「あんにんご」__どこかちょっと懐かしく愛らしいひびきを感じます。バラ科のウワミズサクラのことを、昔からこう呼んでいます。この木の表面には溝が多くあることから「うわみぞ(上溝)」、それが訛ってウワミズとなり、ウワミズザクラと名がついたということです。

Stillman&Birn 14X22 / HOLBEIN
そのウワミズザクラの木の下では甘い芳香が漂います。とくに花や実は、杏仁(杏の種の胚乳)に香りが似ているので、「あんにんご」という名前で呼ばれるようになったと言われています。
このあんにんごの花のつぼみをてんぷらにしたり、塩漬け、果実酒などにと、新潟県でもとくに魚沼地方では春の味わいの一つとして親しまれています。
つぼみや実を塩漬けにしたものをビールのつまみとして口にふくみ、千歯扱きのように クツクツッと花軸を引っ張ってつぼみや実をはずして食べるのはなかなかにあじわいがあります。
もともと、蕾(つぼみ)や実(種子)は果実酒にすると、不老長寿に効く薬酒になると古くから伝えられていて、「西遊記」の三蔵法師は、ウワミズザクラの種子を求めて旅に出たというから面白いものです。
山の中で、大きなブラシのような花で木全体が真っ白に見えて目立つ木です。しかし、食べ頃のつぼみと秋の実の時季にはなぜか目立たず、いつも見失ってしまいます。テープなどを付けるのはなんですから、手帳に地図でも書いておこうと思うのですが、つい忘れてしまうのが毎年のことです。