映画「野獣狩り」(1973年公開)の撮影は、私にとって忘れることのできない想い出だ。
私は主演で刑事役だったんだが、最後に犯人を追いつめて射殺するというストーリーで、スタントマンなしのアクションを全部自分でやった。
命懸けで、10数階建てのビル屋上を外壁伝いに渡ったり、ビルからビルへジャンプしたり、長回しで有楽町周辺を長距離で走ったり。
まさに、失敗が“死”につながる撮影だった。
当時はああいう役をいつかやると思っていたから、多摩川の土手を毎日走って訓練していたよ。
厳しい世界だったから、いつ何が来ても応えられなければいけなかった。
だから、日々、訓練し備え、自分に負荷を課していたというのかな。
撮影前にも、緊張感を高める為、腕立て伏せを100回は必ずやっていた。
この「野獣狩り」は監督が凄まじいリアリティを求めていたから、スタッフも出演者も全員真剣だった。
当然、俳優達には一発勝負が求められた。毎日、緊張感で現場は張り詰めた空気が流れていた。
つまり、あまりテストがない状態で「どうなるかわからないけど、とにかくやってみよう」という感じだった。
それが出演者達にも伝わって、緊張感が生まれ、皆で一丸となって取り組んでやった作品だったね。
こういう空気の流れる作品に、また出会いたいものだね。
合掌、
藤岡弘、
「野獣狩り」(2) 記事はこちら
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