伊丹『そう簡単に見つかれば苦労しねーよ・・・』
芹沢『あと5部屋なんですけどね。なかなか住民と連絡取れなくて』
亀山『花輪先輩の部屋は調べたのか?』
伊丹『刑事の部屋なんか見るだけ無駄だ』
三浦『一応、軽く部屋は調べたがどこにも隠されちゃいないぞ』
亀山『そうか・・・』
花輪の部屋にて
花輪『どうした?亀山』
亀山『いやね・・・右京さんが調べてみる価値があるなんていうもんだから、ちょっと部屋の様子を見ようかなあと』
花輪『そうか、まあ俺も被疑者の一人だから当然だな。好きなだけ調べてくれ』
亀山『失礼しまっす』
右京『どうでしたか?』
亀山『隅々まで調べましたが、女性のいた痕跡などありませんでしたよ。今回ばかりは右京さんの考え過ぎですね』
右京『そうでしょうかね~もっとも相手も刑事。犯罪に対してはプロです。痕跡など残すとは思えません』
亀山『でも、実際に見つからないじゃないですか』
右京『あるいは、すでに外に運び出されたのかもしれません』
米沢『是非、トリックをお聞きしたいですな』
右京『外に通じる階段。ドアからの出入りは不可能です。しかし2階の踊り場から飛び降りることは出来るようにみえました』
米沢『確かに、それは可能でしょう。しかしお言葉ですが、それも犯人一人ならばという前提です。とても女性を担いでそんな真似はできません』
亀山『そうっすよ。残りの部屋にいますよ。きっと』
右京『そうですかね~』
芹沢『伊丹先輩!205号室の住人は丸尾雄二(34)です』
伊丹『丸尾?誰だ?そいつ』
三浦『おいおい、俳優として最近売れてきてるヒロシの本名だろ』
伊丹『そいつがどうしたんだよ』
芹沢『マネージャーの話では二日前から休みを取って自宅にいるはずだって言うんです』
三浦『じゃあ、事件の日からか。何か関係ありそうだな』
伊丹『よし、一か八か探りを入れてやる』
マンション内に非常ベルがなった、しばらく間をおいて丸尾が部屋から出て来た
伊丹『丸尾、やっぱり中にいたんだな』
芹沢『ちょっと調べさせてもらいますよ』
三浦『なんだこりゃ・・・覚醒剤じゃねえか』
伊丹『おい!桜さんはどこだ!』
丸尾『しらねーよ。俺は・・・薬やってるのがばれると思って部屋に隠れてただけだ』
右京『どうやら、この部屋にもいないようですね~』
亀山『残りは4部屋か・・・いったいどこいったんだ』
内村『なに?遺体が発見されただと?』
中園『はい・・・現場近くの公園でつい先ほど』
内村『やっぱりマンションにはいなかったのか!いままでの捜査はまるで意味なかったのか』
伊丹『なんでだ・・・』
亀山『どうなってるんです?右京さん』
右京『僕にもまだ分かりません。とにかく公園に行って見ましょう』
米沢『死後二日といったところです。詳しくは解剖してみないと何とも言えませんがおそらく失踪直後になくなったものと思わせます』
右京『死因は?』
米沢『首を絞められての窒息死ですね、他に目立った外傷はありません』
亀山『マンション内で殺されて、ここに連れてこられたってことですか?』
右京『おそらくそうでしょう。この場所ではすぐに発見されないでしょうからね~いつ運ばれたものかは分かりませんが』
亀山『右京さん、ちょっと考えてみたんですけど。桜さんが自分でカメラの死角をついて外に出たんじゃないですかね』
右京『面白い発想です。ですが動機がありません。確かに君の言うとおり失踪に見せかけるためということもあるかもしれませんが実際に殺害されているのでそれはないでしょうね~そして遺体に外傷がないということは踊り場から放り投げられたとも考えにくい』
亀山『ワープでもしない限り無理っすね・・・』
内村『伊丹、随分と無駄な捜査に時間を費やしたな』
伊丹『申し訳ありません・・・しかし犯人を逮捕するまでは捜査をやらせてください』
内村『ばかもの!あんな恥をさらしといて何を言ってる!』
伊丹『・・・』
三浦『・・・』
美和子『それで点と線の謎は解けたのかな?』
亀山『さっぱりだよ・・・』
たまきさん『でも推理小説みたいね~どこから遺体は飛んできたのか』
右京『僕としたことが!そうですね、遺体は飛んだのかもしれませんね~』
米沢『遺体の衣服からはオレンジ果汁が検出されました。もっともそれが何を意味するのかはわかりませんが』
右京『そうですか』
亀山『唯一外に出られそうなのがこの2階の踊り場ですね』
右京『亀山くん。すぐ下にある自動販売機。これが何を意味するか分かりますか?』
亀山『えっ・・・まさか、あれで遺体は運ばれたってことですか』
右京『そのようですね~』
花輪『伊丹って刑事も大変だな。責任取らされそうじゃないか』
亀山『それがそうでもないんですよ、花輪先輩』
