遺体発見現場の公園にて

吉田巡査『害者の氏名は石井義彦(52)、スーパーイチョウの店長をしていました。え~こちらに倒れていました。おとといの午後11時頃に【男性が刺されている】と通報があり、同11時15分に自分が遺体を発見致しました』

右京『なるほど、通報した人物は名乗り出なかったのですか?』

吉田『え~匿名でしたね』

亀山『それで、目撃情報というのは?』

吉田『近所に住む内村トミさん(70)が犬の散歩中に茶髪の男が逃げ去るのを見ていました』

亀山『他に特徴はなかったんですか?』

吉田『人物を特定できるような特徴はこれといってありませんでした』

右京『被害者と最近トラブルのあった人物で、かつ特徴の一致する人物が先日の万引き犯だったということだけのようですね~』

 そこに捜査一課の3人が登場

伊丹『謹慎中の亀山~てめー何やってんだよ~』

亀山『ただの散歩だ!文句あるか?』

三浦『警部殿~まずいんじゃないんですか?』

右京『彼は捜査に参加していませんから問題ないと思いますよ。僕の運転手をお願いしているだけですからね~』

亀山『ところで万引き犯の身元は分かったのかよ』

芹沢『今、先輩の似顔絵を下に近所の聞き込みが終わって、確認しているとこですよ』

伊丹『一般人にペラペラしゃべってんじゃねーよ、ばか!』

芹沢『叩くこと無いじゃないですか~』

右京『スーパーの防犯カメラは調べましたか?』

伊丹『言われなくても真っ先に調べましたよ、でも不鮮明なものばかりで役に立ちませんよ』

右京『万引き犯や強盗犯は必ず下見に来ます、数日前までさかのぼれば見つかると思いますがね~』

三浦『しかし、そいつの顔を知ってるのは店長が死んだ今、お前しかいないな』

亀山『残念だな~謹慎中だから捜査協力できませんね~行きましょうか?右京さん』

右京『ええ、ビデオ確認に行きましょうか』

伊丹『ちっ』

芹沢『僕らも付いていきましょうか?』

伊丹『ばか!行くぞ!あいつらより先に見つけてやる!』

 スーパーイチョウにて

店長代理の谷『刑事さん、早く犯人を捕まえてくださいよ』

右京『もちろんそのつもりです』

谷『あっ北島さん。こちら刑事さんです』

北島『警備担当の北島です』

右京『警視庁特命係の杉下と申します』

亀山『同じく特・・・いえ亀山です』

北島『私の休憩中に万引き事件が起きてしまったのが残念で仕方ありません、石井さんが亡くなったのは私のせいかもしれません』

右京『自分を責めても仕方ありませんよ。ところで防犯カメラの映像を見せて頂きたいのでが』

北島『こちらです。しかし問題の人物は鮮明に映っていないと別の刑事さんが言ってましたが』

亀山『俺らが見たいのは数日前からの映像なんです』

右京『ご協力お願いします』

谷『少々お待ちください、準備します』

 しばらくして

亀山『映ってませんね・・・下見に来なかったのか、もっと前に来たんですかね』

右京『もう少しさかのぼってみてみましょう』

北島『刑事さん、こいつじゃないですか?』

亀山『黒髪ですね・・・あっ確かにこいつですよ!』

右京『すぐに米沢さんに映像解析してもらいましょう』

 しばらくして

米沢『杉下警部、ビンゴです。映像の人物に前があり身元が割れました。名前は上野一樹(27)、2年前に傷害で逮捕、起訴されていました』

右京『ありがとうございます。捜査本部に報告してください』

米沢『了解しました』

亀山『こいつか・・・』

右京『疑問が2つ』

亀山『え?』

右京『第一に、上野にはやはり石井さんを恨む理由がありません、仮にあったとしても殺害にまで至るというのはどうかと思います。第二に・・・あの人の言葉です』

 捜査本部にて

内村『まだ上野の身柄は確保できたないのか』

中園『はい、まずは重要参考人として任意で事情を聞こうと上野の自宅に出向いたのですが・・・事件以来帰った来た様子はなかったようです』

内村『すぐに確保して、証拠を見つけろ。そして特命係もこれで終わりだ』

中園『ただちに』

 特命にて

亀山『いまだに上野が見つからないようですね・・・伊丹のやろー何捜査してんだか』

右京『見つからないところに逃げているのか、あるいは見つからないように隠されているとは考えられませんか?』

亀山『どういう意味です?』

右京『このまま上野の居所がつかめないとなると、捜査本部の上野への疑いはさらに濃くなり、真犯人は安全圏にいられます』

亀山『でも、一体誰が?』

右京『気になるの人物が一人います。僕の予想が確かならば上野は非常に危険な状態かもしれません』

