最初の事件から4日後

  
  警視庁から外に出る特命の二人

亀山『でも、右京さん?なんで無差別じゃないと思ったんすか?もちろん万年筆のこともあるんでしょうけど…』

右京『爆破予告の位置と時間ですよ』

亀山『まあ人気のいない位置だからってはなんとなくわかりますけど…』

右京『今回の予告がラッシュ時を避けて10時を指定していたので単に警察への挑戦とは思えませんでしたからね~』

亀山『なるほど、ターゲットだけを確実に狙うためってことですか』

  8年前の被害者・与田豪の両親宅(千葉)にて

与田の母・玉枝『警察の方が何かご用でしょうか?』

右京『実は8年前の事件について少々気になることがありまして』

玉枝『そのことですか…でももう終わったことですからどうか放っておいてください』

亀山『いや、でも今回の事件と…』

亀山を制止する右京『亀山君!…そうですか、では一つよろしいでしょうか?』

玉枝『はい?』

右京『ご主人の浩二さんがここ何日かお留守のようですがどちらに?』

玉枝『何故、そんなことをご存じなんです?』

右京『未開封の手紙が何通か机の上にありましたから。見たところこの部屋は大変良く整理されています。当然手紙もしっかりと保管されていますね。ところが消印が最近のものだけ無造作に置いてあったものですから。いや~細かいことが気になってしまうのが僕の悪い癖』

玉枝『主人は3日前に出て行ったきり帰ってきません…どこいったんだか私が聞きたいくらいですよ』

亀山『本当にご存じないんですか?』

玉枝『どういう意味です?』

亀山『いえ、深い意味はありませんよ、ところで旦那さんはどちらにお勤めなんです?』

玉枝『詳しくはわかりませんが電子部品の製造なんかをやってるそうです』


  帰る二人

亀山『ビンゴでしたね』

右京『いえ、そうとも言えません』

亀山『え?』

右京『最初の電話がかかってきたのが4日前です、しかし家に戻らなくなったのは3日前から。妙だと思いませんか?計画を実行するときにわざわざ場所を移動する必要はなかったはずなのですがね~』

