花の本棚

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読んだ本についての感想を載せています。
本を選ぶときの参考になれば幸いです

岡崎琢磨 「HISP 機械仕掛けの方舟」
あらすじを読んで面白そうだったので買ってみました。

 


 
すべての人を平等に救う、という理念のもとHIPSという扶助団体が誕生した。「財産を所有しない」「労働を含めて一切の経済活動をしない」などの条件をクリアすれば誰でも入会でき、健康で文化的な生活を保証するというものであった。既存の生活保護よりも条件がはるかに簡単であり、支給される実質額も多いことから、国が長年出来なかったことを実現したとして多大な支持を得ていた。
しかし支持が広まる一方でHIPSにまつわる問題も出始めていた。HIPS加入のために親に世帯分離を迫る若者、HIPS加入者への差別やいじめ、などをきっかけに事件が発生する、というお話
 
ミステリー風社会問題系の作品となります。各章ではHIPSに関わる事件の真相を探り、最後の章でHIPSの創設者の正体を探るという流れになっています。
本作の見所はHIPSのような扶助団体があったら現実で何が起きそうか?をリアルに描写している点です。中でも「労働しなくても生活に困らない程度のお金を、誰でももらえる」となった場合に、人々がどういう反応をするか、運営している側はどう主張するか、の描写は読んでいて面白かった。どうにか加入しようと考える人々の考え、そういった人々をどう見るか、はそうなりそうと思えるものばかりでした。自分だったら加入したいだろうか?と考えながら読むと楽しめるでしょう。
ミステリー部分については推理したりする必要はありません。各章には事件の真相やHIPに関する謎があるのですが、「HIPSのためにそこまでするのか」と社会問題的な動機を際立たせるために本作では使用しているという印象でした。ということもあって真相が少々強引な部分もあるため、ミステリー面には期待しすぎ無い方が良いでしょう。
 
作中に登場したHIPSのような団体がもしできたら、自分は加入を考えるだろうか?を考えてみました。
ひとまず本作の設定のままだと考えると、私なら加入しません。理由はいくつかありますが、一番大きいのはお金を他人に握られたくないからです。「労働せずに生活に困らないお金が支給される」は確かに魅力的なのですが、最も厄介なのは「一度退会したら二度と加入できない」という規約です。
HIPSは民間団体という点も踏まえると。経営陣の意向、もっと言えば気分によって強制退会させられるということであり、収入を断たれないために経営陣の機嫌をうかがいながら生きるしかないということです。私はそういった生き方はしたくないので、加入しないでしょう。
作中によると働きたくても働けない人にとっては救いになるらしいのですが、「働きたくても働けない人」は私の人生に一度も現れたことが無いので、この世に存在しない架空の人間を考える必要はありません。
作中でも言われていたように、HIPSが実在しても宗教団体やマルチ商法の団体と同程度の集団にしかならないだろう、というのが私の意見です。
 
社会問題系の作品として面白い内容でしたので、気になる方はチェックしてみてください。