亀山『さっそく行きましょう!』

右京『君は謹慎中ですよ。これ以上の迅速な捜査は難しいと思います。彼らに協力を仰ぎ、一刻も早く上野を確保するんです!』

 さらに続く~

 とあるスーパーにて、非番の亀山がメモを片手に買い物をしていた


亀山『えーと、チャイブにズッキーニ、ガラムマサラ・・・』

右京『亀山君、お買い物ですか?』

亀山『右京さん?なんでこんなところに?』

右京『たまきさんに頼まれましてね。店に来る前にマグロを買って来て欲しいそうです』

亀山『右京さんでもスーパーで買い物するんですね』


 笑いを堪える亀山

右京『いけませんか?』

亀山『いやね、いままで生活観見えなかったもんで・・・俺も美和子に頼まれたんですよ。美和子スペシャルパート10を作るんだそうです』

右京『そうでしたか。角田課長が待ち望んでいましたからね~』

亀山『ところで頼まれたマグロってあれじゃないですか?』

 威勢のいい店員の声が店中に響き渡った。

店員『マグロ解体ショー始まるよ~さあ早い者勝ちだ!』

右京『おやおや、これは大変ですね~』

亀山『あの人ごみで買うんですか?そばで見てていいっすか?』

右京『はい?』

亀山『いえ、一緒に買いに行きましょうか』

 その時、挙動不審な若い男性が右京の視界に入ってきた

右京『亀山君、いま卵売り場の前にいる男を見てください』

亀山『?』

右京『さっきから同じところをグルグル回っていたので気にはしていましたが・・・』

亀山『あ!いまリュックに入れましたね』

右京『万引きというにはかなり大胆ですね~』

亀山『みんながマグロ解体に注目してる隙を突いたんですね』

右京『君は店員の方を呼んでください。店の外に出次第我々も協力しましょう』

 しばらくして

男はジュース一本買ってレジを通過、店外にでた

店長『お客さん、お会計忘れてますよね~』

男『・・・』

店長『ちょっと事務所まで来てもらおうか』

男『・・・』

 素直に従うように見えたが、ポケットからナイフを取り出した

店長『うわぁ・・・』

亀山『おっと、何やってんだてめーは』

男『うるせー』

 次の瞬間、男は亀山を振り切り逃走した

亀山『まてこら!』

右京『亀山君!気をつけてください!』

 すぐに男は仲間の乗る車に乗り込みその場から逃走に成功する

亀山『くそっ!』

右京『すぐに緊急配備してください。刃物を持っているので危険です』

 次の日、特命係

亀山『おはようございます・・・』

右京『おはようございます』

亀山『右京さん、昨日はすいませんでした』

右京『その場にいた僕の責任でもあります』

亀山『でも俺が逃がしたんです、俺の責任ですよ・・・』

 その時、伊丹ら3人が特命に現れた

伊丹『特命係のかめ』

亀山『うるせーな!なんなんだよ!』

三浦『お前、昨日万引き犯を取り逃がしたんだってな』

芹沢『先輩、まずいっすよ。今朝、その店の店長が刺殺体で発見されたんですよ』

亀山『なんだと?』


右京『・・・』

伊丹『しかも現場から走り去る不審な男が目撃されてんだよ~』

亀山『まさかあの万引き犯が殺ったってのかよ』

伊丹『どっかのバカが取り逃がすからこんなことになったんじゃねーのか?』

右京『それでその目撃された男と昨日の窃盗犯は同一人物だと確認が取れたのですか?』

三浦『それは今捜査中です』

芹沢『それで先輩の逃がした男の特徴を教えてください』

亀山『特徴って言ったって・・・茶髪で、身長は170前後、黒いズボンに・・・茶色のシャツ・・・』

芹沢『一致しますね・・・』

右京『それだけでは断定するのは尚早ですよ』

三浦『しかし警部殿~状況から言って可能性は高いでしょ~』

亀山『そんな・・・俺のせいなのか・・・』

 その日の夜

 花の里にて

美和子『落ち込んでんじゃないわよ~』

亀山『いや、俺のミスだ・・・あの時俺は油断していたんだ。刃物を持っていても大丈夫だってな』

美和子『・・・』

右京『しかし、彼が犯人だとして動機は何でしょうかね~』

たまき『それはやっぱり復讐と言うか、腹いせかなんかじゃないかしら』

右京『せっかく逃走に成功したにもかかわらず、リスクを犯す必要はないと思いますよ』

亀山『せっかくですけど右京さん、俺を庇ってもらわなくてもいいですよ』

右京『誰も君を庇ってなどいませんよ。取り逃がしたことについては警察官として失態です。もちろん僕もです。しかし疑問の余地がある限り調べるのも警察官として重要だと思いませんか』

