SNSの悪い影響ばかりが協調される傾向にあるが、今回取り上げた事件は、このように社会の暗部をさらけ出し、犯罪を解決に導くことにつながることもあるのだという一つの例にもなると思う。
昨年12月初めに、中国の粗末な小屋で首を鎖でつながれた女性の動画がインターネット上に拡散し、夫が逮捕された。この女性は中国の農村で横行する人身売買の被害者であることがわかった。
● 結婚させられたあとに8人の子ども
動画がSNSを通じて拡散し、真相追及を求める声が高まったことから地元の当局が調べていた。
動画はこの家を訪ねたとみられる男性が撮ったものだった。
寒々しい小屋の中にいた女性は、薄着のまま首を鎖に巻かれていて、歯はほとんど抜けている。動画を撮影した男性との意思疎通はうまくできない様子だった。
中国東部の江蘇省徐州市(こうそしょうじょしゅうし)豊県(ほうけん)の郊外にある農村で女性は5年ほど前から首を鎖でつながれたり、縛られたりしていて、夫が虐待の疑いで逮捕された。
女性は精神疾患を患わっているので、保護されて病院で治療を受けている。
この女性は24年前、およそ2000キロ離れた内陸部。雲南省の農村から人身売買で連れてこられ、夫と結婚させられたあとに8人の子どもを産んでいた。
● 当局・誘拐・人身売買の事実はない
豊県当局は当初、女性は1998年に男性と結婚しており、誘拐・人身売買の事実はないとしていた。また、鎖でつながれていたことに関しては、精神疾患による攻撃的な傾向が見られたためとしていた。
しかし中国の法律では、精神疾患があると結婚することができないとされている。そこから、ネット上では女性が結婚後に虐待を受けて精神疾患を発症したのではないかといった疑惑が浮上していた。
当局は再び公式見解を発表。女性がホームレスとして流浪生活をしているところを男性が引き取ったもので、身分は不明だとした。
しかし、ネット上では批判がさらに広がった。
その後、当局は3回目の公式見解を発表。女性が病気治療のために江蘇省に連れてこられ、その後行方が分からなくなっていた人物であるとし、犯罪との関連性を調査中だと釈明した。
しかし、このような3回にわたる支離滅裂な見解発表後、結局ネット・ユーザーの予想通り、誘拐・人身売買が行われていたことが分かり、当局の顔に見事に泥を塗る結果となった。
女性の50代の夫は、8人の子どもを持つ父親として自らをアピールする動画をSNSで公開し、地元企業の宣伝にも起用されていた人物だった。
当局は人身売買に関わった8人の身柄を拘束し、当初人身売買を否定していた地元政府について、問題を放置したとして幹部合わせて17人を免職などの処分にした。
● 解任を求めるキャンペーン
中国のファーストレディ、習近平(しゅう きんぺい)夫人の彭麗媛(ほう れいえん)さんの「女子・女性教育促進特使」について、「取り消すべきだ」との公開書簡が発表された。

彭麗媛さんの解任を求めるキャンペーンがインターネット上で展開されている。
誘拐されて鎖につながれ8人の子供を産んだ女性の事件が明るみに出たにもかかわらず、女性や子供の人権を守るべき特使である彭麗媛さんが一切この事件にコメントしていない。
また、中国政府に対して何らかのアクションを求めることもしていないために「彭麗媛さんには特使の資格はない」などと強く批判されている。
公開書簡で「中国では毎年何万人もの女性や子供が人身売買や虐待を受けているのに、彭さんは女性や少女に対するこうしたひどい人権侵害に関心を示す様子がない」と指摘している。
参照:人身売買か誘拐か 首を鎖につながれた女性、広がる衝撃 中国
中国 首を鎖でつながれた動画の女性 人身売買の被害者と判明
中国の「首に鎖の女性事件」ユネスコ女性特使務める習近平夫人に解任運動
