文化庁の発表によると、平成20年度の「国語に関する世論調査」で、「70点取れれば御(おん)の字だ」という例文を挙げ、「御の字」の意味を尋ねたところ、

(ア)一応納得できる・・・51.4%

(イ)大いにありがたい・・・38.5%

という結果が出たそうです。

 正解は(イ)です。

 語源は江戸時代の遊里ことばだそうです。

 それはさておき、今日は「御」の字についてつぶやきます。

 

ギョ/お、おん、おおん、み)

 太字は、常用漢字として認められている読みです。(お)が表外読みとは意外ですね。

 

(おおん)

 いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひける中に・・・

源氏物語』の冒頭ですね。

「御時」は(おんとき)と読んでも間違いではありませんが、平安時代の文では一般に(おおんとき)と読まれます。

「おおん」とは、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の「大御」が源のようです。

 おおみ(大御)⇒おおん(大御)⇒おおん(御)⇒おん(御)⇒お(御)

 漢字は「御」が残り、音は「大」に由来する(お)で始まる読みが残りました。

 

(おん)

 御社(おんシャ)、御中(おんチュウ)、御礼(おんレイ)、御曹司(おんゾウシ)で使われます。

「御社」は話し言葉で使われ、書き言葉では「貴社」が使われます。不思議。

(みやしろ)と読めば神社のことです。

 

(お)

 もともと和語の頭に付いたら(お)、漢語の頭に付いたら(ゴ)と呼んだのでしょうか。

 和語に付くのは、お湯、お酒、お金

 例外の漢語に付く(お)は盛りだくさんです。

  お茶、お菓子、お砂糖、お醤油、お弁当、お化粧、お経、お葬式

 まあ、御中元、御歳暮ののしぐらいでしか漢字では書きませんが。

 

(み)

 主に神仏や皇室への敬語に使われます。

  御門⇒帝(みかど)、御子⇒皇子(みこ)、御仏(みほとけ)、御幸(みゆき)

 京都の泉涌寺(センニュウジ)は皇室とのかかわりが強く、御寺と書いて(みてら)と呼ばれます。

泉涌寺(東山区) | 御朱印ガイド

 

御御(おみ)

  御御足(おみあし)、御御籤⇒御神籤(おみくじ)、御御輿⇒御神輿(おみこし)

 御足(おあし)だとお金のことなので、さらに御が付いたとか。

 

御御御(おみお)

  御御御手(おみおて)、御御御付(おみおつけ)

 おみおつけは、おつゆ(お汁)の女房ことばでした。一説に「おみ」は味噌の女房言葉で、みそ汁を「御御付(おみおつけ)」と言ったとも。

 

(ギョ)

 主に天皇にかかわる言葉に付きます。

 御名(ギョメイ)、御製(ギョセイ)、御物(ギョブツ)

 下にも付きます。

  崩御(ホウギョ)、渡御(トギョ)

 制御(セイギョ)は、御者(ギョシャ)はの書き換えです。

 

御意(ギョイ)

 目上の人の意見に従うことです。

 私がこのことばを覚えたのは小学生の時に見たNHKドラマ『男は度胸』で。

 米倉斉加年演じる大岡越前守忠相が将軍吉宗浜畑賢吉)に向かって返事をするシーンでした。

(7/7追記 浜畑賢吉氏が7/2に亡くなられたことが7/7判明しました。ご冥福をお祈りします)

 少し前のドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子』では、医師たちが院長に発する「御意」がはやりました。

 このときの院長役の西田敏行も大河ドラマで吉宗を演じました。

 

(ゴ)

 基本的には音読みの単語の頭に付けば(ゴ)と読みます。

  御飯、御機嫌、御苦労、御免、御多忙・・・

 やたら多いです。日常の文章ではひらがなの「ご」を使います。

 和語の形容動詞にも付いちゃいます。

  ごゆっくり、ごもっとも

 御(ゴ)は下にも付きます。

  姪御(めいゴ)、母御(ははゴ)、親御(おやゴ)

 

御用(ゴヨウ)

 岡っ引きが御用提灯と十手を持って盗賊を追い詰めます。御用の御はだれに対する敬語?別に岡っ引きが盗賊に敬意を払って「御用がございます」と言うわけではありません。

 御用達(ごようたし)、つまり「幕府から嘱託委任されているんだぞ!」という証明書代わりの提灯です。今で言ったら「警視庁公認」といったところでしょうか。御は将軍様に対する敬語です。

 

御髪 (おぐし/みぐし)

 京都の御髪神社は(みかみ)。日本で唯一、髪の毛にご利益のある神社と謳います。

 

東御市(トウみシ)

 平成16年に長野県の東部(とうぶ)北御牧(きたみまき)が合併し、その1字ずつを取って東御市に。

「御」は「牧」(朝廷に献上する馬の牧)に対する接頭語なのに切り離すとは。それとも東にある畏(かしこ)き市なのでしょうか?

 せめて御東市(みトウシ)にしてほしかった。

 

美味(おい)しい

 もともとは美しいという意味の「美(い)し」に「い」が付き、さらに御(お)が付いた女房ことばです。

「腹減ったときに食う飯はうまい!」は男言葉、「おなかすいたときに食べるご飯はおいしい!」は一般に女性言葉とされています。

 日本人にはフランス語などの男性名詞、女性名詞の感覚の理解に苦しむけど、外国人に日本語の女性言葉は奇異に聞こえるでしょうか。