11月22日(火)
遅ればせながら、園子温監督の「冷たい熱帯魚」、レンタルDVDで観ました。「愛のむき出し」も「冷たい熱帯魚」も観たかったんだけど、前者はあまりの長さに、後者はなんとなく観損ねてまして、園子温監督作品は初めての鑑賞です。

地方都市で小さな熱帯魚店を営む社本は妻と娘の3人家族。妻の妙子とは再婚。娘の美津子は亡くなった元妻との間に生まれた子で、妙子との折り合いはよくない。妙子を愛しながらもひとつにならない家族にもどかしさを感じる社本、なつかない継子と頼りない夫に絶望する妙子、母の死後すぐに若い女と再婚した父とその相手を嫌悪する妙子。辛うじて形を保っているだけの社本家に事件が起こった。美津子がスーパーで万引きをしたというのだ。さっそく謝罪のために社本と妙子は現場を訪ねた。しかし、反省の色がない美津子は警察に突き出されそうになる。そこに訳知り顔で現れたのが村田という男だった。村田は言葉巧みに店長を説得、その場を収めてしまう。自分も熱帯魚屋をやっているという村田は、社本たちを店に招待し、大物ぶりを見せながら巧みに3人を取り込んでいく。美津子は村田の店に住み込みで働くことになり、社本は怪しげな投資話の交渉の場にかり出され、妙子はあっさりと誘惑され村田に犯される。しかし、彼らはまだ知らなかった。村田という男の本性を・・・。
この作品についてはおそらく、いろいろな人たちがいろいろなことをもう語ってるんでしょう。「人間の暴力性と狂気を赤裸々に描ききった傑作!」とかなんとか。まあ、そういう評価は有りでしょうが、まずワシが感じたのは「こんな映画を撮りたい!」という監督の強い想いと、それを2時間半近い映画でやりきり、なおかつ客を飽きさせないパワーと技術です。犬のブリーダーが何人も殺してたって実際の事件がモデルになってるそうですが、おかしなヤツって世の中に実際にいるよね~、もしかしたら自分の近くにも・・・なんてちゃちな恐怖はこの映画からは感じません。伝わるのは実際の事件にインスパイアされながらも、監督自身のイマジネーションが作り出した村田という怪物の強烈な存在感と、それに惹かれ、破滅していく人々の悲哀。彼らの中にもそれぞれに「狂気」があり、村田という怪物に出会うことで、それらが膨らみ、はじけ、滅んでいく。象徴的なのはもちろん、主人公の社本なんでしょうが、ワシが強く印象に残ったのは村田の愛人の愛子でした。彼女は村田という人物に惹かれていたのではなく、狂気に支えられた村田の強さに依存していただけ。だから、村田が社本に倒されると、あっさりと社本に乗り換える。社本に命じられ、いつものように風呂場で死体を解体する愛子が、社本に「半分終わったよ」と語りかけるシーンがワシ的には一番インパクトありました。それから、社本に殴り倒され、半分解体した村田の死体に抱きついて呼びかけるシーン。グロいけど、なんか悲しく、それでいてちょっと笑えるこの映画のハイライトでした。ラストシーンの後味の悪さは、ワシには監督の照れ隠しにしか見えなかったなぁ。あそこで中途半端なインパクトを打ち出すより、さらっと終わった方が、映画としてはキレイだったと想う。けど、きっとキレイに終わりたくなかったんだろうね。まあ、一般の人にはお勧めできない映画ではありますが、ヌルい邦画やハリウッド映画に満足できない人は必見ですね。骨のある新しい監督が、また出てきたって感じです。
★★★※☆(ホシ3つ半)