彼氏から別れ話を切り出されたことに腹を立てた女性が、自分を含む男女6人で彼氏に暴行を加え、死亡させた事件です。経緯を知るほど、凄惨さが際立ちます。
2024年10月、北海道江別市の公園で、大学生の長谷知哉(はせ ともや)さん(当時20歳)が集団暴行を受けて死亡しました。強盗致死などの罪に問われている元大学生の川村葉音(かわむら はおと)被告(21)ら男女3人の裁判員裁判の初公判が25日、札幌地裁で開かれ、3人はいずれも起訴内容を認めました。

ほかの2人は、当時18歳の元高校生・滝沢海裕(たきざわ みひろ)被告と少年です。裁判では刑の重さが主な争点となっており、判決は6月25日に言い渡される予定です。
● 彼氏に「1年後に別れたい」と言われた
そもそも、長谷さんと交際相手だった八木原亜麻(やぎはら あま)被告(21)は、どのような経緯で知り合い、なぜ別れ話に至ったのでしょうか。暴行事件に発展した背景として重要な部分ですが、その点を詳しく報じた記事はほとんど見当たりません。
現在わかっているのは、長谷さんが別れ話を切り出したあとの状況です。
事件前、八木原被告は知人にこう話していました。
「彼氏に『1年後に別れたい』って言われたら、あなただったらどうする?」
八木原被告は今年に入ってから長谷さんと交際していました。しかし、長谷さんが就職活動を理由に交際の期限を示すような話をしたと説明しています。
八木原被告と川村被告の友人は、当時の様子について次のように証言しています。
「亜麻は彼氏とけんかしたとき、電話ですごく怒っていました。かなり強い口調になることもありました」
事件直前、八木原被告は長谷さんと2人で会ったあと、川村被告や少年らと合流し、長谷さんを公園へ連れ出しました。
川村被告は警察の調べに対し、「八木原被告のために、長谷さんに謝らせたかった」という趣旨の供述をしていたといいます。
川村被告の友人も、
「友だちに何かあったら許せないタイプでした。友だちのためなら手を出してしまうようなところがありました」
と話しています。
● 「命を奪ってしまい申し訳ありません」
初公判で川村被告の弁護側は、「計画性はなく、主犯格とされる川口侑斗(かわぐち ゆうと)被告に逆らえない関係だった」と主張しました。
起訴状によると、川村被告ら3人は川口被告らと共謀し、2024年10月25日から26日にかけて、江別市内の公園で長谷さんに激しい暴行を加えました。そのうえで、「全部出せ」などと脅し、現金やクレジットカードを奪い、外傷性ショックによって死亡させたとされています。
長谷さんは衣服を身につけていない状態で発見されました。6人は数時間にわたり、長谷さんの全身にあざが残るほど激しい暴行を続けていたとみられています。
その際、「全部出せ」「クレジットカードも出せ」「銀行カードはあるのか」などと迫り、カード類や衣服を奪いました。
暴行や謝罪を強要する様子はスマートフォンで撮影されていました。この事件では、計6人が起訴されています。当時18歳の元アルバイト川口侑斗被告と滝沢海裕被告は「特定少年」にあたり、起訴時に実名が公表されました。
さらに川村被告らは、奪ったクレジットカードを使って近くのコンビニでたばこや弁当を購入し、長谷さんを公園に放置したまま現金を引き出し、その金でラーメンを食べていたとされています。
公判3日目となった27日、検察から遺族への思いを問われた川村被告は、
「被害者遺族の方に苦しい思いをさせ、大切な1人の命を奪ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。事件当時は何も考えず、人の気持ちを考えないまま行動してしまいました」
と、声を震わせながら謝罪しました。ただ、その言葉からは本心が伝わってこないと感じた人も少なくなかったようです。
● 「本当に何も考えていませんでした」
証言台に立った川村被告は、主犯格とされる川口侑斗被告の暴行について、「止めようとは思わなかった」と証言しました。
「相手が怒っていて怖かった。ここまで暴力が激しくなるとは思わなかった」
検察官から「目の前で人が激しく暴行されているのに気にならなかったのか」と問われると、
「(八木原被告と)話していたので気にしていませんでした」
と答えました。
さらに、
「被害者が『もうやめてください』と言っていたのは聞こえましたか」
と問われると、
「聞こえていました」
「胸は痛みませんでしたか」
「そのときは本当に何も考えていませんでした」
と話しました。
暴力は止まりませんでした。検察側は、川村被告自身も執拗に暴行を加えていたと指摘しています。
検察官から、
「本心を話しているようには思えない。なぜ軽い感覚で暴力を振るえたのか説明してほしい」
と追及されると、
「本当に何も考えずに行動していました。それが事実です」
と繰り返しました。
また、特定少年の被告も、暴行を見ながら笑っていた理由について、
「周りの人が笑ったのでその雰囲気に合わせた」
と説明しました。
長谷さんに金品を要求した場面についても、
「お金も取るんだと思ったが僕はそのつもりはなかった」
と話しています。
6人がそろって正常な判断力を失い、集団心理によって暴力がエスカレートしていった結果、ここまで残虐な事件につながったように感じます。人が集団の空気に流される恐ろしさを象徴する事件です。
参照:【江別暴行死】「これ以上やめて」被害者の声を聞いても、「何も考えていなかった」
6人全員が死刑もしくは無期懲役の『強盗致死罪』で起訴【大学生集団暴行死】
男子大学生暴行死 交際相手「暴行には加担していない、笑うなどしてあおった」