亀山『・・・そうっすね!あの万引き犯を捕まえてみれば全てはっきりしますね』

右京『ええ、しかし問題はそこです。捜査一課でもまだ見つけ出せない人物をどのように見つけ出すか』

亀山『ぜってーみつけてやりますよ』

 次の日、警視庁の入口にて

内村『おい、亀山!何しに来たんだ』

亀山『はい?』

右京『亀山君、すぐに帰ってください。君はしばらくの間謹慎だそうです』

亀山『そんな・・・』

内村『今回の件での処分は追って連絡する、それまでおとなしくしているんだな』

中園『それから、杉下。これは捜査一課のヤマだ。お前も余計なことなするんじゃないぞ』

右京『わかりました』

 刑事部長らが去った後

右京『それでは参りましょうか』

亀山『え?』

右京『もちろん僕は捜査で犯人を追います。君はどうしますか?』

亀山『でも・・・』

右京『今回は相棒ではなく、一般人の助手として参加してください』

亀山『わかりました!』

 続く~


 現場にて

亀山『何かありますかね』

右京『さあ、すでに鑑識が入っていますからね~』

圭子の鞄を揺する右京、すると白い錠剤のようなものが落ちてきた

亀山『なんすかね・・・これ』

右京『米沢さんに分析お願いしましょう』

 さらに部屋を見る二人、箪笥の上にある写真に目が行く亀山。写真には男女二人が写っていた

亀山『ここに写ってるのって室井と誰なんすかね』

右京『奥様ではないですね、しかしかなり親しい間柄のようですね~』

亀山『こっちは家族写真ですね。室井と奥さんと圭子と妹かな』

右京『・・・』

亀山『ところで室井が持っているという証拠ってのは存在するんですかね』

右京『大切なものは必ず身近にあるものです。この部屋のどこかに証拠につながるヒントが隠されているのかもしれません』

亀山『しかし、それじゃ見つけようが無いですね』

右京『君が何かを隠すとしたらどこです?』

亀山『駅のロッカーとか、貸金庫とかですかね』

右京『よろしい、君の神がかり的な勘にかけましょう。どちらにしても鍵を探してみましょう』

亀山『そんな簡単に見つかりませんよ~』

右京『早くしないと帰れませんよ』

亀山『まさかこんなとこにあるわけ・・・あ~あった・・・ありましたよ右京さん!』

右京『冷凍庫の氷の中とは考えましたね。しかし、君の勘は実に恐ろしいですね』

 その夜、花の里にて

美和子『それでどこの鍵かわかったの?』

亀山『いや、それも米沢さんに調べてもらってる』

たまき『でも、テレビでは娘さんに殺されたっていってましたけど』

亀山『あれは表向きですよ。まだ何かあるに決まってますよ。ね~右京さん』

右京『しかし本人が認めているのが腑に落ちません、伊丹刑事の話によれば誰かをかばっている様子ではなかったそうです』

亀山『・・・』

美和子『それにしても、ちょっと寒くないですか?』

亀山『そういえばさっきから背中が冷えるな』

たまき『暖房強めにしたんですけどね・・・あっもしかして』

右京『?』

たまき『裏の窓が開けっ放しだったわ。閉めたと思い込んでてみたいね』

右京『・・・なるほど、そういうことでしたか』

亀山『え?』

 次の日、特命にて

米沢『成分分析の結果がでました。幻覚剤の一種ですね』

右京『やはりそうでしたか。これで全てがつながりました』

亀山『どういうことです?』

右京『圭子さんは殺していません。殺したと思い込んでいるだけです。ちょうど窓を閉めたと思い込んでいて、閉めていなかったように』

亀山『幻覚をみせたってことですか~そんなこと可能なんですか?』

右京『実際に殺させるよりははるかにハードルが下がります。さらに目の前に死体が在れば疑う余地もありませんよ』

亀山『どうやって飲ませたんです?』

右京『圭子さんのブログによれば本人はビタミン剤を持ち歩いていたそうです。しかし部屋から見つかりませんでした。事件前に犯人がすり替えていて、犯行後に持ち去ったと考えれば辻褄が合います』

米沢『なにやら物騒な話ですな。それから鍵も特定できました。上野駅のコインロッカーの鍵でした』

 その時、小野田が現れる

小野田『お前に頼まれた写真、柏木から預かってきたから』

亀山『この人だったんですね』

右京『やはりそうでしたか』

その後、上野駅へ向かう車中の二人

亀山『しかしなんだってそんな紛らわしいことをやったんですかね』

右京『犯人が未成年ならば父である被害者の名前も公表されません。さらには本人が自首することで捜査の手は永遠に及びません』

亀山『そうか、卑劣な犯人ですね』

右京『ええ、到底許されることではありませんよ』

 しばらくして

 湾岸商事にて

恩田『私に何か御用ですか?』

真下『我々もヒマじゃないんですよ、刑事さん』

亀山『実は室井さんの部屋からコインロッカーの鍵が見つかりましてね、そのロッカーを調べたら出て来たんですよ』

真下『・・・』

恩田『まさか・・・もう終わりね。刑事さんももう察しが着いてるんでしょ?』

右京『某国への軍事転用可能な技術の提供ですね』

恩田『ええ、悪いとは思ったけどすごいお金出されたから断れなかったのよ』

亀山『あんたらな!自分が何をしたのかわかってるのかよ!』

真下『仕方ないですよ。初めはそんなつもりじゃなかった。結果的にそうなってしまったんだ。その後は[取引内容をばらす]と取引相手に脅されて・・・』

右京『それでも止めることはいつでもできたはずです。しかし我々が追っているのは殺人事件の犯人です。後ほど証拠をもとに家宅捜索令状と逮捕状を持った捜査員が参ります。それまでの時間を我々が得ました』

亀山『あんたらが室井さんを殺したんだな?』

真下『・・・』

恩田『そうよ。証拠を返さないって言うから仕方なかったのよ』

右京『それだけの理由ですか?』

恩田『・・・』

右京『室井さんの部屋にあなたと室井さんが写った写真がありました。とても職場の同僚という感じはありませんでしたので調べてみました』

亀山『あんたたち結構親密だったようだな』

右京『仕事と恋愛という二重の裏切りが今回の犯行を決意させたのではないですかね~』

恩田『・・・あんな奴死んで当然なのよ!最低な人間なのよ!自分の娘に手を出すようなやつなのよ!』

亀山『なんだと?』

恩田『あいつが酔っ払って話したことがあるのよ』

右京『死んで当然の人間などこの世には存在しませんよ。そしてあなたは自分の犯行から逃げました。さらに圭子さんを利用し犯罪者に仕立て上げたのですよ。僕にはあなたが最低の人間だと思えますがね~』

