花の本棚

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読んだ本についての感想を載せています。
本を選ぶときの参考になれば幸いです

犬塚理人 「灰色の評決」
犬塚さんの作品で面白そうなものを見つけたので読んでみました。
 


主人公の男性はある事件の裁判員となっていた。犯人が別にいて被告人は冤罪なのではと考える裁判員が数人いたが最終的には裁判員全員が有罪と判断して結審し、死刑判決が下る。
その後彼はその時一緒に裁判員をしていた女性と交際し結婚を申し込むが彼女は控訴審された先の事件が終わるまで待って欲しいと言われては返答が貰えず、その数日後に彼女は姿を消してしまう。先の事件の被告人は冤罪だったのではと彼女は疑い始めたようであり、それを調査している途中で行方知れずになったようだと判明する。
婚約者の行方と事件の真相を探るというお話。
 
裁判員制度をテーマにした社会問題系ミステリー作品となります。
本作の見所はミステリー部分と裁判員制度の課題のつなげ方が非常に上手い点です。
本作では裁判員制度の課題として選ばれた人への負担が非常に大きい点にフォーカスされていました。自分の結審によって人の人生が決まってしまうという心的なプレッシャーは大きく、ましてや本作のような有罪になれば死刑と推定されるとしたら自分が死刑宣告をするような感覚となってしまう描写が非常にリアルでした。私の周囲に裁判員になったという方はまだいないのですが、もし自分がなったときに公正に判断できるだろうか?とつい考えてしまいました。
ミステリー部分の方は登場人物たちの行動や考え方、そして裁判員制度の問題点から推理するタイプのミステリーになります。これらのつなげ方や伏線の張り方が上手く作られていますので、読んでいて楽しめました。こういった内容なので軽く推理しつつ物語を楽しむのが良いでしょう。
 
犬塚さんの社会問題系の作品は面白いので、気になる方はチェックしてみてください。