黒いスーツを着た男

「黒いスーツを着た男」  (原題:TROIS MONDES/THREE WORLDS)
2012年 フランス/モルドバ   監督 カトリーヌ・コルシニ   

ぼくは今、車の運転をしていない。かなり前の事になるが、交通事故
を起こして妻から運転禁止命令が出されてしまったからだ。

交差点で、赤信号なのに気づかず直進してしまって、左横から来た
車とぶつかって、ぼくの車はほぼペチャンコになり、ボンネットか
ら煙が出ていた。

「早く、車から出たほうがいい」と、車の状況を見て危険と判断した
人にアドバイスをもらい、あわてて妻と子供と外に出た。3人とも
車の悲惨な状況のわりにはみんな無事だった。でも後ろに乗ってい
た子供はその頃、まだ小学校の低学年で、それはもう突然の恐怖に
大泣きで、まあ大変な事だった。

相手の車は、ぼくの車より頑丈な軽トラックのような車で、乗って
いる人にけがはなかったものの、肩が痛くて病院に通う事になったと
かで、菓子折りを持って妻といっしょにおわびに行ったものだ。

保険に入っていたので、金銭的にはなんとかなったが、その時の

気の重さはいまだに記憶に残っている。

この映画「黒いスーツを着た男」は、車で人を轢いたのに、逃げて
しまって、それが元で自分の人生がボロボロになっていく加害者の
人生を描いている。またそのひき逃げ事故の目撃者の女性、さらに
被害者の妻らの運命が非情に交錯し合う。

そんな内容なので、見ていて自分の事故の事を思いだしてしまった。
主演は“アラン・ドロン”の再来と称えられ、本国フランスでも
大注目の俳優・ラファエル・ペルソナとのこと。

かなり特異なケースを描いている。轢き逃げ犯は、事故の一部始終
を目撃した女性と、関係を持ってしまう。そのために最初はその女性
は被害者の妻に感謝されていたのに、逆に恨まれてしまうという・・・・・・
事故のねじれた巻き添えを食ってしまっている。

轢き逃げ犯人の「なんとか事故を世間に公にしたくない」という気持
ちと、被害者には「自分なりのできるだけの事はしてやりたい」という、
行ったり来たりの不安に揺れ動く心理状態がうまく描かれていた。


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