亀山『奥さんも嘘をついてるってのは?』

右京『ならば長期不在だということを我々に伝える必要はありませんよ』

  特命にて

亀山『右京さん、与田浩二は3日前から会社を休んでますよ』

右京『やはりそうでしたか』

亀山『どこ行っちゃったんすかね』

  そこに伊丹らが現れる

伊丹『こら、特亀~おまえらこそこそ動き回って何やってるんだ?』

三浦『警部殿~情報があるのならこちらにも教えてもらえませんか~』

亀山『別に隠してるわけじゃないですよね~右京さん』

右京『ええ、今回の被害者二人は8年前の事件でつながりがありました』

芹沢『じゃあ被疑者の目星もついたんすか』

亀山『ああ、8年前の事件の被害者の父親が3日前から行方不明だ、緊急手配したほうがいいぜ』

伊丹『おい、行くぞ、すぐ手配だ!』

  捜査本部にて

内村『なに?復讐殺人だと?』

伊丹『ええ、無差別に見せかけた計画的な犯行のようです』

中園『どこからの情報だ?』

内村『おおかた杉下だろ、まあ無差別でないならなんでもいい、さっさと被疑者を連行して来い』

三浦『とりあえず与田浩二を重要参考人で指名手配します』


  特命にて

右京『亀山君、少し調べてもらいたいことがあります』

亀山『了解』


  最初の被害者江本の働いていた建設会社にて

江本の上司である桑田『どんな要件でしょうか?』

右京『実は、現場に残された万年筆のことが気になりまして、どうやら江本さんのものではないようですがどなたのものかご存じありませんか?』

桑田『さあ、見た事ありませんね、念のため他の作業員にも聞いてみますよ』

右京『恐縮です』

桑田『おい、みんな!例の爆発した場所にこの万年筆が落ちてたそうだ、誰か見覚えないか?』

  しかし、全員知らない様子だった

桑田『すいませんね、ご協力できなくて』

右京『いいえ、おかげで手間が省けました。最後にもう一つだけよろしいでしょうか。岡田明憲さんをご存じありませんか?』

桑田『さあ、二人目の犠牲者ってことしか存じませんけど』

右京『そうですか、では失礼します』

  外に出る右京、そこに亀山から電話がくる

亀山『右京さんの睨んだとおりでしたよ、8年前に堀内工業ではもう一つ事件があったようです』

右京『そうでしたか、では警察病院に向かってください』

  警察病院にて 、岡田は意識を回復していた

右京『面会は短時間だけということなので、単刀直入にお伺いします』

岡田『なんですか?』

亀山『あんた、8年前に事件の目撃証言をしてるよな』

岡田『…ええ』

右京『しかし、その日は大阪にいらしてますよね、それも槙原紀子さんという女性と一緒に』

岡田『何言ってんだ、そんなわけないだろ…』

写真を見せる亀山『ところが、事件と同じ日、同じ時間にあんたとその女性が一緒に写っているんですよ』

右京『あるテーマパークではプロが写真撮影をしています。そしてそのなかから欲しいものだけを買い取るシステムの記念撮影用写真の中にこの写真がありました』

岡田『なんでそれを…』