恩田『・・・』

 その後、捜査員によって逮捕された恩田と真下

右京『亀山君、もう一件寄ってもらいたいところがあります』

亀山『はい?』

実家に帰っていた室井の妻、雪乃を訪ねる二人

雪乃『なんでしょうか?』

右京『圭子さんの容疑が晴れましたのでご報告に参りました』

雪乃『よかった・・・』

亀山『でも、一点だけ気になるんですよ。遺体には複数の刺し傷があったんですけどね、犯人の供述では一回だけなんです。しかも娘さんの指紋が凶器から消えているんです』

雪乃『・・・』

右京『そこで考えてみました。2度目以降はあなたが刺したのではないですか?そして指紋を拭き取ったことで圭子さんの指紋も消えた。違いますか?』

雪乃『物音に気付いて見に行ったときにはあの人・・・もう虫の息でした』

亀山『それで圭子さんを部屋に帰して、あなたが。』

右京『動機はおそらく圭子さんの妹さんですね』

雪乃『何故それを・・・』

右京『室井さんの部屋で家族写真を見たとき、初めて妹さんの存在に気付きました。そしてなにか意図的にあなたが隠していたのではないかと思いました』

雪乃『つい先日です。妹の絵里(6歳)に手を出しているのを見たのは・・・』

亀山『なんて奴だ・・・』

右京『あなたには遺体損壊容疑で事情を伺うことになると思います』

亀山『いいんですか?』

右京『何か問題でもありますか?』

亀山『いいえ。(娘の)2人の支えになってあげてください』

雪乃『すいませんでした・・・』


 特命にて

角田『なんだかすごい事件に発展したもんだな』

亀山『今回ばかりは犯人逮捕でもまったくすっきりしませんよ』

角田『死人を悪く言いたくないけど、家族にはむしろよかったかもな』

右京『・・・』

小野田『邪魔するよ、杉下。よくやってくれましたね。隠蔽するのに苦労しましたよ』

右京『公安の人間というだけで甘やかしてきた結果ですよ。それでもまだ隠蔽するおつもりですか』

亀山『そうですよ!そもそもあんな奴を使っていたからこんなことに・・・』

小野田『仕方ないでしょ。組織には組織のやり方があるのよ』

右京『詭弁ですよ』

小野田『お前らしいね。ちょっと早いけどよかったら昼飯でもどう?』

右京『ご遠慮いたします』

小野田『あっそう。じゃ亀山さんは?』

亀山『またの機会にしますよ』

小野田『そう。じゃあ、また力が必要になったら来ますから』

右京『一つよろしいですか?』

小野田『なに?』

右京『雪乃さんは室井の正体を』

小野田『知るわけ無いでしょ。今後もそれはないよ』

 その後

右京『亀山君、お昼に行きましょうか』

亀山『そうっすね。久々にそばなんてどうです?』

右京『そうですね~』

終わり~

 お台場にある室井の潜入先の会社を調べる特命係

亀山『ここですね、湾岸商事』

右京『表向きは主に海外向けの通信衛星技術の提供だそうです』

亀山『しかし・・・どう調べるつもりなんですか?』

右京『いつもと同じですよ』

 受付にて

右京『至急社長の柏木さんとお話がしたいのですが・・・取り次いでいただけますか』

受付『杉下様ですね。最上階が社長室となっております。どうぞご案内いたします』

亀山『わりとあっさりですね』

右京『おそらく官房長が手配してくれたのでしょう』

 社長室にて

柏木(46)『お待ちしておりました 柏木です』

右京『初めまして、警視庁特命係の杉下と申します』

亀山『同じく亀山であります』

柏木『時間があまり無いので手短にお願いします』

右京『あなたが室井さんを潜入させたのですか?』

柏木『ええ、私はここの社長になって3年になりますが当時から私のあずかり知らないところで多くの計画が進められていました。それだけならまだしも、軍事転用可能な技術まで海外に流そうとする動きが社内にあると室井さんに指摘されました』

