2001年12月下旬某日。日本出発まで1ヶ月。
俺は九州から上京してきた彼女と、上野の森美術館にいた。
俺が12月上旬に、彼女に世界旅行に行くことを告げてから数日後、彼女から電話があった。クリスマス前後に、東京に会いに行ってもいいかと聞いてきた。俺は、旅行の打ち合わせや準備で忙しいから、もし来ても日中に1日ぐらいしか会えないと言った。
それから数日後、また彼女から電話があった。飛行機のチケットを取ったと。友人のところに泊まるので、一日でもいいから会おうと。
俺には勇気が無かった。彼女の申し出を断わる勇気が無かった。
いや本当は、勇気じゃなくて優しさが無かった。
俺には分かっていた。世界旅行を契機に彼女と別れようとしている自分を。
彼女もその事を、うすうす気づいていたのかもしれない。
それでも俺に対して真っ直ぐに向かってくる彼女に対して、俺はどう接していいのか分からなかった。