先日のアメトークを観ていて、懐かしいなぁと思う場面があった。「くされ縁芸人」に出ていた、くりーむしちゅーの有田さんとザキヤマの2人について。
その昔、有田さんが通っていた歯科医の院長と僕は大親友だった。実の弟のように可愛がってくれたその院長のクリニックに僕は毎日入り浸っていた。銀座にあったクリニックの院長室は異業種の社交場のようになっていて、多くの有名人、芸能人、起業家、政治家らが入れ替わり立ち替わり、出入りしていた。ここに名前を書くとビックリするぐらいの有名人の方々ばかりだ。その院長はまさにカリスマという感じで、治療は非常に特殊なもので、僕は今でも世界で彼にしかできない神技だと思っている。院長の治療を受ける為に多くの方が遠方からわざわざ通ってきていた。有田さんもそこの患者さんだった。今でもテレビで彼の真っ白い前歯を見ると院長のことを思い出す。
院長と有田さんは個人的にも直ぐに仲良くなった。ある晩、有田さんの治療が終わったら銀座に繰り出そうということになり、そこに僕も呼ばれた。当時、まだ有田さんは30代半ばぐらいだったと思うが、当時からとても大人びていた印象だ。まだ海砂利水魚の時代かもしれない。女の子が横について一緒に食事をしてくれるという不思議なコンセプトの和食屋が銀座にあって、そこが院長のお気に入りの店だったので、有田さんをお連れすることになった。そして当日、有田さんの横にはザキヤマがいた。アメトークでも言っていたが、人力舎のライブで一緒になった一週間後から6年間、彼らは毎日一緒にいたそうだ。マンションも同じで(有田さんがザキヤマを住まわせたのだろう)しかもほぼ有田さんの部屋で彼らは同棲生活をしていたそうだ。僕の当時の印象もまさにこの通りで、二人でニコイチだった。
その晩、繰り広げられたのは、圧巻の二人のボケとツッコミのショーというか、ある意味一晩中続くリアル大喜利という感じだった。やっていることは超シンプルで、有田さんがザキヤマにありとあらゆる振りをして、ザキヤマはどんなことがあってもそれに応え、笑いにするという遊びというか、修行?というか、カメラが回っていないプライベートな時間でも、何故ここまで徹底的にやるのか当時の僕は理解できないぐらい、本当に延々と続く部活動の訓練というか、とにかく凄かった。いつ振りが来るか分からないのでザキヤマも全く気が抜けない感じ。それが2人にとっては日常だと言うことも、その場にいてよく分かった。もっと言えば、僕と院長と4人で一緒の空間にいるのに、僕らのことはほぼ見えていないという感じで、2人だけの世界がドーンと出来上がっていた。有田はひたすらお題を出し続け、ザキヤマはボケ続けるという修行。ザキヤマ、疲れないのかな?と何回も顔を覗き込んだ記憶がある。
たまたまザキヤマと同郷だった僕は、彼と携帯番号の交換をした。何度かメールを入れ、毎回ちゃんと返事があった。とても丁寧な文章だった。律儀な人だと思った。記憶しているのは、ザキヤマのこんな言葉だ。みんなが毎日楽しいでしょ?と言ってきます。羨ましいとも言われますが、芸人なんて日雇い労働者と一緒で、明日をもしれない不安定な仕事ですよ。僕は⚪︎⚪︎さん(僕の本名)が羨ましいです。なんかあったら同郷の先輩として相談しますね、と、書いてあった。そんなザキヤマも今では押しも押されぬ大スターになっている。テレビで彼を観ていて、あの有田さんの特訓の影響が大きいと思う。
この前のアメトークを観た人は感じただろう。有田さんの横にいるザキヤマが、普段のテレビでのザキヤマと全く違っていたこと。まさにあの晩と同じ空気感が2人の間に流れていた。有田さんの前ではあの頃のザキヤマに戻るのだ。今も昔もないんだな。下積みの時代って大事だし、何よりザキヤマが売れるのは、彼は律儀で、変わらないからだと思う。