亀山『それで内部に入って調べてもらっていたわけですか』

柏木『はい』

右京『しかし決定的な証拠は得られなく、先日潜入を終えたわけですね』

柏木『そうです。ところで室井さんは本当に娘さんに殺されたのでしょうか・・・』

右京『残念ながら真相はまだわかりません』

亀山『それで特殊技術の海外流出の中心とされた人物というのは誰なんです?』

柏木『専務の真下正志(45)、開発部のリーダー恩田すみ子(37)が関わっていると思われます』

右京『・・・』

 次の日、所轄所の取調室にて

伊丹『なんで殺しちゃったの』

圭子『わかりません・・・夜、目が覚めたときに犯行を思い立って・・・』

三浦『恨みとかあったのか』

圭子『確かに普段から成績のことばかり言うので嫌いでした。でも自分でもなんでこんなことになったのかわからないんです』

伊丹『・・・』

所轄所員『伊丹刑事、三浦刑事。刑事部長がお呼びです』

伊丹『げっ・・・』

内村『お前ら、ここで何してる!これは所轄のみで行うと言ったはずだ』

伊丹『少し気になったのもので申し訳ございません』

内村『今度勝手な真似したらどうなるかわかってるな?』

三浦『・・・』

 特命にて

亀山『長女の圭子も曖昧な供述ばかりだそうですね』

右京『もっともあのような異常な状況で正確に話せという方が難しいのかもしれませんよ』

亀山『・・・』

右京『ひとつ気になります。昨日、君が流出の中心人物は誰かと聞いたときに柏木さんはすぐに名前を挙げましたね』

亀山『確か、専務の真下と開発部の恩田でしたね』

右京『柏木さんがそれを知れたとすれば室井さんからです。もしかしたら室井さんは犯人の正体も証拠を手に入れていたかもしれませんよ』

亀山『でも・・・室井さんが隠す必要ないですよ。それに柏木が会社のために証拠を隠滅したとも考えられますよ』

右京『君にしては上出来です。しかし柏木さんは自ら捜査に協力しています。官房長も承知のことですのでそれは間違いありません。亀山君、君に調べてもらいたいことがあります』

