「スローなブギにしてくれ」

 

昔、片岡義男をよく読んでいた。

 

 

 

 

日本は戦争に負けて、二度とアングロサクソンに歯向かわないように

戦勝国、主にアメリカは日本に様々な仕掛けを行ったようだ。

その時に3つのSを推進したのは有名な話。

Screen(映画)、Sports、Sex」である。

平和じゃないと担保できないもの、それを思いっきり国民に洗脳した。

二度と戦争に向かわないように仕向ける為だ。

 

 

「平和っていいよね」(今はその結果、平和ボケと言われてるけど)

「世界の平和を守っているアメリカって素敵でしょ?!」

という価値観を庶民の生活の隅々にまで浸透させる為、

テレビやラジオのような電波や新聞、雑誌のような紙媒体がフル活用された。

原子爆弾を落とした当事者がここまで敵国での地位を上げるのは並大抵のことではない。

そりゃ、もの凄い戦略の元で長期間の洗脳をしなければそんな風にならない。

 

 

片岡義男が洗脳本だとはもちろん言いませんが(笑)

その延長線上に位置する文学であったと言っていい。

 

バイク

ツーリング

ビール

自由の女神

キャデラック

ウォーホール

郊外の庭付き、プール付きの家

モンローにケネディ

NASAのUFO

アメリカンフットボール

ハワイ

サーフィン

台風(ハリケーン)

そして絶世の美女...

 

 

片岡義男の世界は常にアメリカ西海岸の潮の香りがした。

高校生の僕らの脳みそにアメリカ的な生活の残像を深く刻み付けていった。

ちなみに同じ延長線上にあって、そこに物語性を付加したのが村上春樹だと思う。

 

 

 

 

心が躍った、あのままでずっといたかった。

9.11が起こり、アメリカ経済に暗雲が立ち込めた。

今の高校生、大学生はアメリカにどんな印象を持っているのだろう?

もうアメリカに憧れたのは遠い遠い昔の話だろう。

少なくともアメリカはもう特別な国ではない。

しかし、その代わりのヒーローはどこかと言われても

中国もロシアもヨーロッパでもないだろう。

要は世界中に魅力のある国が無くなっているのだろうね。

みんな分かった気になってしまっているだけかもしれない。

インターネットがその一端を担っているのは間違いない。

 

全く情報が入らないからこそ、勝手に想像して憧れる。

作家の受難時代とも言われている。

誰でもネットに向かって文字を打って、世界中に発信できる時代。

ネットを叩けばいくらでも刺激的な情報が存在する。

わざわざ小説家が設定した架空の世界に浸る必要がなくなってしまった。

手のひらのスマホから世界中の裏の裏の情報がリアルタイムで入ってくる。

一晩中ネットサーフィンしたらもう世界一周した気になってしまうかも。

グーグルアースで仮想世界旅行は毎晩できる。

 

情報って何だろう?

便利って何だろう?

 

 

 

 

車が売れない。若者は車に魅力を感じていない。

そういえば、ちょっと前のニュースでやってた。

最近はAVで胸の大きな子は人気がないそうだ。

フーターズも本場アメリカでも不人気だそうです。

若者はもう大きなバストにあまり興味がないという。

「でかいのがいい」そんなアメリカ的な価値観の終焉だろうね。

ひたすら燃費の悪い、図体ばかりでかいアメ車はもう誰も買わない。

燃費の悪いものは悪だという風潮が世界を覆っている。

それを言い換えると、もう何があっても国をあげて熱狂することなんてない、

そんな時代に突入したという一縷(いちる)の寂しさを感じてしまう。

 

 

 

 

「I Want tou! 俺の肩を抱きしめてくれ♪」

南佳孝が叫んだ。

こんなにストレートでセクシーでブギーな曲が流行歌になったのは1981年。

もうすぐそこまでバブルの足音が聞こえていた。

片岡義男の同名の小説が映画化され、その主題歌がこの曲。

福生の街が舞台だ。

 

「スローなブギにしてくれ」

ほんとに良い曲だよね。たまーに夜、妻と聴いている。

子供が寝静まった後、キッチンの横のカウンターで。

バーボンが似合う夜。

 

そういえば、六本木界隈は大手不動産会社に徐々に買い上げられ、

あの猥雑な街からクリーン極まりない、無味乾燥な街に生まれ変わるってさ。

良い悪いではないのだ。

皮肉なもので、国を盛り上げる為のオリンピック招致が

東京から危険な街を消していく。

それは面白みのある街の文化を消し去っていくことと同義だ。

 

もうあの頃のことは夢の中へ

知らぬ間に遠く Years go by...っ

 

 ↓片岡義男、いいです。

スローなブギにしてくれ (角川文庫)


↓南佳孝もいいです(笑)

スローなブギにしてくれ (I want you) 

 



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