日本語にはもともとは誤用だったのが、時代を経るにしたがって、「とも言う」と正当化されてしまったものがあります。

 

一生懸命

本来は「一所懸命」。武士は戦に出て手柄を立て、自分の土地(所領)を安堵(保証)されることや、新たな土地を獲得することに命を懸けました。後世、一生涯の命を懸けるという漢字になりました。

 

内緒

「一生懸命」は(しょ)から(しょう)に変わりましたが、「内緒」はその逆で、もともとは仏教用語の「内証」。「一緒」の影響ですかね。

 

大盤振る舞い

もともとは「椀飯振る舞い」と書いて(おうばんぶるまい)でした。「椀飯」とはお椀に持ったご飯と簡単なおかずに酒を添えたもので、足利将軍が家臣に主従の絆を深めるために御馳走したものです。(おばん)から(おばん)に変化しました。

 

年令

本来は年齢と書かれるべきですが、小学生には書きづらいという理由で、小学校の教科書には年令、才の代用字が載っています。さすがに高令者、才末とは書きませんね。ましてや、お才暮などとは。

 

御手茂登

よく見かけますね。箸を「お手もと」と呼びます。この「茂登」が漢字の当て字なのか、変体仮名なのか微妙なところです。「手が茂って登る」では意味がわからないのでやはり変体仮名とみるべきでしょうか?

最近では進物用のタオルののしに「御多越留」と書かれたのを見ます。「多く越えて留める」?

 

誤用ではなく、わざと縁起のいい字に変えたものもあります。結納品などはそうですね。

 

勝男節勝男武士とも)

もちろん鰹節のことです。(かつお)は文字通り堅魚(かたうお)に由来します。

 

寿留女

するめ」です。寿を留める女とはいいですね。ここは「あたりめ」にはしないですね。(するめ)はと書きます。

 

子生婦

昆布です。子を生む婦(ふ/よめ)。子宝に恵まれることを祈りました。

 

家内喜多留

柳樽ですよ。家内安全。喜びがたくさんとどまるように。東京中央区には家内喜(やなぎ)稲荷神社があります。

 

最近のスーパーに並ぶ食品の漢字を見てみましょう。

豆富

腐った豆のイメージを払拭するため、豊かな豆に。「豆が腐って納豆に、豆が納まって豆腐に」と言われますが、ちゃんと理由があるのですね。

「豆腐」と「納豆」って意味が逆では?調べてみたら理由があった|Jタウンネット

 

正油

醬油の醬は(ひしお)と読みます。町中華でも「正油ラーメン」と書かれたメニューをよく目にします。

 

楽京

楽しい京(みやこ)とはまた。本来は辣韭で、辣(から)い韭(にら)です。にらはとも書きます。、これ1字でも(らっきょう)です。

 

法蓮草

本来は菠薐草ですが、パソコンでは法蓮草としか変換されません。菠薐国(現在のネパール)から唐の時代に中国に伝わりました。「南無妙法蓮華経」にちなんでこの字になったのでしょうか?日蓮宗のお経は「なんみょう・ほうれん・げっきょう」に聞こえますが、南無・妙法・蓮華経ですよね。

最近までは上司が部下に義務付けたことばで、「報告・連絡・相談」の「報連相」がもてはやされましたが、あまりうまい語呂合わせとは言えないです。

 

人肉

20年以上前ですが、ある焼鳥屋のメニューにありました。店の人は「ジョークですよ、ジョーク」と言っていましたが、今でもあるのかな?

正しくは大きな蒜(ひる)と書いて大蒜(にんにく)です。仏教用語の忍辱(にんにく)と重なったようです。

 

キャ別

ワープロやパソコンが出回る前は八百屋さんの店頭のキャベツによくこの文字があったものです。キャベツは英語のキャベッジの転です。