 しばらくして

亀山『右京さんの予想通りですよ。室井って男はとんでもない人物でした。酒にギャンブルに女遊び。まるでヤクザですよ。公安の署員が聞いて呆れますよ』

小野田『邪魔するよ。確かに室井は素行に重大な問題がありますよ。でも、この際それはどうでもいいじゃない』

亀山『どういうことですか?』

右京『彼は潜入技術に関して他を圧倒していたからこそ切れなかったということでしょう』

小野田『そう。彼はエース。簡単には切れませんよ。お前と同じで』

右京『それは違います。どんなに優秀な人物でも人格が伴わなければその職務に着くのは間違っていると思いますよ。だからこそあなたは僕を特命係においているのでしょう』

小野田『おまえも出世したいの?』

右京『誰もそんなことは言っていません。今回の事件も室井さんが自ら起こした可能性があるというだけです』

亀山『自ら起こしたってどういうことです?』

右京『おそらく室井さんは潜入に成功してまもなく証拠を手に入れたのでしょう。しかし告発の証拠にもせず、社長へ報告することも無かった』

亀山『まさか・・・流出の中心人物をゆすっていたってことですか』

右京『今までの彼に実績から言えば今回の潜入は容易でしょうからまず間違いないと思います』

亀山『じゃあ、その証拠ももう処分されてしまったってことですか~』

小野田『それはないでしょ。それなら殺す必要はない。まあ殺人と今回のが関係ないならそうともいえないけど』

右京『確かにいまのところ何の証拠もありません。ただ証拠は必ず手に入れます』

小野田『まあ無理せず頑張ってくださいよ』

 小野田が去った後、伊丹が特命に現れる

伊丹『お前らこそこそ何調べてんだよ』

亀山『お前には関係ねーよ』

伊丹『今回ばかりはいつでも協力してやるよ。ろくに調べず捜査を終わらすなんてどうも気にくわねー』

 鑑識にて

右京『何かわかりましたか?』

米沢『それが凶器の包丁からは指紋は一切検出されませんでした』

亀山『圭子のもですか?』

米沢『ええ、ですから一切ありません、事件後拭いたということでしょう』

右京『妙ですね~犯行は冷静なものでは無いにもかかわらず、事後処理は実に完璧ですね』

亀山『そういえば外部犯に見せるために部屋の鍵が壊されてたってのも冷静すぎますね』

右京『亀山君、もう一度現場に行って見ましょう』

 さらに続く~


 港区のとあるマンションにて、男性の遺体をみている捜査一課の面々

伊丹『ひでー殺し方しやがるな』

芹沢『凶器はこの包丁みたいですね』

三浦『で、害者の身元は?』

芹沢『名前は室井徹、42歳。都内の製紙工場に勤めています』

伊丹『死因は?』

亀山『この出血量ならおそらく失血死だろうな』

右京『そのようですね~』

伊丹『また、のこのこと現場にきやがって』

亀山『刑事が現場に来てなにが悪い』

三浦『警部殿~これはまたお早いお着きで』

右京『もちろんお邪魔は致しませんよ』

芹沢『米沢さんですね~』

とぼける米沢『え~死因はおっしゃるとおり失血死で間違いないと思います。解剖してみないと詳しくはわかりませんが、刃渡りから見てこの包丁で何度も刺されたのでしょう』

右京『どれも致命傷になりえるものですね』

米沢『問題はそこなんです。私の見解では一度目で殆ど身動きが取れなかったはずです』

亀山『ということは、2度目以降は恨みが爆発してってことですかね』

右京『捜査に思い込みは禁物ですよ。しかしその可能性は十分にありえます』

伊丹『よし、害者の周辺を徹底的に洗うぞ』


 特命にて

角田『よっヒマか?』

亀山『ヒマじゃありませんよ~コーヒーはご勝手にどうぞ』

角田『そうなの?じゃあ遠慮なく頂くとするかな』

亀山『それでどこから調べます?』

