花の本棚

花の本棚

読んだ本についての感想を載せています。
本を選ぶときの参考になれば幸いです

香坂鮪 「みんななにかに縋りたい」
以前読んだ「どうせそろそろ死ぬんだし」の続編が出ていたので買ってみました。

 


 
主人公の女性は知り合いの精神科医に頼まれて、ある孤島で彼が主催する依存症回復プログラムに料理人として同行することになった。
そこに集まったのは様々な依存症を持つ患者たちであり、回復への手助けをすることが目的であった。
しかし初日の深夜、依存症患者の一人が密室の中で死亡しているのが見つかる。被害者は刃物で切られているが、孤島に出発する前におこなった荷物検査では見つからなかったことから、包丁の棚の鍵を持っていた主人公が疑われ始める。
密室にしたこと、死体を焼かない程度に部屋に火を放っていたこと、などの不可解な点を解くことで犯人が分かるのではと考え、事件を推理し始めるというお話。
 
依存症をテーマにしたミステリー作品となります。
本作の見所は前回に引き続きミステリーに関する仕掛けがたくさん用意されている点です。本作では動機や仕掛けを施した目的と言ったなぜ?の部分に多くの謎と仕掛けがあり、一見何もなさそうな描写にも謎に関わる物があったりするので、推理しながら読むと楽しめる内容となっています。
また作中では依存症に関する説明が書かれています。「依存症になる人は意志が弱い」と思われがちだけど実はそうではないケースが多い、という説明など読んでいてためになるものが多くありました。説明も非常に分かりやすくて面白いので、こちらも見所になるかと思います。
なお続編ではありますが前作を読んでいる必要はありません。物語としての繋がりも無く、読んでいないと困る部分は無かったので気になる方から読んでOKです。
 
作中にて依存症の人は素直な人が多い、という説明がありました。欲望に忠実という意味では当たってそうであり、本作に登場する患者たちはそういった描写がされていました。
私は現実で依存症と明確に判明している方と出会ったことがないので想像になりますが、「依存症の人は素直」は正確ではないと考えています。「自身が依存症であると認められる人は素直」が正確な表現というのが私の意見です。
依存症の症状が明らかに出ていて周囲にも迷惑をかけているにも関わらず、言い訳したり逃げたりして頑なに依存症を認めない人の方が大多数でしょう。そういった方々の方が目につくからこそ依存症の人は「意志が弱いだけ」「甘えているだけ」という自己責任的な悪い印象が強くなるのだと考えています。
自身の症状を認めて向き合い、回復に向けて一生懸命頑張っている姿が見えていれば、心無い言葉を浴びせる人は普通いません。これは依存症だけでなく多くの精神疾患や持病、子育てなどでも同じで、現代では結果が伴うかどうかよりも向き合う姿勢が重要視されているのだと私は思っています。
 
本作がデビューから2作目ということでこれからの活躍も楽しみです。
気になる方はチェックしてみてください。