Happy Valentine♡…battle!?
ここは花丘の国城内。
良く晴れた空に、慌ただしい足音が響き渡る。
バタバタバタバタ!
お涼 「あら?この足音は・・・」
冴 「お涼~~~~~っ!!!」
お涼 「やっぱりw」
走ってきたとたんに話し出す冴。
冴 「ねぇ!聞いてよ~~~!!!」
お涼 「冴さま。どうしました?まだ巳の刻前(午前九時前)ですよ。」
冴 「めっちゃムカつくんですけど!!!」
お涼 「何がです?」
冴 「利明様がね、」
お涼 「バレンタインデーなのに冴様を置いてお出かけ、ですか?」
冴 「お涼も知ってたの?!」
お涼 「えぇ、まぁ。」
冴 「なんで妻の私に内緒だったわけ~!?」
お涼 「妻だからじゃないですか?」
冴 「えぇ?」
お涼 「前もって言えなかったんですよ。
バレンタインデーにアイドルのイベントに行くだなんて、反対されるに決まっています。」
冴 「うん、絶対反対。チケットビッリビリにする。」
お涼 「だから、当日まで隠したんでしょう。」
冴 「えぇ~~~~~しんじられな~~~い。
せっかくチョコレート用意したのに~~~」
お涼 「夕刻になれば帰ってくるでしょう?」
冴 「昼からニコニコデートしたかったの~~~!!」
お涼 「それは残念でしたね。
もう諦めて、夕刻まで待つしかないですね。」
冴 「あ~~~ムカつく!!」
お涼 「ちなみに、ムカついてるのは利明様ですか?」
冴 「お松に決まってるじゃん!!」
お涼 「でしょうねw」
冴 「なんでわざわざバレンタインデーにイベントするわけ?」
お涼 「ファンのためでしょう?」
冴 「いや、私への当てつけだね!利明様を奪う気なんだよ。」
お涼 「人様の旦那様をですか?」
冴 「自分に振り向かせて、自分の価値を確かめる。
そういう女っているじゃん。」
お涼 「でもお松さんにとっては、利明様は一ファンでしょう?」
冴 「いやいや。利明様は花丘の国次期当主だよ?
そのことは周知の事実!
お松は、正室である私の座を脅かそうとしてるんだよ!」
お涼 「ここは大奥ですか?
近年稀に見る、女性に真面目な利明さまですよ?
側室を迎える気はなさそうですけど。」
冴 「いやいやいや。真面目だから怖いの!
あんなにアイドルに熱心になるなんて、いつ恋心に変わるかわからない!
お松の策略に違いない!
あ!どこかの国のハニートラップかもしれない!!」
お涼 「冴様、ドラマの見過ぎですよwww」
冴 「あ~もう!!あんなのの何処が良いわけ?
超ぶりっ子アイドルじゃん。」
お涼 「お松さん、可愛いじゃないですか?」
冴 「え~~~?!」
お涼 「歌も踊りもお上手ですし。先日は城下町のお祭りに出演していましたが、お話も達者で面白かったですよ。」
冴 「へぇ~~~」
お涼 「興味なさそうなお返事ありがとうございますwww」
冴 「なんかイベントで、ファンの皆にチョコレート手渡しがあるらしいよ。
こ~~~んなちっさい箱の。」
お涼 「アンチこそ調べているものですね。」
冴 「私はめっちゃデカいチョコ用意したもんね!!!」
お涼 「大きさで張り合いましたかwww」
冴 「あぁあ~~~今日暇になっちゃったじゃん。」
お涼 「そうですね~。」
冴 「お涼は、今日の予定は?」
お涼 「私も、実はイベントに行くのです。」
冴 「そうなの!?純之進は?」
お涼 「あぁ、うちの旦那さまは、国境の警備に出ておりますので。」
冴 「あ~そうだ、そんなこと言ってた!
純之進、めっちゃ嘆いてたわ!
