
3月9日より「ありがとうカーニバル」「ファイナルカーニバル」に向けてキャンディーズはMMPやスタッフと一緒に合宿に入っていた。最終日にあたるこの日はその集大成の公開リハーサルが行われた。
私が初めてキャンディーズのライブに魅せられた忘れられない日でもある。
この時の事も33年前に出そうとしたランちゃんへの未完のファンレターに詳細に書かれている。下書き状態だったため細かい修正を入れながら、なるべく当時のままの文章で掲載します。
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『 ・ ・ ・ ・ <前略> ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
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~忘れられないつま恋の思い出~
3月15日は抜ける様な青空。僕は友人も誘って2人で期待に胸を膨らませて出かけたのです。集合場所の新宿西口に横付けされたバスは20台近く!圧巻でした。このおびただしいファンの数はなんだろう。こういった大集団がバスを連ねて名古屋や大阪からも詰めかけると思うと少々ゾッとしました。
キャンディーズのファンとは如何なる人達なんだろうか。ひょっとしたら僕等とは全く別世界の人たち? ミーハー? それとも硬派? しかしそこで見たファンの人達はごくごく普通の男の子達、すぐに溶け込めそうな親近感を覚えました。
#これは途中の東名のパーキングエリア。キャンディーズバスで埋め尽くされる。今考えると夢の様な話です。


#バスの正面での友人のスナップです。まだチケットが余っていたので急きょ誘いました。
#ところでこのキャンディーズのフラッグ、どこかおかしいですよね。
#そう近ツリさん間違えて左右逆に作ってしまった様です。(笑)

東名高速経由でつま恋に到着するといきなりがっかりする事がありました。バスに乗り込んできた会場関係者が
「本日の公開リハーサルはカメラやカセットの持ち込みは一切禁止です。それらを車中に置いて降りてください。」
一斉に不平の声があがります。リハーサルだから写真も録音もOKと思い自慢の愛機を携えてやってきたファンんばかり。我々もがっかりです。この日の為に借りた200mm望遠レンズは何のために。皆、悪態をつきながらも未練がましく手ぶらでバスを降りました。もちろん体のどこかにカメラを忍ばせ持ち込みに成功した人も居た様です。
開演も大幅に遅れました。僕らはコンサートの開演まで丘の斜面で日向ぼっこしていると下のほうでは当日券のファンが開場間近という時に係員の制止を振り切って入口に殺到し大混乱。見ていて何とも情けない気持ちになりました。結局開演はかなり遅れて入場できたのは午後4:00近かったと思います。
#バスを連ねて詰めかけたファン。カメラはバスに残したのでこの後の写真はない。音楽専科別冊「キャンディーズ ラストアルバム」より。

屋根付きの屋外ホールに入ると
「本日はコンサートではなくリハーサルで、大事な録音もするのでテープを投げたり声援を送ったりは一切せずに静かに見てください。ただ最後に30分ばかり楽しいステージがあるのでその時は皆さん大いに乗って結構です」
との説明がありました。リハーサル見学という不思議なシチュエーションに戸惑いながらも最後の30分に期待する事にしました。
最初はMMPのリハーサルが大音響で延々と続き、3人の登場を首を長くして待っているファンは少々不満そう。僕もしかり。でもキャンディーズのバックをこんな実力派バンドが務めるのは頼もしく誇らしくも思いました。特にホーンセクションがカッコよく歯切れのよいサウンドをぶつけてきます。この時録音したのがあの「オープンセサミ」だったんですね。
そして、遂にキャンディーズが登場しました!

一瞬パラパラと小さな拍手が起きましたがすぐに会場は静かに。
あのいつもブラウン管に映っていたランちゃん、スーちゃん、ミキちゃんがそこにいる!! ふいをつかれた格好ですが、これがキャンディーズという実感はあまり湧いてきませんでした。ちょっとお洒落な普通の女の子3人というイメージだった。[1]


ステージでは最新の洋楽曲のリハーサルが続きます。ファンもマナ―を守って固唾をのんで見守っていました。
自分はミキちゃんの大ファンで、明るく気さくなスーちゃんも大好き。実はそれまでランちゃんの本当の魅力にはあまり気づいていませんでした。しかしリハーサルが進むにつれ次第に貴方の魅力にも惹かれていきました。落ちつきがあって聡明なしっかり者の日本女性といという印象を持ちました。[2]
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・<中略>・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
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~寒さを吹き飛ばす、コンサートタイム~
最新の洋楽曲を華麗に歌やダンスをこなす3人の実力に感心しているうちに、急にあたりが冷え込んできました。僕らステージの後方で見ている連中は特に外からの寒気が肌にしみます。寒い。キャンディーズを目の前にしながらも寒さに震えてトイレへ行く者、売店に何か暖かいものを買いに行く者が目立ちはじめる。僕のとなりの人は顔が青ざめていて先ほどからコートの襟をたてて寒さをこらえている。[3]
もはや限界と思ったそんな時に あの熱いステージが始まったのでした。
「これからは皆さん大いにノッテ結構です!」
3人が客席に呼びかける。寒さに震えていたため皆の反応はやや鈍かったが、前のほうで声援が起こり、テープも何本か飛びました。トイレからも売店からもあわてて客席に戻るファン。場内が生き返ったように生気を取り戻したのです。
最初はMMPのメンバー、PA、舞台デザイン。照明の裏方さん等、すべてのスタッフを紹介。この時の3人のトークが今思い出しても楽しく、特にあなたがMMPの事を舌が回らなくて「エムエムペー」と呼んでしまった時はステージも客席も大爆笑。3人ともはしゃいで笑い転げていましたね。キャンディーズの笑顔、トークの楽しさを見ているだけでその魅力にどんどん惹かれてゆきました。特にリーダーとしての落ち着きがあり、それでいてユーモアセンス抜群のランちゃんの株は自分の中で一気に上がりました。

