「俺たちの箱根駅伝」 2026年製作 日本
 

池井戸潤の長編小説を実写化した土曜ドラマ『俺たちの箱根駅伝』が、2026年10月10日にスタートしました。本作は、箱根駅伝を走る学生ランナーと、その姿を視聴者に届けるテレビ局スタッフという、2つの視点から描かれる異色の舞台裏ドラマです。

制作には4年以上の準備期間が費やされ、関東学生陸上競技連盟も全面協力しています。駅伝に挑む選手たちだけでなく、レースの生中継を支えるテレビ局の人々にもスポットを当てている点が、本作の大きな特徴です。

このドラマを見て、まず思い浮かんだのが、同じく池井戸潤の小説を原作とするTBS系ドラマ『陸王』(2017年)です。

『陸王』は、老舗足袋業者の「こはぜ屋」がランニングシューズの開発に挑む物語です。主人公たちの運命を左右するランナーの目標や、物語のクライマックスにも箱根駅伝が深く関わっています。そうした作品を思い出しながら見ると、池井戸作品と箱根駅伝の相性のよさを改めて感じます。

一方、『俺たちの箱根駅伝』は、箱根駅伝そのものが物語の中心です。伝統校の復活を目指して走る学生たちと、レースの生中継に全力を注ぐテレビ局員たち。それぞれの立場で奮闘する人々の姿を通して、箱根駅伝のもうひとつの顔を描いています。

このドラマは夫婦で見ていたのですが、妻が最初に口にしたのは「米屋の娘が出ているねー」という一言でした。

伊藤沙莉(いとう さいり)さんといえば、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年)で演じた米屋の娘という印象が、わが家ではいまだに強く残っています。すっかり「米屋の娘」という呼び名が定着しているのです。

そんな伊藤さんが本作で演じるのは、テレビ局のディレクターです。仕事熱心である一方、融通が利かず、頑なな一面も持つ人物として描かれています。

もちろん、そうした性格も脚本上の狙いなのだと思います。ただ、少々キャラクターを作り込み過ぎているようにも感じました。人物の個性を際立たせようとするあまり、言動が不自然に見えてしまうのです。もう少し肩の力を抜いた演技や人物描写でもよかったのではないか、というのが率直な感想です。

第1話の大きな見どころは、主人公であるチーフプロデューサー・徳重亮(大泉洋)が、テレビ局の上層部から無理難題を突きつけられる場面です。

上層部の要求は、駅伝中継にバラエティー色を加え、視聴率を稼ぐことでした。さらに編成局長の黒石(高橋克典)は、徳重たちに相談することなく、芸能プロダクションの社長を通じて人気お笑いタレントを解説者として起用する話を進めてしまいます。

しかし、徳重には譲れない信念がありました。それは、あくまでも主役は必死に走る学生たちであり、中継スタッフや解説者は脇役に徹するべきだという考えです。先代から受け継いだこの信念を踏みにじられた徳重は、怒りをあらわにします。

納得できない徳重は、芸能プロダクションの社長に直接会い、お笑いタレントを出演させるつもりはないと伝えます。ところが、これに腹を立てた社長は、今後、自社のタレントを大日テレビには出演させないと宣言します。

一つの番組のキャスティングをめぐる対立が、テレビ局全体を巻き込む重大な問題へと発展してしまうのです。局の上層部の意向と、自分が守りたい中継のあり方。その板挟みになった徳重が、この窮地をどう切り抜けるのか。第1話の物語を大きく動かすポイントになっています。

そして、終盤に徳重が見せる展開には、思わず「その手があったか……」と感心させられました。追い詰められた状況をどう打開するのかという意外性があり、ドラマとしても見応えのある場面に仕上がっています。単に困難に立ち向かうだけでなく、機転を利かせて道を切り開くところに、池井戸作品らしい面白さを感じました。

第1話は、駅伝中継のあり方をめぐる対立を軸に、テレビ局の内幕と主人公の信念を描き、最後まで興味を引っ張る展開でした。

気になるのは、この第1話で生まれた高揚感を、2話目以降も維持できるかどうかです。学生ランナーたちの戦いと、それを伝えるテレビ局スタッフの奮闘。この2つの物語が今後どのように交差していくのかにも期待したいところです。