少し前に放送されていたお気に入りのドラマ「ひらやすみ」。

朝、エスカレーターの右列を駆け上がろうとしたのに、途中で歩かない人(岡山天音)がいて、電車を一本逃してしまい、顧客との約束に間に合わず、新規契約を取り損なった女性(吉岡里帆)が、主人公に苛つく、というシーンがあった。

阿佐ヶ谷駅。

鳴り響く発車ベル。

イライラして止まっている人を睨みつける若い女性。

薄ら笑いを浮かべているような男性。

電車は行ってしまう。

ああ!もうっ!といいたげな女性。

ありそうだけど、私の周りではほとんど見られない、非現実的なシーンだ。


私たちはなぜ、右側に立ち止まらないんだろう。

アナウンスでも、ポスターでも注意喚起をうけているのに。

ごみ捨てもしないし、カバンを背中に背負わない。電車での話し声は小さく、静かにスマホを見ているだけの日本の人たち。海外からの旅行者も、最近ではかつてのようにそこだけリズムがちがうようなこともほとんどなく、家族連れですらお菓子を食べたりなどしないし、留学生はJLPT対策ドリルなんかを眺めてる。

日本は、整然としていなければならない。それを自分が壊すわけには行かない.

エスカレーターの右列で止まるのは安全だが、問題はそこじゃない。

流れを止めるのは、自分であってはならないのだ。


疲れてる時に左側に乗れず、右側を歩いて上がるのはつらい。

左側に乗るために長い列に並ぶのは不便だ。

しかし私はその不合理な不自由さが、少し愛しい。


そういえば、あの右側で止まった岡山天音と、電車を逃した吉岡里帆が偶然会って、成り行きでいっしょに食べることになったヤンニョムチーズチキンは、とてもおいしそうだった。