右京『槙原さんから伺いました、あなたが証言者になっていたことは知らなかったそうですね~』

亀山『なんで虚偽の目撃証言なんかしたんだ?』

岡田『1000万出すといわれて…つい』

亀山『誰に言われたんだ?』

岡田『わからない…最初に100万円送られてきて、手紙に書いてある通り証言すればあと900万払うといわれただけで、電話の相手が男だってことしかわからないんだ』

胸ぐらをつかむ亀山『ったく何やってんだてめー』

止める右京『亀山君、その依頼人に会いに行きましょうか』


  建設会社のとある現場にて

桑田『刑事さん、まだ何か?』

右京『一連の事件の犯人が明らかになりましたのでご報告に上がりました』

桑田『なぜ私に?』

右京『あなたがその犯人だからですよ、桑田さん』

桑田『何を言っているんですか?』

右京『最初の電話で[仕事をさぼっているからそういう目にあう]といっていたのがずっと引っかかっていました。身近にいなければわからないですからね~さらに、あなたは現場に万年筆が落ちていたこともご存じだった』

桑田『それは刑事さんが言ったんでしょう』

右京『いいえ、僕は現場に残されたと言っただけです。落ちていたとは言っていませんよ』

桑田『そんなの言葉のあやじゃないですか』

亀山『それだけじゃありませんよ、あんた7年前まで堀内工業に勤めていたよな』

桑田『それが何か…?』

右京『8年前に殺害された与田さんが勤めていた会社ですよ』

桑田『与田は酔っ払いに殺されたんだろ』

右京『いいえ、あなたの指示で江本が殺害したのだと思いますよ。偽の目撃証言まで用意したようですから』

桑田『なんのことだか』

亀山『8年前にはこの事件の前に横領事件まで起きてる、もちろん犯人は捕まってない。これもあんただろ』

桑田『さっきから聞いていればなんなんだ、君たちは!証拠はあるのか?』

右京『あなたにとって最大のミスは岡田が生き残ったことでしょうね~岡田に最初に送られた100万円と同封の手紙にあなたの指紋が出ると思いますよ』

桑田『そんなものがあるはずない』

手紙を取り出す亀山『ここにありますよ』

奪い取る桑田『…くっ。こっちによこせ!これで俺の指紋が付いたな、さあどうする?』

右京『おやおや、参りましたね~しかし今の行動であなたの犯行だということは明白になりました』

亀山『念のためコピーを取っておいてよかったですね~右京さん』

桑田『な…だからこんな真似を…し、しかし8年前に偽の目撃証言を要求しただけだ』

右京『あなたの自宅や職場を徹底的に捜索すれば必ず証拠は出ると思いますよ』

亀山『もう諦めろ、与田さんをどうしたんだ?』

桑田『しらないね…』

右京『桑田さん!与田さんを死なせてしまえばあなたは極刑を免れませんよ、幸いにも岡田さんは生きています。8年前の事件も江本が亡くなってしまった以上あなたが殺害に関与した証拠はありません。あとはあなたに任せます。あなた自身が死の恐怖を選択するのなら黙っていてもらって構いません、しかしまだ間に合うのであればすぐに言いなさい!』

