新型コロナ感染症予防と言えば、ソーシャル・ディスタンス(英語はPhysical distancing)、マスク、それに日本ではうがいが推奨されていましたが、これらに予防効果はないというアメリカの論文が出ました。本当なのか? なぜなのか?
拙著「元WHO専門委員の感染症予防BOOK」(三笠書房)を基にした日刊ゲンダイでのコメントを以下に引用します。
米MITが衝撃の研究論文発表:「ソーシャルディスタンスは効果ゼロ」「人数制限しか道なし」の根拠
ソーシャルディスタンスに予防効果はなく、マスクの効果も絶対ではない――。こんな研究論文が発表され、世界を驚かせている。
現地時間25日に論文を発表したのは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チーム。要旨は▼ソーシャルディスタンスの6フィート(約1・8㍍)の間隔を開けても新型コロナ予防にほとんど効果がない▼そのシチュエーションでマスクを着けても効果はゼロに近いーーというもの。理由はエアロゾルによる「空気感染」で、空気と混じったウイルスは2㍍以上飛び、感染能力を保つ。マスクをしても隙間からウイルスが侵入するのだという。
そのため、研究チームは感染拡大を予防するにはスポーツジムや、人が会話し賛美歌を歌う教会のような密集地帯の人数を制限する方法しかないとしている。ちなみに、同じ室内でも換気率が高く広い施設なら、より安全だという。
「この発表は、研究者が米国民の疑問に答えた格好です」とはハーバード大学院卒で医学博士・作家の左門新氏(元WHO専門委員)だ。
「米国民はコロナの拡大当初、マスクを拒む傾向にありましたが、すぐに着用が定着。6フィートの間隔も守るようになった。それなのに、なぜ感染拡大が収まらないのかを研究したのです。ジムでは体が発する汗や呼気で湿度が高まり、ウイルスが水分を失って死活化しないため、細かい飛沫による感染が起きやすい。教会で歌うと声帯が震え、呼気とウイルスが混じって口から吐き出され、エアロゾルとなって数十分間、5㍍も10㍍も飛んでいく。それを遠くの人もマスクの隙間からウイルスを吸い込んでしまう。これが根本的な原因であることを、MITの研究チームは数学的なデータ分析をもとに立証したのです」
日本の厚労省は人と人は1㍍以上、できれば2㍍の間隔を取るよう呼びかけている。マスクはもちろん、必須アイテム。これらを守れば安全だと考えてしまうが……。
「MITの発表は日本人に、『3密』回避の重要性を改めて教えてくれました。居酒屋などで大声を上げたり、カラオケで熱唱すると、離れた席の人はマスクをしても感染の可能性が高まるのです。ガラガラうがいもエアロゾル感染を招く。ジムで運動し激しく呼吸すると、肺の奥に隠れたウイルスが排出される危険性も出てきます」(左門新氏)
米国では教会、日本ではカラオケ。楽しい歌が危険なようだ。