右京『疑問が2つ』

亀山『現場になにかありました?』

右京『部屋の鍵は壊されていました。ということは犯人はドアから侵入したことになります。そして台所で包丁を手に入れ、被害者の寝室で殺害。同じドアから出て行った』

亀山『捜一はそう見ているみたいですね』

右京『リスクを承知で部屋に入ったにもかかわらず凶器は持ってこなかったのは非常に気になります。さらに被害者がほぼ無防備に殺害されているのも気になります』

亀山『寝ていたらそうなるんじゃないっすか?』

右京『仮にそうだとしたら、犯人は物音も立てずに事を成功させたことになります。しかし犯人逃走後すぐに奥さんと娘さんが異変に気付き救急に連絡を入れていますよ』

亀山『じゃあ・・・犯行は外部犯ではなく、内部犯。奥さんの可能性が高いですね』

角田『そういやその事件で一課が騒いでたな』

亀山『何をです?』

角田『なんでも、害者の勤めているはずの製紙会社には勤務実体は無いんだと』

右京『解雇されていたということですか?』

角田『いや、そもそも在籍したことがないらしいぞ』

亀山『そんな・・・どうなってるんですかね・・・』

右京『・・・』

  次の日、現場近くの交番にて

室井の長女『私が父を殺しました』

警官『え?』

 特捜本部にて

新城管理官『今回の会社員刺殺事件は害者の長女、室井圭子(14歳)が犯行を自供、裏付け捜査の結果現場の状況と一致した。被疑者が未成年であることも鑑みて特捜本部はただちに解散する、以後の捜査は所轄署中心に行う。以上だ』

伊丹『害者の身元に関してもっと調べる必要があるのではないでしょうか』

新城『必要ない!この事件は終わったんだ!』

三浦『よせよ。なんかやばそうだぞ』

伊丹『やばいってどういうことだ?』

芹沢『いくら自供があったからといってこんなにすぐ打ち切るなんてどう考えてもおかしいですよ。第一我々は裏付け捜査なんてやってないですよ・・・』

伊丹『なんか裏があるな』

 特命にて

亀山『右京さん!害者の娘が自供したそうです』

右京『先ほど米沢さんから伺いました』

亀山『伊丹たちは独自に調べるらしいですけど、捜査は打ち切りだそうです』

右京『そろそろ行きましょうか』

亀山『行くってどこへ?』

右京『今回の件に絡んでいる人物はおそらく・・・』

 官房長室にて

小野田『そろそろ来る頃だと思ったよ』

右京『やはり圧力をかけたのはあなたでしたか』

亀山『でも、何でただの殺人事件に・・・』

小野田『ただの事件じゃなさそうだからですよ』

右京『被害者の室井さんは勤務実体の無い会社に在籍したことになっていました。そんな必要があったのは身分を隠すためとしか考えられません。そしてそれが出来る機関といえばごく僅かです』

小野田『その通りだよ。彼は公安の署員、本名は柳葉俊夫。先日まである会社に潜入捜査していた。ところが潜入捜査が終わった直後に今回の事件。どう考えても偶然じゃないよね』

亀山『じゃあ奥さんと娘さんは・・・』

小野田『もちろん彼の本当の奥さんと娘さんですよ。もっとも製紙工場の室井としてだけどね』

右京『そこまでお話になるということは、我々に事件を調べろということでしょうか』

小野田『さすがに話が早いね。もし公安だとわかると何かと面倒でしょ。でも、潜入先での失態で殺されたなんてのはもっと困っちゃうのよ』

右京『このまま有耶無耶に終わらせることもあなたなら出来たはずですよ』

小野田『お前が関わった時点でそれは無理でしょ』

亀山『でも自供しているんですよね』

小野田『まさかそれが真実だとは思ってないよね』

亀山『しかし・・・』

右京『ところで、潜入していたという会社というのは』

小野田『詳しくはこのファイルにあるから、頼みましたよ』

 
 続く~