天才バンド


奇妙礼太郎は今、僕が最も注目しているミュージシャンである。

このブログでは何度も書いているが

僕が名曲認定するポイントは「切なさ」と「時差のマジック」

を絶妙に操っていることだ。

奇妙礼太郎はまさにこの2つの金脈を支配しようと

もがいている貪欲なボーカリストだと思う。


奇妙はずっと「トラベルスイング楽団」というビックバンドを従えていたが、

今、組んでいる「天才バンド」はスリーピースである。

(しかもベースの代わりに鍵盤である)

SUNDAYカミデ(ピアノ)、テシマコージ(ドラム)、

そして奇妙がギターを弾きながら歌う。


まずはこの曲を聴いて欲しい。





ずっと ずっと 君が好き

誰かの彼女になり腐っても



うん、その通りなんです。

「なり腐っても」という歌詞がとても印象的だが

他にも切なさの演出が随所にある。


もう君の髪には触れられないよ

夜中の電話もできないよ

今頃どうしているのかな?

優しい人に出逢えたかな?



「かな?」で終わる歌詞

を使う手練れは切なさ倍増の黄金律をしっかり分かっている。


スガシカオ「夜空ノムコウ」。

「あれから僕たちは何かを信じてこれたかな?

「悲しみっていつかは消えてしまうものなのかな?


グレイプバイン「風待ち」の一節にも登場する。

「みんな知らぬ間に時を過ごしたのかな?

「今、夏の香りがしました。涙が出なかったのはそれのせいかな?

中々手ごわい「かな?」シリーズ。

天才バンドもしっかりと使っている。


グレイプバイン「風待ち」↓




話を「誰かの...」に戻そう。

君には君の日々があり

僕には僕の日々がある

君には君の歌があり

僕には僕の歌がある

そして

ずっと ずっと 君が好き

誰かの彼女になり腐っても



叶わぬ恋。

それは永遠だ。

万葉集にも沢山この叶わぬ恋が登場する。

夢追い人に恋して

どこまで連れ添うか?というのは

結婚適齢期の女性の人生の決断の大テーマだ。


例えば彼女はバンドマンに恋をしている。

ずっとずっと夢を一緒に追いかけたかったけれど

彼は中々目が出ない。

バイトを掛け持ちしながら活動する彼の一途な背中。

当然、親の反対は凄まじい。

「所詮、夢なんて叶わないもの。」

頭のどこかでは非情な自分がいる。

現実の世界は甘いものじゃない。

星の数ほどいる恋人達の叶わぬ恋の鎮魂歌は

いつまでも後を絶たない。


「22歳の別れ」もその一つだ。

「目の前にあった幸せにしがみついてしまった。」

あなたにサヨナラって言えるのは今日だけ。

涙腺直撃の歌詞で始まる名曲中の名曲。


僕の大好きな忌野清志郎さんは

その昔、「ラプソディ」という曲を書いた。


君のパパもママもいつか分かってくれるさ

だから涙吹きなよ 任せとけよ僕に

いかしてるぜ ベイビー

君となら うまくやれるさ

バンドマン 歌ってよ

バンドマン 今夜もまた

二人の為のラプソディ



みんな悲しみを背負って生きている。


天才バンドにはもう一曲その手の曲がある。

これも泣けます。


青春を過ごしたのさ

君とただ過ごしたのさ

悲しいくらい時は過ぎた

君は綺麗なママになってた

ロッケン ロッケン ロッケンロールベイビー

今日もロックを聴くのさ

君が嫌いだった ロッケンロールミュージック


待たせたのさ

1人きり

君をただ待たせたのさ

去年の冬 君を見かけたよ

君は素敵なママになってた