小西マサテル 名探偵じゃなくても | 花の本棚

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小西マサテル 「名探偵じゃなくても」

「名探偵のままでいて」が面白かったので続編であるこちらを読んでみました。

 

 

レビー小体型認知症である主人公の祖父が孫娘から持ち込まれる事件を聞くと幻視でその出来事を見たかのように真相を推理するという安楽椅子探偵系のミステリー短編集となります。本作から登場するキャラクターがいること以外は物語の流れは前作と変わっていません。

ミステリーとしてみると前作よりも軽めに作られています。真相もそこまで複雑ではないので自分で推理したりする必要はないでしょう。

本作の見所となるのは物語の雰囲気の良さにあるでしょう。主人公と祖父のやり取りや幻視に対しての反応などといった家族愛の描写は感動的な場面が多くありました。

ただミステリー部分よりも恋愛部分や家族の部分が前作よりも比重が大きくなっている点は少々気がかりでした。前作の終わり方とその続きであることを踏まえると自然ではあるのですが、ミステリーとしての期待が大きいと物足りなさを感じるかもしれません。

ちなみに前作「名探偵のままでいて」を読んでから本書を読んだ方が良いです。上記の恋愛部分である主人公と周囲の男性たちの関係性は経緯の説明がないので前作を読んでいないと理解しきれない部分があります。

 

ミステリーとしては軽めですが物語としてみると雰囲気の良い作品なので、気になる方は気軽に手に取ってみてください。