今年6月、男性Aさん(19)を横浜市内の住宅に連れていき、逃走できない状態にしたとして、Aさんの両親や、家族から「先生」と呼ばれていた男性ら、計7人が逮捕されました。

家族ぐるみで監禁に関与したとされる今回の事件では、被害者の家族が特定の人物に深く依存していた経緯も明らかになっています。

9月4日には、事件に関与したとされる村上有被告(46)と兄夫婦の計3人に対する初公判が開かれました。法廷では、Aさんが置かれていた状況や、村上被告と辰己家の関係について、検察側の冒頭陳述などを通じて詳細が示されました。

● 7人の逮捕につながった事件の経緯
事件が明るみに出たきっかけは、Aさんの知人が奈良県警に寄せた複数回の相談でした。知人は「友人が監禁されている」と訴え、警察に助けを求めていたといいます。

捜査の結果、監禁への関与が疑われたのは、村上家の3人と、Aさんの家族4人です。合計7人が逮捕・起訴される事態となりました。



逮捕された人物は、次のとおりです。

村上家からは、村上有被告、兄の順容疑者、その妻の莉奈容疑者の3人です。

一方、Aさんの家族からは、姉の桜容疑者、父親の辰己勝被告、母親の貴子容疑者、17歳の弟の計4人が逮捕されました。Aさんは、桜容疑者が暮らす2階建て住宅に監禁された疑いが持たれています。

● 「先生」と呼ばれた村上被告 辰己家が信頼を寄せた理由
村上有被告(46)は、コンサルティング会社の社員として働く一方、「神の取次者」を名乗り、相談者の悩みに霊が答えると説明していたとされます。「お清め」と称するサービスの費用を受け取り、生活していたということです。

村上被告の母親はコンサルティング会社の役員を務めており、有被告はその会社でコンサルティングに携わっていたとされています。

辰己家が村上家と知り合ったのは、10年以上前のことでした。当時、辰己家は娘の養育に苦労しており、その問題について村上被告に相談したといいます。

その後、村上被告の指示に従い、娘を彼の母親のもとで働かせるなどしたところ、生活態度に改善が見られたとされます。この経験をきっかけに、辰己家は村上被告の能力を信頼するようになりました。

なかでも父親の辰己勝被告は、村上被告を「先生」と呼んで強く信頼していたといいます。近年では、家族で経営する「タツミ工業」のコンサルティングも村上被告に依頼していました。

こうした関係のなかで、Aさんも村上被告と関わるようになっていきます。

● Aさんを村上被告のもとで働かせる
Aさんが村上被告のもとで働くことになったのは、2024年のことでした。父親の辰己勝被告は、Aさんの「素行が悪い」ことなどを理由に、村上被告に預けたとされています。

検察側の冒頭陳述によると、2024年8月、辰己家はAさんを村上被告のもとで働かせることにしました。当初は賃金が支払われ、食事も提供されていたといいます。

しかし、同年12月から2025年1月ごろになると、Aさんの素行不良を理由に、再び村上被告に預けられることになりました。その後もAさんは村上被告のもとで働き続けましたが、「修行」とされ、賃金は支払われなかったとされています。

Aさんは岩手県内でも働かされましたが、そこでも賃金は支払われなかったといいます。

村上被告は、飲食店「レストラン賀寿(GAJU)」の経営や運営に関わっていたとみられています。同店については、2021年6月28日付のヨコハマ経済新聞で紹介されていました。

記事では、横浜出身の店主として村上有さんが登場し、全国各地から食材を仕入れていることや、盛岡の名店「食道園」の冷麺に着想を得た「盛岡風冷うん」を紹介していました。