桑田『…木更津の廃ビルの中だ』

携帯で電話する亀山『伊丹、木更津だ』

  30分後、かなり衰弱していたものの与田浩二を無事保護。

  特命にて

亀山『とんだ連続爆弾犯でしたね』

右京『そうですね~』

角田『横領事件もやはり奴の犯行だったようだな』

亀山『まったくいつから人の命は金より軽くなったんすかね』

右京『本来ならば比べられないものなのですがね~』

角田『まあ、俺たちには無縁な話だな』

亀山『なんでです?』

角田『だって俺たち公務員はそんなに金もらえないだろ~』

右京『しかし、我々は今最も人気のある公務員ですよ』

亀山『そうですよ、課長。あした妬みで突然事件に巻き込まれるかもしれませんよ~』

角田『おいおい、物騒なこと言うなよ~』


  杉下右京は今日も高い位置から紅茶を注ぐのであった

(終わり)

  次の日の朝、特命にて

亀山『東都環状線って言ったら駅だけでも30はありますよ』

右京『ええ、さらに電車内、線路上、トイレやロッカーの中など短時間では到底探し出すのは不可能だと思いますよ』

亀山『でも、犯人のやつなんだってこんなことを…』

右京『金銭目的でないとすれば、警察への挑戦でしょうかね~しかしこの手の犯人は何かしらヒントを出すはずですが今回はそれもありません』

亀山『俺らはどうします?』

右京『やみくもに探しても見つかりませんよ、米沢さんにお願いしたものがそろそろ届くと思います』

米沢『お待たせしました、これが爆発現場にあった遺留品のリストです、ちなみに過去の爆弾事件も調べてみましたが類似するようなものはありませんでした』

リストを見る右京『そうですか、おや?この万年筆というのは?』

米沢『遺体のすぐそばに落ちていました、被害者のものでしょうか』

右京『しかし、これは結構な高級品ですよ、(被害者の)江本さんには少々不釣り合いかと思いますがね~』

亀山『じゃあ犯人の遺留品ですかね、だったら指紋があるかも』

米沢『調べましたが指紋は検出されませんでした、さらに損傷が激しいのでどこのメーカーの品かを今科捜研に依頼しているところです』

  そのころ、東都環状線の品川駅では

伊丹『どいつもこいつも怪しく見えてくるな』

芹沢『そうっすね~仮に見つけたとしても時間ぎりぎりじゃ僕らも危険ですよね』

伊丹『まあな…』

  捜査本部にて、午前9時

中園『いまのところ不審な人物や物は発見されていないようです』

内村『あと1時間か…』

  9時半、品川駅

伊丹『おい、芹沢。あの男、さっきから不審な動きしてるぞ』

芹沢『ちょっと行ってきますか』

伊丹『まて、少し様子を見るぞ』

男は大きなバックを改札口付近の床に置いてそのまま歩きだした

伊丹『ちょっとあんた、このバックどうするつもりだ?』

  男は何も言わずに逃げ出す

伊丹『待てこら!』

本部に連絡する芹沢『不審な人物とバックを確認、至急爆発物処理班をお願いします』

取り押さえる伊丹『お前が爆弾魔か』

男『ち、違う!俺はただ頼まれてバックを置いただけだ!中身も知らない!』

伊丹『ふざけんなよ?芹沢、中身はなんだ?』

芹沢『ただの箱ですね…』

  捜査本部にて

中園『部長!複数の駅で不審物を発見しましたがどれも偽物でした』

内村『くっそ…あと5分しかないじゃないか』

  午前10時10分

中園『部長!さきほど上野駅で爆発があったようです!』

内村『くっそ!それで被害者は?』

中園『今回も男性一人が巻き込まれたようです、意識不明の重体で病院に搬送されました…』

内村『なんてことだ…一体どこで起こったんだ』

中園『今回も駅ビルの工事用フェンスの裏で爆発したようです、立ち入りが禁止されていた場所だったのですが』

内村『運悪く犠牲になったということか』

小野田『非常にまずいことになったよね、二度も予告されながら防げなかったばかりか2人もの死傷者を出すなんて』

内村『しかし…』

小野田『まあ、あなたの言いたいこともわかるけどさ、マスコミはなんて報道するんだろうね~』

中園『予告については非公表でよろしいかと』

小野田『だって最初の爆弾騒ぎでネット中継されてるでしょ、いまさらそんなウソはすぐバレると思うよ』

内村『では、どのように対処しましょう』

小野田『マスコミが騒ぐ前に、この憎い犯人を我々警察が逮捕するしかないんじゃないかしら』


  鑑識にて

右京『今度の爆発も同じタイプだったようですね』

米沢『ええ、さらに被害者のそばにはまたしても万年筆がありました、もちろん偶然の可能性もありますが』

右京『調べていただけましたか?』

米沢『そういうと思って既に科捜研に送ってあります』

亀山『さすが仕事早いっすね』

  捜査本部にて

伊丹『今回の被害者は岡田明憲さん(43)です。最初の被害者と同様に巻き込まれたものと思われます』

内村『それで、被疑者の割り出しはどうなってる』

三浦『今のところ手掛かりはありません』

芹沢『この手の犯罪では被疑者の特定は困難だと思われます』

内村『言い訳はもういい、さっさと見つけ出せ!以上だ、散会』

各捜査員『はい!』

  特命にて

亀山『結局この犯人は何がしたいんですかね』

右京『犯罪というのはたいてい怨恨か金銭目的ですからね~もし無差別でないとしたら必ず被害者にはつながりがあるはずです』

亀山『調べたところ最初の被害者の江本さんは8年前に傷害致死で逮捕されてますね、でもそこに今回被害にあった岡田さんは関係あるんすかね』

右京『調べてみる価値はありそうです』

  千葉県警にて

右京『先ほどお電話いたしました警視庁特命係の杉下と申します』

千葉県警の掛布警部『8年前の傷害致死事件ですね、これが当時の捜査資料ですね』

亀山『どういう事件だったんです?』

掛布『よくある酔っ払いのケンカですよ、江本がよってある店の看板を壊しているのを被害者の与田さん(23)が注意したことがきっかけで殴り合いのケンカになりました、その後与田さんが死亡しているのが発見され、そばに倒れていた江本を緊急逮捕したんです』

