエアで津田穂波先生により連載されていた、EXNOAとニトロプラスが共同製作したPC版ブラウザゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」を原作とする歴史SF時代劇漫画です。
「刀剣乱舞-ONLINE-」とは、現在より183年先の未来西暦2205年、「歴史修正主義者」という過去へ干渉し歴史改変を目論む犯罪集団に対抗する為に、時の政府はある部隊を編成します。
それは物に眠る想いや心を目覚めさせ力を引き出す能力を持つ「審神者」(さにわ)と呼ばれる者を主とし、その「審神者」の力によって、刀剣より生み出された付喪神「刀剣男士」を戦闘員とした部隊です。
付喪神とは「陰陽記」に記される道具は100年という年月を経ると精霊を得てこれに変化することが出来るというもので、人の及ばない力を持っています。
そして、「刀は武士の魂」と言われる通り、この付喪神である刀剣男士も元の持ち主の影響を多分に受けています。
こういった刀剣男士達が、未来を守る為に、審神者の命で歴史修正主義者率いる鬼の様な姿をした「時間遡行軍」と戦う時空警察の様な物語です。
そして物語後半では、陸奥守吉行が坂本龍馬を救出に向かう展開があるのですが、これが感動する良いシーンになっています。
陸奥守吉行は近江屋で坂本龍馬が暗殺される際に、龍馬を殺そうと斬りかかって来た刺客の一太刀を受けた刀でした。
その時は、相手の刀で陸奥守吉行の鞘が割れ刀身が欠けてしまい、龍馬の頭部へ深手を負わせてしまいます。
結果的に、最初の横凪ぎの斬撃と、その陸奥守吉行で受けた一太刀が致命傷となり、龍馬は絶命します。
龍馬を守ることが出来なかった。
陸奥守吉行はその事をずっと悔やんでいるという事も、物語の見所です。
またジャンプ作家で活劇刀剣乱舞の作画の津田穂波先生は、刀剣乱舞-ONLINE-のキャラクターデザイナーのうちの一人です。
■相楽総三、坂本龍馬の意志を継ぐ物語
「皇国の緋色」
原作:月岡帆恣郎
作画:田中ひかる
スクウェア・エニックスが出版している『月刊Gファンタジー』にて、2013年4月号から2015年5月号まで連載された幕末ファンタジー漫画作品です。
あらすじは、弟の宮坂弥生と共に高校剣道の頂を目指す主人公・宮坂虎銕。
主人公・宮坂虎銕は幕末で失敗を繰り返しながら大切な事を学び、少しずつ英雄へと成長していきます。
物語は全25話で、コミックも全4巻と巻数は少ないものの、上手く纏められ、大変完成されたストーリーは、内容の濃い読んでいて胸にささるとても素晴らしい作品になっています。
私は隠れた名作だと思っており、可愛らしい絵柄もあり、もしこの作品がアニメ化をしていたら、若い年齢層にかなり人気が出たのではないかと感じます。
また赤報隊の相楽総三というと、るろうに剣心にも登場しますが、民に「年貢半減令 」をうたって惑わし、新政府から「偽官軍」として処刑されたというイメージが一般的ですが、はたして本当に偽官軍だったのでしょうか?
相楽総三はどういった想いで「年貢半減」を掲げたのか?
同じ時代を生きた坂本龍馬が創りたかったものは何だったのか?
幕末好きな方にも、歴史に興味が無くてもファンタジー作品が好きな方にも、どちらにもお薦めな作品です。
作画の田中ひかる先生は、他にも刀剣乱舞-ONLINE-アンソロジーコミック〜スクエニの陣~でも作品を描かれています。
■番外編 不殺の人斬り
「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」
作者:和月伸宏
多くの方がご存知かと思いますが、近年俳優の佐藤健さん主演で実写映画化もされた、週刊少年ジャンプで連載されていた大人気漫画です。
和月伸宏先生は、司馬遼太郎先生の大ファンで、「燃えよ剣」「新選組血風録」「竜馬がゆく」が大好きで「幕末」の漫画か描きたいと思った事が始まりだそうです。
るろうに剣心の登場キャラクター達も、この三作に登場する人物に、和月先生の趣味のアメコミキャラクターを混ぜたキャラクターデザインになっており、剣心の恋人・神谷薫は、坂本龍馬の許嫁の千葉さな子がモデルになっています。
そして、この「るろうに剣心」という作品に坂本龍馬は登場するのでしょうか?
実は非常に関わりは薄いですが、るろうに剣心に坂本龍馬は登場しています。
ただ、原作漫画は名前のみの登場と完全版のカバー裏で設定画として登場しているのみで、キャラクターが動いたりしゃべったりはしていません。
ところがアニメの方では、一応登場をしています。
ただし、ワンシーンのみで、直接的には物語に関係は無い為、よっぽどの龍馬と剣心ファンで無ければ気付きません。
ただ、この「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」は、国を想った志士達が、どのように「幕末」を生きたのか?
また、どのように「明治」という時代を造ったのか?
そういった時代背景を知れる、非常に素敵な作品です。
坂本龍馬の登場は少なくとも、龍馬ファンなら楽しめる作品だと思います。