あたりがすっかり秋色になった頃、ふと玄関通路の足元で一輪の白い花が目に入りました。ゲンノショウコでした。どこでも普通に見られるフウロソウ科の植物ですが、なぜか藪のような自宅の敷地内では、これまで一度も見たことがありませんでした。それが奇しくも1株だけ、玄関前で見つけたのだから不覚でした。
彩りのない季節に、ただ一株だけですから観察がしやすい。いつしか愛おしいような気持ちで、通るたびにルーペ片手にのぞきこんできました。
花の後結実までの様子は、ちょっと劇的でした。できた果実は、先端が長く嘴のように伸びて、種子は下の萼片の中にできる。熟して黒褐色になると、下から果実が裂けて、裂片が種子を先につけて巻き上がり、ユニークな形が出来上がる。その裂片は互いに向き合い、腕相撲の力比べをしているように見えて実に面白い。その裂片がお神輿の屋根の先端の形に似ているので、「神輿草」とも言われるのはつい先年知ったことです。
このゲンノショウコを見ながら、「心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず・・・」、という小学校の時の担任の言葉を思い出しました。来年もまた見逃してしまうのでしょうか。
うちかヾみげんのしょうこの花を見る 高浜虚子