亀山『何故殺人罪は適用されなかったのですか?』

右京『どうやら目撃証言が決め手となったようですよ』

掛布『ええ、殴れた際に与田さんがバランスを崩して倒れ、後頭部を強打したという証言で傷害致死という結論になりました。もちろん検死の結果もそれを示していました』

右京『なるほど、亀山君、この目撃者の氏名を見てください』

亀山『岡田明憲?こんなとこでつながっていたんですね』

右京『ええ、ところで亡くなった与田さんのご家族はどうなさったのでしょう』

掛布『両親が何度も裁判所に訪れて殺人罪を適用するように嘆願していたようですが…裁判でも目撃証言が決め手となりましたよ』

亀山『それで、わずか7年で出所できたんすね』

右京『そのようですね~』

  帰りの車中にて

亀山『まさか、今回の犯人は江本さんの復讐をしているんですかね』

右京『あくまで一つの可能性ですよ』

  鑑識にて

米沢『お待たせしました、万年筆が特定できました。約8年前の商品で、今では市場には出回っていないそうです』

亀山『8年前って…まさか』

右京『他には何か』

米沢『印刷されていた文字を解析したところ[創立20周年堀内工業]という名前がありました』

右京『与田さんが勤めていた会社ですね』

亀山『なんでわかるんです?』

右京『調書にしっかりと記してありましたよ』

亀山『そうでした?』


  続く~

  新宿駅南口のトイレ内

警官『中を開けてみます』

中園『くれぐれも慎重にな!』

  そのころ警視庁に電話が殺到する騒ぎが起きていた

中園『大変です!部長!』

内村『なんだ?本物だったのか!?』

中園『それはまだ確認できませんがその爆発物らしきものにカメラが組み込まれていたようで、その映像がライブ中継されているという電話が相次いでいます』

内村『なんだと?犯人の狙いは何なんだ…』

  右京はその光景を偶然見ていた。

右京『あっ角田課長、急用ができましたので失礼します』

角田『え?これから試合じゃないのよ』

右京『データや去年のビデオ映像から僕なりに分析して、打順や戦術などをノートにまとめてありますのでよろしければ参考にしてください』

角田『そう?じゃあ遠慮なくいただこうかな、しかし頼んでおいてなんだけどあんた本当に細かいの好きだね~まあだからお願いしたんだけどね』

亀山『あれ?右京さん、どこ行くんです?』

右京『ちょっと気になることがありましてね、君は残ってもらって構いませんよ』

亀山『そうっすか、でもあんま乗り気じゃないんすけどね』

  再び新宿駅にて

警官『あと2分です…付近の乗客の避難は完了しました』

中園『処理班はまだか…仕方ないお前らも退避するんだ』

警官『了解しま・・いえ待ってください、タイマーが止まりました!』

中園『油断はするな、処理班が来るまで待機だ』

  その後爆弾処理班が来て中身を解体することに成功する

中園『やはり偽物でした、おそらく映像で流すのが目的だったものと思われます』

内村『そうか、よかったじゃないか、よし、あとは何としても勝つだけだな!』

  駅にて

右京『少々よろしいですか?』

処理班の江川『あなたは?』

右京『特命係の杉下と申します、この爆弾、いえ正確には爆発物らしき物体はどのような構造なのでしょう』

江川『単純なプラスチック爆弾と構造は同じです、ただ発火装置がセットされていないだけですね』

右京『ということは、技術的には爆発物を製造する能力は十分にあるとみていいわけですね?』

江川『ええ、まあそういうことになりますね』

  その爆発物らしき物体を写真で撮り、米沢さんにメールで送る右京

携帯で話す米沢『この手の爆弾は残念ながらネットでも購入できますな』

右京『ただの愉快犯がここまですると思われますか?』

米沢『微妙な質問ですね、もしもネットに流すことだけが目的ならばただの箱でもよかったとも言えますな、しかしよりリアルにしたいと考える犯人ならば使わないとも言えなくもないということでしょうか』