右京『伊丹刑事の捜査方法に間違いはなかったと思いますよ。しかしあなたがその上を行ったというだけですよ』
花輪『ははは・・・まるで私が犯人みたいな言い方ですね』
亀山『先輩!正直に話してください』
花輪『俺は何も隠しちゃいない』
右京『そうでしょうか。あなたが桜さんを殺害し遺棄した。違いますか?』
花輪『私にはアリバイがある。その証人は他ならぬあなたたちのはずだ。第一、どうやって遺体を運び出すんですか』
右京『亀山君を招待したのも、そのためでしょう。6時半に犯行に及び、亀山君を7時に来させた。普通に考えればあなたに犯行は不可能に思えます。しかしあなたは防犯カメラを巧みに使ったんですよ。まず帰宅直後の桜さんを気絶させ、すぐにカメラの無い階段を使って2階まで降りてくる。そこであなたは殺害後に自動販売機のジュースの補充に来たトラックの荷台に遺体を置いたんです。トラックの荷台には回収した空き缶やペットボトルが大量にあります。そこに遺体を置けば外から見られることも、途中で投げ出されることもありません。そして翌朝までにゴミが放置されたトラックの荷台から遺体を公園まで運び遺体発見まで待っていたのですね』
亀山『桜さんの服から空き缶からこぼれたオレンジジュースが検出されたたんです』
花輪『なるほど。実に面白い推理ですね。でもそれなら誰にでも出来そうじゃないですか。私が犯人だという証拠はあるんですか?』
右京『問題のトラックを見つけ出し調べてみましたが、そのときのゴミはすでに回収されていました。しかし荷台に残されていたんですよ。あなたのほつれている袖口のボタンと同じボタンが。どういうことか明確な答えをお聞かせください』
花輪『そんなボタンはどこにだってあるでしょう。私のものだと断定できますか?』
亀山『まだあるんですよ・・・ボタンのそばから髪の毛が採取されています。いま鑑定待ちですが、もう認めましょうよ。先輩』
花輪『・・・なんで俺だとわかったんだ・・・』
右京『今回の犯行はマンション内部の者にしか出来ません。しかし部屋にいないとなれば容疑者からは早々にはずれ、後に遺体が発見されても捜査線上に浮かぶことはないと考えての犯行のように見えます。そのようなことが出来るのは刑事であるあなたしかいませんよ。しかも仮に遺体をトラックから公園まで運ぶところを見られてもかえって外部犯の存在を印象付けられますからね~』
亀山『自動販売機の会社に確認したんですよ。ほぼ同じ時間に同じルートを回っていると。それを利用したんすね・・・でもなんでこんなことを』
右京『僕の勝手な想像ですが、丸尾と何か関係があるのでは?』
花輪『杉下さんのおっしゃるとおりですよ。私は丸尾に押収した覚醒剤を横流ししていました。数日前に偶然取引現場を桜さんに目撃されてしまって・・・』
右京『一つ分かりません、目撃されるようなヘマをあなたがするとは思えません。他に理由があるのではないですかね~』
花輪『・・・』
右京『花輪さん!一人の人間を死に追いやってまで何を守っているのですか!』
花輪『・・・ウチの署が組織ぐるみで覚醒剤の密売をしている証拠テープを桜さんに録られていたんです』
右京『そのテープは今どこにあるんですか』
花輪『彼女の留守中に何度部屋を探しても見つからなかったんです・・・だから仕方なく』
殴ろうとする亀山『なんてことすんだよ!警察官として恥ずかしくないのかよ!』
止める右京『亀山君!』
花輪『俺だってこんなことしたくなかった・・・しかしいつの間にかこうなってしまって。亀山・・・お前はいいな。あの頃の純真さをまだ持ってるし、上司にも恵まれて羨ましいよ・・・』
角田『でも、なんで証拠テープなんて録れたんだろうな?』
右京『もしかしたら、そんなものは存在しなかったのかもしれませんよ』
亀山『どういうことです?』
右京『桜さんはどうやら花輪さんのことを好きだったようです。それで在りもしないことを言って相手の気を引こうと考えた。こうは考えられませんかね~?』
亀山『でも、そんな嘘、すぐ分かりそうですけどね』
右京『心にやましいことがあるときは、何に対しても臆病になるものですよ。まして心当たりのある会話の録音をされたと聞いたら、本当かどうかを確認する前に抹消しようと考えたのではないでしょうかね~』
角田『しかし、いずれにしろ警察の組織ぐるみってのはまずいな・・・』
右京『そうですね~』
そのとき、伊丹が特命にきた。伊丹は一礼した後、無言で去って言った
亀山『なんだあいつ。まあ俺たちのおかげでクビにならなくて済んだようですね』
右京『亀山君、そろそろお昼です。そばでも食べに行きましょうか』
亀山『いいっすね』