新型コロナ予防接種がアメリカで始まりましたが、日本ではいつからになるのでしょう。開発で世界に遅れをとっている日本ですが、予防接種施策も世界に10年以上遅れています。
今年12月に厚生労働省の審議会が、子宮頚がんの予防接種を男性にも行う認可の決定をしましたが、10年以上世界に遅れた施策です。欧米など諸外国では10年以上前から思春期の男の子に接種しているのです。子宮頚がんは、ほとんどが男性から女性に性行為でヒトパピローマウィルスが移ることにより発生するからで、その予防のためです。ところが、日本の認可は陰茎、肛門、咽喉がんの予防のためというもの。これらのがんは発生頻度が低いので予防接種の対象とするのはあまり意味がないだけでなく、認可は欧米で主流となった9種類のウィルスに有効で9割をカバーするワクチンでなく、4種類に有効7割をカバーするガーダシルです。
穿った見方をすれば、ここ数年女性の接種が激減、そのうちに9価のワクチンが日本にも輸入される前に大量に余っている在庫を一掃しようとするためではないかと疑ってしまいます。かつて、血友病患者への加熱血液製剤の輸入を意図的に遅らせ、在庫の非加熱製剤を投与させて血友病患者にHIVを広げてしまった薬害を彷彿させます。
ご参考までに、近々三笠書房から刊行予定の拙著「ウィズコロナ時代の感染症予防策(仮題)」からの引用を少し長いですが転載します。
子宮頚がんは感染症
「えっ! 子宮頚がんって感染症なの?」「なに! 男も子宮頚がん予防接種必要?」と驚かれた方、ぜひこの項は読み飛ばさず目を通してください。子宮頚がんは立派な性行為感染症ですし、その予防には男子も子宮頚がん予防接種をする必要があるのです。
日本では年間約3万人に子宮頚がんが見つかり、約3000人が死亡しています。それに近年では20代、30代の若い女性の発症も増えています。なぜ子宮頚がんが起こるかというと、ヒトパピローマウイルスの感染が子宮頸部に起こり、それがやがて癌化するから。このことを見つけたドイツのハウゼンは、2008年にノーベル賞を受賞。予防接種開発への道筋を開きました。
感染がなぜ起こるか、ほとんど全ての場合、性行為を介して男性が女性にこのウイルスを移しているからです。男性も誰か別の女性からウイルスをもらっていることになります。感染した9割の女性では免疫がはたらき、ウイルスの増殖は止まります。しかし約1割では増殖を続け、その5割に子宮頸部上皮の異形成が起こり、数年以上かけて2割ががん化するのです。
●なぜ日本では予防接種をしなくなってしまったのか?
子宮頚がん予防対策として、2013年に日本では性交渉が始まる前の女子中学生を中心に、検診と予防接種が行われるように決めました。
しかし接種の副反応で激しい頭痛や四肢麻痺が起きたとマスコミが騒ぎ、数カ月で接種を促すことは取りやめてしまい、接種率は1%を下回っています。最近になって「副障害は接種によるものとは考え難い」という厚生労働省の調査委員会の報告も作成されましたが、なぜか広く公表もされず、マスコミも全く取りあげていません。そんな状況下でWHOは「一刻も早く予防接種推進を再開すべき」と強く勧告しています。日本が2013年から2020年まで接種勧奨をやめた結果、子宮頚がんは約2万8000人増え、死亡者も約6000人弱増加すると試算されています。ちなみに欧米などでの接種率は70~90%です。
一方、子宮頚がん検診受診率は欧米で60%を大きく越えていますが、日本では40%前後。20歳代では約20%と極めて低くなっています。予防接種は感染がすでに起こってしまってからでは全く効果がないので、予防接種に加えて検診との二本立ての対策が必要なのです。
●女子も男子も予防接種で子宮頚がんを予防しよう
子宮頚がんの予防接種は、男性も必要です。というのも、病気の原因となるヒトパイローマウイルスは、男性の陰茎包皮の恥垢に潜むからです。このウイルスは陰茎がんのほか、中咽頭がんや肛門のがんの原因にもなります。ただ子宮頚がん以外の発症率が極めて低いため、男性に予防しようという意識があまりはたらかないのです。
しかし男性が予防接種を受ける意義は、女性にうつさないということにこそあります。実際、ヨーロッパでは10年以上前から、アメリカやオーストラリアでも数年前から、思春期男子への接種は始まっています。
男女とも接種率が7~8割を越えれば集団免疫が形成され、接種してない人の感染も減ります。実際、世界では子宮頚がん患者と死亡者が減少しており、その撲滅も視野に入っているところ。日本ももっと子宮頚がんの撲滅には感心を持つべきでしょう。ちなみに予防接種以外の対策としては、他の性行為で感染する病と同様です。