右京『なるほど…』


  最初の電話から1時間後

  東都ドームの目の前にある工事作業員用のプレハブにて爆発事件が発生する


中園『部長!たった今連絡がありました…爆発が起きて人が一人亡くなったようです』

内村『なに!なぜだ…悪戯でなかったのか…』

  即刻、大会は中止となり、すぐに富坂警察署に捜査本部が設置された

中園『え~極めて卑劣な犯罪であり、かつ残忍な手口だ。全捜査員一丸となり一刻も早く被疑者確保をするように』

内村『それで害者は?』

伊丹『江本武典(52)、現場の工事作業員です、休憩中に事件に巻き込まれたようです』

芹沢『他に4名の作業員がいますが全員外に出ていたので軽傷でした』

内村『使われた爆弾は?』

米沢『新宿駅にて発見されたダミーの爆弾と型はほぼ同じです、このタイプはそれほど規模は大きくありませんが目の前の物や人を破壊するのには十分な能力があるものです』

中園『それで、被疑者につながる情報は?』

三浦『例のネットで流された映像ですが海外のサーバーをいくつも経由しているので特定はできていません』

別の捜査員『それと予告電話の声を解析し、音声を調べましたがこれといって収穫はありません』

  特命にて

亀山『とんでもないことになりましたね』

右京『ええ、しかし気になります』

亀山『なんで予告してきたかですか?』

右京『それ以上に、犯人は何故二度目の電話をかけてこなかったのでしょう』

亀山『初めから爆発させることが目的だったってことですかね』

右京『ならば最初の電話で場所を言う必要もありませんよ』

亀山『最初の電話の人物と、実際に爆弾を仕掛けた人物が違うってのはどうです?』

右京『なるほど、君らしい斬新な発想です、しかし偶然重なるとは考えにくい、あるいは二人の犯人の間で行き違いがあって事件に発展してしまったということも考えられます』

亀山『それもちょっと無理がありそうですね』

  その時、警視庁に犯人を名乗る人物から再び入電

内村『お前の狙いは何だ?』

犯人『お前らの無能さを世間にアピールしてるんだよ』

内村『ふざけるな、人が一人亡くなったんだぞ』

犯人『まあ運が悪かったんだね、仕事をさぼっていたからそういう目に遭うんだよ』

内村『要求があるなら聞こうじゃないか』

犯人『時間を引き延ばして逆探知しようとしても無駄さ、ちなみに交渉術も無駄だから』

内村『…』

犯人『次は、東都環状線のどこかの駅に爆弾を仕掛ける、タイマーは明日の午前10時、幸運を祈るよ』

  電話が切れる

芹沢『駄目です、特定できません』

内村『くっそ…全捜査員を駅に配置するんだ、いますぐにだ』

中園『はい』

続く~

  警視庁内の会議室

内村『亀山は渡せないな』

上層部1『いや、もう彼は捜査一課ではないはずです』

内村『特命係も捜査一課の下の位置づけだ』

上層部2『しかし、今の彼は組織犯罪対策部の所属です、彼もそこに参加してもらいますよ』

内村『ふざけるな。亀山は今日から本番までは刑事部捜査一課に特別復帰することで話は付いているんだ』

上層部3『そこまでやりますか…刑事部長』

中園『とにかく、これで全メンバーは決定した、本番は1週間後だ。全員気を引き締めていくように!』


  特命係にて

亀山『おはようございます、右京さん』

右京『おはようございます、先ほどから刑事部長がお呼びでしたよ』

亀山『え?俺だけですか?』

右京『ええ、緊急の要件だそうです』

亀山『最近、何かやりましたかね?俺』

右京『どうですかね~』

角田『とんでもない事件をあぶりだしちゃったんじゃないのか?』

亀山『そんなはずないんですけどね~俺ら最近は大人しく裏付け捜査の日々でしたよ』


  刑事部長室にて

内村『亀山、俺はお前に期待してるからな』

亀山『はあ…』

中園『本番では大暴れしてくれてかまわないからな』

  特命にて

亀山『期間限定で捜査一課に復帰だそうです』

右京『そうですか』

亀山『右京さんはさっきから何を読んでるんです?』

右京『本番に向けて読むように角田課長に言われました』

亀山『じゃあ、右京さんも参加するんですか?』

右京『ええ、現場の指揮をとれとの命令ですから』


  一週間後、河川敷にて『警視庁野球大会』が実施された

伊丹『なんでお前が捜査一課にいるんだ、こら』

亀山『俺だって来たかなかったんだ、仕方ねーだろ』

芹沢『なんでも捜査一課のエースが大会直前に怪我で出れなくなって亀山先輩に声がかかったみたいですよ』

三浦『そういや刑事部長はこの大会には異常に執着してたからな、とくに警備部や生活安全部には最近勝ってないからな』

伊丹『所詮、そういうことでしか活躍できないんだな』

亀山『なんだと、こら』

内村『何をもめてんだ、伊丹、お前に代わりが務まるのか?』

伊丹『いや、それは…』

