神護かずみ ノワールをまとう | 花の本棚

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本を選ぶときの参考になれば幸いです

神護かずみ 「ノワールをまとう女」
あらすじを読んで面白そうだったので買ってみました。

 


 
主人公の女性は企業が不祥事の暴露などで炎上するのを秘密裏に鎮火することを生業としていた。今回の依頼主である企業は韓国子会社に肩入れしすぎたことで抗議デモ活動を仕掛けられており、それを鎮めるために扇動する団体に潜入する。団体の幹部たちと接触することには成功したが、肝心のリーダーについての情報が何もなく攻め手に欠ける状態であった。
あるとき紹介したい人がいるとリーダーに誘われてついていくと、現れた女性は自身の恋人であった、というお話。
 
ミステリー風のエンターテインメント作品となります。
ドラマを見ているかのような流れで事が進んでいくためテンポよく楽しめるのが本作の良いところだと思います。裏社会の話でありながらそんなにダークな話ではなく、ミステリーとしてもそこまで深くもないので身構えずに気楽に読むことが出来ます。登場するキャラたちも個性的な人物が多く、個人的には主人公の女性の行動と性格がカッコ良くて気に入りました。ひと昔前のハードボイルドを女性で体現するとこうなる、というのを上手く書き表しています。私自身それほどハードボイルドをカッコいいと思ったことが無かったのですがこれはカッコいいなと素直に思えました。
また本作では出版当時はトレンドだった、今から見ると少し前に話題になった外国人関連の社会問題にもフォーカスが当たっています。日韓問題、ヘイトスピーチ、在日外国人といった問題についてリアルに描かれていてためになりました。
 
作中では同志である日本人を軽んじる日本企業に抗議する、と主張する活動家たちが多く出てきていました。私としては同じ国籍だから同志、という考え方には共感しません。
その理由は国籍では同志だというレッテルを張る根拠にならないからです。もし本当に国籍が同じことで同志や仲間の意識が芽生えるのであれば、私がこれまでの人生で大した理由もなく無数に日本人から攻撃されたことに説明が付きません。外国籍の人から攻撃を受けたことは一度もないので単純な数でいえば日本人よりも外国人の方が仲間寄りということになるでしょう。
近頃、外国人観光客が日本の文化財に損害を与えたニュースもちらほらあることなど外国人への嫌悪感が高まる話題も少なくないですが、私はどこの外国の方にも嫌悪感を持ったことはありません。理由は単純で国単位でレッテルを貼れるほどのサンプル数が揃っていないからです。例えば「就職氷河期の人は人格が強く歪んでいる」としばしば断定口調で私が書いているのはそう断ずるだけの人と出来事のサンプル数が揃っているからです。また少ないながらも外国籍の人と仕事で接したときにも嫌悪感は特に湧かなかったので、就職氷河期の日本人に比べたらその方々との間の方が仲間意識ははるかに高いです。
何でもいいから共通点を見つけて仲良くなるのは取っ掛かりとしては良いですが、それだけで同志とみなすのは軽率だというのが私の意見です。
 
さくっと気軽に読める作品ですので、気になる方はチェックしてみてください。