上野の森美術館では、10月から開催されていたMOMA展(ニューヨーク近代美術館名作展)を見ていた。セザンヌ、ゴッホ、ピカソなど世界の名だたる巨匠の名作が集められていた。
彼女とは午前中に待ち合わせして、昼食をとってからここに来た。お互い、胸中普通では無い筈なのに、今までのデートのときと全く変わらない感じで会話をしていた。
どう接していいか分からないという俺の感情があるのに、普通の態度で接している自分が不思議でもあった。彼女には、ここで喧嘩になったら終わりだという思いがあったのだと思う。
そんな不思議な感覚の中で、俺は思いのほか、巨匠の名作の世界に没頭していた。バルセロナでピカソ美術館に行くことを想像して、心ときめいた。
美術館を出た後、上野公園を少し散策した。その後、新宿に向かった。クリスマスのイルミネーションが、街じゅうにあふれていた。レストランで食事をした。約束通り日付が変わる前に、俺はひとり家路についた。
家に帰ってFMラジオをつけた。桑田佳祐の白い恋人達が流れてきた。
今宵涙こらえて奏でる愛のSerenade
今も忘れない恋の歌
雪よもう一度このときめきをCelebrate
ひとり無き濡れた夜にWhite Love
胸がしめつけられた。