夕木春央 十戒 | 花の本棚

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夕木春央 「十戒」
昨年話題になった「方舟」の著者の新刊が出ていたので買ってみました。

 


 
主人公の女性は死んだ叔父が持っていた孤島をリゾート施設するための視察に父と一緒に同行していた。リゾート計画の関係者たちと島をまわってみると別荘には誰かが滞在していた形跡があり、島に点在するバンガローの中には爆弾が大量に保管されていた。翌朝になるとメンバーの一人が殺害されており、残ったメンバー全員に対しては犯人からの十の戒律が残されていた。その一つに「殺人犯が誰か知ろうとしてはいけない」というものがあり、戒律のどれかを破った時は島の爆弾を起爆すると書かれている。
全員を巻き込まないために犯人の要求に応えるしかないが本当に爆破しないという保証もない中でメンバーたちは疲弊しながら過ごす、というお話。
 
クローズドサークル系のミステリー作品で「方舟」の系統を引き継いだ作品と言う位置づけになります。
率直に言うとインパクトがかなり弱い。ラストで物語的に大きな展開があるのですが、「方舟」と比較してしまうとどうしても弱い。
もう一つの問題は「方舟」を先に読むべきかどうかという点です。結論から言うと「方舟」を先に読むべきです。物語的に重要なつながりを持っているわけではないのですが展開がかなり似ています。つまり「方舟」を読んでいると誰が犯人でどういう流れになるか大体想像がついてしまうのです。少なくとも私には犯人が丸わかりでした。構成的に似ているという点から先にこちらを読むと「方舟」のインパクトが下がる可能性があるので、どちらのインパクトを下げるか選ぶなら「方舟」を先に読んだ方が良いでしょう。
ただ「方舟」では雑だった島にメンバーにやってきた理由やメンバー間の関係がちゃんと説明されるようになった点は個人的には非常に良いと思っています。これらを頑張ったからインパクトが薄くなったということはないはずなので、これが維持されつつインパクトが上げれば次回作ではもっと素晴らしい作品となることでしょう。
 
前作で期待値が上がり過ぎている点はあるとしても、内容は悪くないので気になる方はチェックしてみてください。