内村『亀山、わかってるだろうが負けた時は処分を覚悟しとけよ』

亀山『そんな、ちょっとそれはないんじゃ…』

  そこに鑑識・米沢守が登場

米沢『審判は我々が務めることになりました』

亀山『しかし、首都を守る警察がこんなことやってていいんすかね~?』

米沢『確かにそれは気になりますな』

  右京が現れる

亀山『右京さんも試合出るんすか?』

右京『いえ、あくまで指揮ですよ。もちろん組織犯罪対策部チームです』

米沢『なにやら面白くなってきましたな』

  そのとき、警視庁に入電

機械で声を変えた男『東都ドームに爆弾を仕掛けた』

警官『何言ってる、いたずらじゃないのか?』

男『証拠を見せよう、新宿駅の南口トイレに小さな爆弾がある、30分後に爆発するようにセット済みだ』

警官『…それで、要求は?』

男『1時間後、また電話する。せいぜい回収に励んでくれ』

  河川敷にて

内村『なに?爆弾だと?それでガセじゃないのか?』

中園『今、所轄の警官を向かわせております、念のため爆発物処理班も一緒に』

小野田『困りましたね、もし本物なら大会は中止だよね』

内村『…しかしもう今日がだめなら、もう日程が取れません』

中園『この際仕方ないかと…』

内村『駄目だ、今年こそ勝たなければまた1年生活安全部に大きな顔をされるんだぞ…』


  新宿駅にて

警官『ありました!男子トイレの個室にて爆発物らしきものを発見、タイマーがセットされています』

中園『それで処理班はいるのか?』

警官『いえ、まだ到着していません!』

中園『時間は?!』

警官『あと10分です…』


  続く~
このお話で、最も悪いのは1人だけでした…他でもない被害者です。番組の最後に右京さんはスーツを仕立ててもらえるのか心配していたので、その勝手な続編です。


  事件解決後しばらくして、特命係にスーツの宅配便が届いた。


神戸『杉下さん宛てですね、スーツまた作ったんですか?』

右京『いいえ、先日の1着だけですよ』

神戸『じゃあ、もしかして真紀さんですかね』

右京『それは楽しみですねぇ~』

神戸『ん?手紙も入ってますよ。なになに、先日はお世話になりました。ご注文のスーツをお届けいたしますですって』

右京『これは…大変素晴らしいですね~見てください、僕にピッタリ』

神戸『確かによくお似合いですよ』

右京『古谷さんの指導が実に行きとどいていますねぇ~』

神戸『店の存続はさすがに厳しくて英国堂に雇われたみたいですよ』

右京『なるほど、そうでしたか』

 
  右京はほれぼれと仕立て上がりのハンガーに掛けたスーツを見ていた

  そこに角田課長が登場


角田『ヒマか?ん?なになに警部殿もスーツ買ったの?』

神戸『今仕立て上がりが送られてきたんです』

角田『ふーん、これが1着100万は下らないっていうやつなんだ』

右京『課長、いいものは値段ではありませんよ』

神戸『でも、我々公務員が気軽にこういうものを買っていると何かと誤解されかねませんよ』

右京『どういうことでしょう』

角田『だって同じ公務員の俺が29800円のスーツで満足してんのに、なんであんたは100万なんて買えるのさ、どう考えてもおかしいだろ』

右京『それは使い方の問題だと思いますがね~』

神戸『お言葉ですが、杉下さんは紅茶にしても、茶器にしても、どれも一級品をお使いですよね』

右京『一応身だしなみですからね~気をつけるようにはしていますが』

神戸『そんなに給料いいんですか?』

右京『君、随分と無粋な質問ですね~』

角田『俺も気になる、いくら家族がいないって言ってもな~おかしい、何か副収入があるとか』

神戸『杉下さんなら株とかも上手そうですしね、もしやクイズ番組に出て賞金を稼いでいるとか』

右京『そんなことをするように見えますかね~』

角田『実は誰かを脅してるとか?官房長もあんたには頭上がらない感じだったし』

右京『課長、あまり面白い冗談とは思えませんよ』

神戸『杉下右京の七不思議ってとこですかね』


  その時、角田課長が躓いて持っていたコーヒーをスーツにかけてしまった

神戸『あっ…』

角田『ごめんごめん…クリーニング代払うから勘弁してくれない?…』

右京『…結構です。ここに置いた僕のミスですから…』

神戸『あれ、杉下さん怒ってます?』

右京『僕は怒ってなどいませんよ、この程度で怒るほど短気ではありませんよ』

角田『本当?でも顔が引きつっているんじゃないか?』

右京『もともとこういう顔ですからねぇ』

角田『本当に怒ってない?そうだ、じゃあ俺のスーツあげるから勘弁してくれる?』

右京『ですから結構だと先ほどから申していますよ…』

神戸『課長、もう出てった方がいいですよ…』

角田『でもさ~』

右京『どうかお気になさらずにお引き取り下さい…たいしたことではありませんよ…』


神戸『口調が丁寧なのが一番怖いですよ…』