妻が洗面所から出てきて、テレビを見ているぼくに語る。
「私、鏡を見てゾッとしちゃった。だって私、山姥(やまんば)みたいな顔をしてるんだもん。年を取るっていやぁね。」
妻は今年56歳。私は61歳で自分が子供の頃の感覚で言えば、完全に老夫婦という分類に入る。
妻の嘆きに対して、ぼくには何もコメントができない。実はぼくも鏡で自分の顔を見ると、最近つくづく老けたと、思ってしまうのだ。やたらとシミ、そばかす、ほくろが増えてきてさらには頭に白髪がずいぶん散らばってきた。顎のあたりの皮膚もたるんできている。
歯も抜歯を重ね、淋しい口の中になっている。部分入れ歯を高いお金をかけて作ってもらったものの、やはり口の中の異物感はぬけずに、食べるとき以外ははずしている。色々とそのほかにも老いを感じる事は多い。
去年の12月に読んだ老化に関するニュースで興味深い指摘があった。アメリカのスタンフォード大学の研究チームが、18歳から95歳までの約4300名から得た血液サンプルを用いてタンパク質を分析し、2019年12月、その結果をまとめた研究論文を雑誌「ネイチャーメディシン」で発表した。
『老化は一定のペースで継続的に進行するのではなく、34歳の青年期、60歳の壮年期、78歳の老年期という3つのポイントで急激に進む』ことも示されているとの事。
ぼくの場合は、34歳ではそのような意識はなかったのだが、60歳を過ぎたあたりから急速に体調面の衰えを感じるようになった。
まず、気持ちのいい気分で朝を迎えた記憶が最近ない。いつもまるでどこか具合でも悪いのではないかと自分で不安に感じるほどに、寝起きが悪い。『病人か?』と自分でもあきれるくらいにフラフラで布団から離れる。
昨晩も、会社での仕事があまりにきつくて、つい弱音を吐いてしまった。
「あまりに疲れてて、このまま眠ったら目が覚めない永遠の眠りにつきそうだよ。」妻は「それじゃあ私は困るから、明日きちんと目を覚ましてね」。
そして今日、私は妻のリクエスト通りに目が覚めている。
本日の「2020年7月12日」、
また1日なんとか生き延びているという事実を確認しつつ心に刻みつつ、60代に突入した日々をぼくは過ごしている。