キャンディーズ:「皆さーん。寒かったでしょう」
客席:「寒かったよ―ーーーー!」 (実際本当に寒かった)
キャンディーズ:「それじゃ 温まりましょう! 手を頭の上にあげて。手拍~~~子!」 [4]
われんばかりの手拍子にのって、アップテンポの強烈なイントロが始まる。キャンディー ツイスト!! 歓声がどっとあがり、この時ステージと観客が1つになった。

キャンディーズのヒット曲のメドレーが続くなか「春一番」がスタート。声援の送り方には様々なパターンがあると知って早速見よう見まね。そうすると何故か体中があたたかくなってくる。これがキャンディーズのステージか!! 素晴らしい!! こんな体験は初めてでした。あの小さく細い体のとこにこんなパワーが潜んでいたのだろうか。ステージからぶつけて来る熱いリズムにこたえていると胸の中で鬱積していたものがパーっと吐き出されていく。暗かった浪人生活のこと、高校時代人間関係にも苦しんだこと。浪人時代に失恋もしたこと。。。
ここにきている連中だってそれぞれ様々な悩み事を抱えているに違いない。
ミキちゃんの自作曲For Freedomにあるこのフレーズ
「たくさんの悲しみ拾い集めて 空へなげつけよう♪」
まさにそんな思いでコンサートを聞いていたファンは多かったのではないだろうか。
3人が遂にこの日「微笑みがえし」がオリコンで1位になったことを報告。喜びで声をつまらせていると、私も自然に「おめでとう」声援を送っていました。この1位はキャンディーズとファンの強い結束の結果だなという実感。
こうして熱いステージが30分余り続きいよいよクライマックス。最後は確かダンシング・ジャンピング・ラブだったと思いますが、「ヘーイ、ヘイヘイ、ヘーイヘイ♪」の客席との掛けあいでファンの興奮も最高潮に達しました。途中で3人が客席最前列のファンにマイクを向けて言葉をかわしたり、心温まるシーンも。

興奮のステージもあっと言う間に終わり、ふと我に帰ると外は真っ暗でした。
真っ先に友人のいる席へ飛んでいくとお互い興奮さめやらない顔で
「おい よかったなー カンゲキしちゃったよ!」
「うん、おれなんか手が真赤だよ。ほら 声までかれちゃって!」
「キャンディーズってこんなにすごいと思わなかったよ!」
そんな言葉を交わしながらコンサートの余韻をかみしめ人ごみのなかを足早にバスへ向かいました。なんと言う充実感、満足感。そして3人の暖かい愛まで感じました。今日の出来事は私の青春の貴重な1ページを飾りました。
歌を通して見えない力で僕らの青春時代をバックアップしてくれた。ありがとうキャンディーズ。ありがとうミキちゃん、スーちゃん そしてあなたにとても感謝しています。
帰りのバスの中は見ず知らずのファン同士が仲良くうちとけ、今日のコンサートの事を熱く語ったり、ファンが持ち寄ったカセットをバスの中で聴いたり楽しい時間を過ごしました。特に鶴光のオールナイトニッポンの問題のテープは車内で大うけ。[5]
これから始まるありがとうカーニバルの事を思うと大きな期待で胸がふくらむのでした。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・<後略>・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
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脚注:
[1]この時ミキちゃんが羽織っていたシュノーケルコートとコーデュロイパンツがカッコよくて、その後、冬になると色違いですが同じ様な格好をしてました。
[2]実際の手紙ではミキちゃんの事ばかり書いてあって、ランちゃんには申し訳なくこの部分は省略します。このまま出さなくてよかったと思います。(汗)
[3]1978年3月15日の静岡県の気温は最高気温11.5度、最低気温-0.4度とある。前日は-2.0度まで下がっていたので冬型の気圧配置だったのではないだろうか。
[4]多分掛け声はスーちゃんだったと思います。
[5]このコンテンツについてはごんさんの日記に記事があります。
きょうは、つーるちゃんと一緒~です。
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いま読み返してみるとファンレターというよりドキュメントになっていて、とても手紙として読んでもらえる様な内容ではない。しかし記録としてはとても貴重だった。なにせ34年も前の事である。この手紙がなかったら殆ど忘れていたトピックばかりだ。
小学校の宿題以外では日記など書いたこともない自分がこの時のことだけはしっかり書きとめていたのが不思議だ。他にも忘れ得ぬ青春の思い出、体験は沢山あったはず。でも、我が青春の思い出のベスト3であることは間違いない。
つま恋公開リハーサルの時の3人は本当に素敵だった。
この時のはしゃいでいるランちゃんの笑顔が今でも忘れられない。

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ところで実際彼女達の合宿生活はどんな感じだったんだろうか。次の記事で最近入手した貴重なコンテンツを紹介します。