利雅さまに、またKY発言しちゃったんだろうなwww」
お涼 「純之進さまのKYっぷりにも困ったものです。
今日に限ってはラッキーでしたけどね。」
冴 「お涼、何のイベントに行くの?」
お涼 「私の大好きなBL漫画のイベントです。」
冴 「出たなBL!」
お涼 「そのBL漫画が、この度百花繚乱一座で舞台化が決定いたしまして、そのイベントなんです!」
冴 「百花繚乱一座も良くやるね~」
お涼 「そこで、来場者にチョコレート手渡しプレゼントもあるんですよ!!」
冴 「ん?メンズからチョコもらうの?」
お涼 「冴様。女子が男子にチョコレートを渡すのはこの国だけです。
よその国では、男子も女子にプレゼントするそうですよ。」
冴 「そうなの!?」
お涼 「はい。」
冴 「え~いいな~。」
お涼 「利明様にもその話をしましたけどね~」
冴 「利明様、そういうところ察しないからな~・・・無いな。」
お涼 「まぁwwwww」
冴 「私も百花繚乱座のイベントに付いていこうかな。」
お涼 「断ります。」
冴 「え?なんで?」
お涼 「冴様の推しはどなたですか?」
冴 「推し?」
お涼 「作土さんでは?」
冴 「ん~まぁ。」
お涼 「ではNGです。」
冴 「どういうこと?お涼は、大気のファンじゃなかった?」
お涼 「そうです。しかし、この度のBL作品では作土さんの役が好きなのです。」
冴 「じゃあ一緒に応援したらいいじゃん。」
お涼 「ダメです。私は、同じ人を好きな方とは、ご一緒しかねる主義なのです。」
冴 「えぇ?よく見るやつ~、そういう友達募集~。
『当方○○さんのファンです。○○さんファン以外の友達を募集してます~』ってやつ~~~」
お涼 「そういうことです。」
冴 「お涼も意外とめんどくさいねwww」
お涼 「冴様ほどでは御座いません。」
冴 「そんなそんなご謙遜をwww」
お涼 「冴様に比べたら、私など足元にも及びませんwww」
冴 「またまた、」
尚雅 「どっちもめんどくさいですよ!」
冴 「尚雅。」
お涼 「尚雅どの。」
歩いてくる尚雅。
尚雅 「まったく。ここにいると思いましたよ、冴様。」
冴 「どうしたの?」
尚雅 「どうしたじゃありませんよ。巳の刻半(午前十時)から、小春お義母様とお茶のお稽古ですよ。」
冴 「あ!そうだった!忘れてた~!」
お涼 「これで、午前中は予定が埋まりましたねwww」
冴 「笑い事じゃないよ~。お茶、苦手なんだよね~。」
お涼 「お義母様は冴様に会うのが楽しみなのですから、
稽古というよりは、お話相手という感じで向かえば良いのでは?」
冴 「そうかな~。お義母さま、なんだか完璧で緊張しちゃうんだよね。」
お涼 「冴様も緊張することがあるのですね。」
冴 「そりゃあるよ~~~」
尚雅 「さぁ、冴様。準備もありますし、行きますよ。」
冴 「はぁ~い。じゃ、お涼、イベント楽しんできてね。」
お涼 「はい。」
走り去る冴。
尚雅 「お涼さん、ではこれで。」
お涼 「尚雅どの。」
尚雅 「はい?」
お涼 「今日は、冴様を頼みましたよ。」
尚雅 「まぁ、護衛なんで。いつものことですけど。」
お涼 「今日は、バレンタインデーですよ?」
尚雅 「そう、ですね・・・。」
お涼 「利明様も私も予定があって、冴様のお相手が出来ません。」
尚雅 「はぁ。」
お涼 「午後は冴様とのデート、楽しんでくださいw」
尚雅 「デ、デート!?」
お涼 「そうなると思いますよwww」
尚雅 「お、俺は、いつも通り冴様の傍にいるだけです!」
お涼 「他人から見れば、バレンタインデーに仲良く二人で歩いていたら、デートにしか見えませんけどね。」
尚雅 「ちょっと、お涼さん!」
お涼 「今日は、冴様を笑顔にする使命を全うしてください。
淋しい思いをさせないよう。」
尚雅 「は、はぁ。」
お涼 「あなたにしかできないことですから。」
遠くから、冴の声が聞こえる。
冴 「尚雅~!早く行かないと~!」
尚雅 「はい!今行きます!」
お涼 「頼みましたよ。」
尚雅 「よくわかりませんけど、分かりました。」
お涼 「どっちですか?www」
尚雅 「わかりましたよ!では。」
軽く会釈をし、走り去る尚雅。
お涼 「冴様のことですから、尚雅殿にもチョコレートを用意しているはずです。
明日の尚雅殿の顔が楽しみですね。
相変わらず、からかい甲斐がありますね~www」
今日はバレンタインデー。
それぞれの楽しみが始まる。
おわり