「セッション」 (原題:WHIPLASH )
監督・脚本:デイミアン・チャゼル 2014年 アメリカ
キャスト:マイルズ・テラー 、J・K・シモンズ 、ポール・ライザー
手に汗を握るという表現があるが、まさにそれだった。
映画が終わって、スクリーンから自分自身に意識が戻ると、拳を握りし
めて体全体に力が入っていることがわかった。
体から力を抜くと、「ホッ」と、一息ついた。それくらいラストのクライマッ
クスの演奏場面では緊張を強いられた。そもそもぼくはジャズを知らない
し、ドラム演奏に対して特に思い入れもない。
そんなぼくが夢中になった。これだけ、物語にのめりこませる音楽を題材
にした映画にはそうそう出会えるものではない。
名門音楽学校に入学し、世界的なジャズ・ドラマーを目指すドラマーの
ニーマン(マイルズ・テラー)。
そして、指導という名の元に教師の立場を利用し、生徒の気持ちを絶望
の淵に落とし込む鬼教師フレッチャー(J・K・シモンズ)。
その二人が繰り広げる、狂気の人間ドラマ。ニーマンは、鬼教師のいじ
めにも見えるしごきを乗り越えて、彼が望む成功への切符を手に入れら
るのか?
まずは、J・K・シモンズの指導シーンのド迫力演技には圧倒される。体の
奥から絞り出される大きな声、顔面に血管を浮かせて威嚇する表情の
怖さ、この映画の成功には、J・K・シモンズの怪演によるところが大きい。
この映画を作ったデイミアン・チャゼル監督は、まだ30歳という若さ。
この映画は実体験を元に制作した事を、このように述べている。
『僕が指導を受けた実際の指揮者は、確かにJ・Kぐらい怖かったよ。で
も、あんなに意地悪ではなかったかな(笑)。ある意味で素晴らしい教師
であり、インスピレーションを与えてくれる人だったね。
確かに、指導するときにはドラムに対して大声で叫んだり、恐怖を利用し
て指導するタイプの先生だったけど。でも決して、フレッチャーのように
一線を越えるようなことはしなかったよ。』
『僕は一方で、自分の体験から音楽をやることに恐怖を感じるようになっ
たんだ。実際、その指揮者の悪夢を今でも見ることがあるよ(笑)。その
音楽に対する苦悩と恐怖は、これまで映画を通して観たことがなかった。
だから、その経験をベースに映画を作ろうと思ったんだよ。』
チャゼル監督は、音楽の指導を受けていた頃に、映画同様に威嚇する
指揮者に悩んだようだ。但し、単にその指導者に泣き寝入りしているだ
けではなかった。映画にして、その作品はアカデミー賞をとって、結果、
世界に自分の想いを発信できた・・・・・
まさしく『転んでもただで起きない』」という精神で、今までの理不尽な
恐怖に逆襲したともいえるのではないか。
参照:映画『セッション』チャゼル監督インタビュー 「自分の体験から音楽を
やることに恐怖を感じるようになったんだ」
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