Aさんは仕事上のミスなどを理由に、村上被告らから置き去りにされることもあったとされています。

冒頭陳述によれば、Aさんは奈良にいる友人を頼り、地元に連れ帰ってもらうなどして、村上家から離れて生活するようになりました。

● 逃走したAさんをめぐり、家族間で金銭の要求も
Aさんが村上家から逃げ出した後、村上家は辰己家に対して金銭の支払いや謝罪を求めることがあったとされています。

さらに、村上被告らは辰己家にAさんを捜すよう要求したといいます。辰己家はAさんの知人を尾行するなどして行方を捜し、最終的にAさんを発見しました。

その後、Aさんは横浜市内の住宅に連れていかれ、監禁されたとされています。今回の事件は、こうした経緯の末に発生したとみられています。

● 「神の取次者」を名乗った村上被告 親族が語った信仰
Aさんが連れていかれたのは、村上被告とその母親が暮らす神奈川県横浜市内の自宅でした。

近隣住民への取材では、その住宅は「宗教をやっている家」として認識されていたといいます。

村上被告の親族は、彼が信仰に傾倒するようになった背景について、次のように語っています。

「有は子どもの時から病気がちだったんです。母親が困り果てて、悩んでいた頃に“チカラ”を持つ気学をやっている人がいて。その方から“あなた方もそういう(チカラを持つ)一族だ”と言われてから信仰するようになった」

親族自身も、村上被告が語る「チカラ」を信じているとみられます。さらに、神の存在について次のように説明しました。

「要するに人じゃないんですよ、神って。エネルギーだから。それが“動く”ってことがあるんです。それを占うと、『こうするべきだ』という“証”が必ず出るんです。

有が何かをやるんじゃない。神様がやるんです。有が媒介になるということです。イタコみたいなものです。神界の霊媒者なんですよ」

この証言からは、村上被告を特別な存在として捉える考え方が、周囲の人々にも共有されていたことがうかがえます。

辰己家は、子どもたちの養育や生活上の問題について、村上被告に相談し、対応を委ねていたとされています。家族の問題を外部の人物に任せるようになった背景には、村上被告への強い信頼があったと考えられます。

ただし、家族がどのような判断で子どもの養育を委ねたのか、その詳細については、今後の公判でさらに明らかになる可能性があります。

● Aさんを「逆モヒカン」にして嘲笑 動画は法廷で再生予定
今回の公判では、Aさんの髪を「逆モヒカン」にしたうえで、村上被告らがその姿を嘲笑していた事実も示されました。

「逆モヒカン」とは、頭の中央部分だけを剃る髪形を指します。Aさんは下着姿のまま、この髪形にされたなどとして、村上被告は監禁や強要に関する罪に問われています。

その際に撮影された動画は、10月に予定されている公判で法廷内に再生される見込みです。映像を通じて、Aさんが置かれていた状況がどのように示されるのか、今後の審理が注目されます。

● 逮捕前に見られた異変 薬物事件との関連も捜査
村上被告は、監禁に関する事件だけでなく、覚醒剤取締法違反と麻薬及び向精神薬取締法違反の罪にも問われています。

親族によると、村上被告は事件の数か月前に新居へ引っ越してから、様子が変わったといいます。突然怒り出して暴れたり、茶碗を割ったりすることがあったため、母親も異変を感じていたとされています。

親族は、薬物に関する罪について、村上被告が自ら警察に話したと説明しています。

また、村上被告は20歳ごろまでおとなしい性格だったものの、ある人物とサウナで知り合ったことをきっかけに親しくなり、新宿へ通うようになったとも語られています。母親は「悪い友達に引っかかったんじゃないか」と話していたということです。

薬物の使用と、村上被告が掲げていた宗教的な信念との関係については、現時点で明らかになっていません。薬物事件の具体的な経緯や、本人の認識については、今後の公判で確認されることになります。

● 今後の公判で何が明らかになるのか
今回の事件では、村上被告と辰己家の長年にわたる関係が、Aさんの監禁に至るまでの背景として浮かび上がっています。

辰己家が村上被告を「先生」と呼び、子どもの問題や家業のコンサルティングを任せていた一方、Aさんは村上被告のもとで働かされ、逃走後には家族らによって捜索されたとされています。

7人が逮捕・起訴された今回の事件について、検察側は監禁に至る経緯や、Aさんに対する行為の詳細を明らかにしています。

村上被告は起訴された容疑を全面的に認めているとされています。今後の公判では、Aさんが監禁されるまでの経緯に加え、被告らそれぞれの関与や責任について、さらに審理が進められる見込みです。

参照:《10代を裸にして監禁、“逆モヒカン”に…》霊の言葉でコンサルする“神の取次者”
   《10代男性を裸にし“逆モヒカン”で監禁》「特別なチカラで人を助けたり、病気を治したり」
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