きょうはひとつの漢字を取り上げ、思い付くままに書き連ねます。

 

何と読みますか?

(ため)ですよね。

でも常用漢字としては(イ)の読みしかないのです。(ため)はどちらかというと漢文的な読みです。

 

漢文ではいろいろな読み方があります。

(ため)(として)(なす)(なる)(す)(さす)(たり)

 

御為倒し

おためごかし)です。相手のための行為と見せかけながら、実は自分のためにやっていることです。「ごかす」なんてこの言葉でしか使いません。

「御」も常用漢字では(おん)と読み、(お)や(み)の読みはありません。

 

為人

ひととなり)です。「人と為り」で返り点を付けたくなります。

人が生まれ持った性格とか品性とかのことです。古めかしいことばですが、意外と耳にします。

 

為体

ていたらく)です。これも返り点を付けて「体為らく」。

これは「ク語法」というやつで、「ていたり」が活用したものです。

恐れる⇒恐らく、言う⇒曰く、思う⇒思惑、思えり⇒以為(おもえらく)、聞く⇒聞説(きくならく)

 

「体」が出てきたところでこれはどうでしょう?

這う這うの体

(はうはうのからだ)と書いて(ほうほうのてい)です。

ひどい目に遭って、這うようにしてその場を去ることです。

 

為替

これは読めますね、(かわせ)です。

為読聞は(よみきかせ)。為は「させる」という意味で使われます。

為替も「替えさせる」という意味です。

外国為替を略して外為(がいため)といいますが、「ため」とは関係ないです。

 

為出来す

しでかす)と読みます。「仕出かす」とも書きます。

「出来す」は「出来るようにさせる」で、「為」は上の為替と同じく「させる」の意味と「する」の意味の両方かな?

「よくやった」を「でかした」などと言います。私の郷里では終わらせることを「でかす」と言っていました。学校で「今週中に出かしてください」などと言うと、東京からの転校生が「でかすって・・・」と笑っていました。

 

為て遣ったり

「してやったり」です。「うまくいったぜ」に近いですかね。

 

仕事

「すること」ですからほんとは「為事」と書くべきですね。

仕入れ、仕打ち、仕置き、仕掛け、仕切り、仕組み、仕込み、仕立て、仕出し、仕付け、仕留め、仕舞い、仕向け、仕分け、仕方、仕草、仕業・・・

これらもすべて本来は「為」と書くべきです。

「仕分け」は「仕訳」とも書きます。

「しあい」は「仕合」ではなく「試合」です。本番も「ためし」。「仕合」は(しあわせ)です。

「しはらい」は支出のイメージで「支払い」に。

 

所為

漢文っぽいですがよく使う(せい)です。「○○のせいで」とか。

所以ゆえん)と混同しそうになります。

 

何為

なんすれぞ)と読みます。

「どうして」という意味です。

 

「為」の旧字体です。

上の部分は「」で手を表し、下の部分は「」。象を手で操ることから「なす」という意味になったとか。

下の部分は象には見えませんね。

これだと少し象の字には見えますが、ゾウの姿には見えません。左下の長い線が象の鼻なんでしょうか?

 

   

の中国の簡体字です。すっきりしてますね。

日本では12画から3画しか減らなかったのに、中国では8画減らせました。

に点が二つ付いた形です。

1画目の丶が人の手、2画目のノが象の鼻、3画目のフが象の胴体、4画目の丶が象の脚かな?

 

為五郎

為の付く人物といえば源為朝? 60代以上ならこれでしょう。

1969年『ゲバゲバ90分』のコントの間に差し込まれるハナ肇のギャグ「アッと驚く為五郎」。驚いたときにこう叫ぶおっさんや爺さん、あなたの周りにいませんか?「はなはじめ」がなかなか変換されずにアッと驚きました。