ヴァイオリン製作家 大久保 治のブログ

ヴァイオリン製作家 大久保 治のブログ

自作弦楽器製作について、楽器、工房での仕事中心に書いています。

 

 しばらく ブログをさぼっていました(汗)。ここの所体調がすぐれず医者通いが続いていたので作業の方もゆっくりです(泣)。

さて、 前回 「カテドラーレ」の表板の接ぎ まででしたので その続きになります。写真の材の裏側を平ら出ししたら 今度は

表側(上面)を楽器の隆起の最高点に近いくらいの所で又平らにします。今回は16ミリで平らです。

 

 

 次に先日裏板を接着し終わったボディーを裏側に乗せて センター合わせをしたら 罫書き針でシェイプを写し取ります。

オーバーハング(約2,5ミリ幅)もシェイプに合わせてシャープペンで書き込みますが つのの部分は実寸カラーコピーを切り抜いたものを当てて描きます。

 

 

 こんな感じになります。

 

 何故かもう一枚少しアップで…(汗) そしたらいよいよバンドソーで切り抜きますが、こちらを上面にしてカットしますので

この裏側は先ほど16ミリ厚で平らにしてあるので ぐらぐらせず カット断面(表板の側面)が直角に出来ます。

 

 

 はい 切り抜きました。 この後大まかに余分な厚すぎる所を荒彫りして エッジのパーフリングが入る周辺を完成形に近い厚さまで平らにします。 上の写真はバンドソーが小さいので刃が入らずつのの形まではカット出来ないままの状態です。(汗)

 

 

 はい、そのつの整形を終えた所です。 ヴァイオリンらしい形になって嬉しいです。 これでパーフリングカッターが使える状態にまでなりましたので 早速パーフリングの位置決めをして溝を掘っていきたいと思います。

 

 

 パーフリング作業の工程は前の記事でも数回取り上げておりますので 今回はカットさせていただきます。(汗)

 

 

 はい、 パーフリングを埋め込みました。 次にやる事はパーフリングの上を彫って隆起を完全に完成させることです。

 

 

 段々完成形に近づいて来ました。

 

 

 テーブルライト一つで影を見ながら 歪みが無いかじっくり見ていきます。

 

 

 もともとこのパーフリング作業はあまり得意ではないんですが この数年歳をとって目もさらに悪くなって 下手です。(汗)

 

 

 ストラドはこのパーフリングの内側ラインの三角形があまり尖らない優雅な形なんで それを心がけると どうしてもつの自体を少し短めにしないとバランスが取れないんですけど 個人的につのの短いヴァイオリンってあまり好きではないので こんな感じになりがちなんですけど これはちょっとカッコ悪いかなあ~?(汗) 長すぎるつのはもっとカッコ悪いですから。

 

 

 今回のこの表板 タッピングトーンはすごく良く響いて いかにも鳴りそう(って言うかもう鳴ってる?)な材料なんですけど

めちゃめちゃ柔らかい(汗) この辺りの作業がものすごくやりずらかったなあ~!もう。

と言う訳で 表板の表側が完成したので 次はこの裏側を彫って Fホールを開けたり 厚みを作ったり バスバーを着けたり やる事が山ほどあるんですけど ちょっと他の楽器も進めたいので いったんこの「カテドラーレ」から離れますので 「カテドラーレ」ファンの方すみません!(汗)

 

 

 ニスを乾かしていた77作目の「ロードウィルトン」ですが、良さそうなので駒を作りました。全てのカ所で刃物を入れていない所はありません。もちろんフランスオベールの駒なので 半完成品を使うのですが、そのまま・・・は使えません。けっこうこの駒仕上げ やることが多くてなかなか時間がかかります。 よく全くのビギナーのお客さんで 何もせずにそのまま新しい駒に交換出来ると思っている方がまれにおられますが、(汗) 

 

 

 焼き印で名が入っている面が テールピース側に向く場合がほとんどですが(この駒も)たまに逆パターンもあります。そうすると焼き印を消さなければならないので 何だかどこから持ってきたのか分からない安物の質の良くない駒を使っていると 思われるかもしれないので 自分の名の焼き印を押す製作者が多いんですが 私は作ってないので焼き印はありません。(汗)

 

上の写真の駒の表面が俗に言う「雨降り模様」なのがテールピース側で、 下の写真に出ている「点点模様」が指板側に向きます。

 

 

 アンティーク(古色)塗りの楽器の在庫が無くなってしまったので ちょっと久しぶりに製作した77作目です。何故かアンティーク仕上げにする楽器は グァルネリばかりになってしまっています。なんかイメージ的に・・・。

 

 

 コピーではないので この裏板の剥げ具合は いつもの感じです。ハゲと言うよりはグラデイションっぽいですね。

 

 

 例えば 今回のこの楽器のヒール部はかなり剥げさせました(汗)あんまり汚すのは 汚らしくなるので どちらかと言うと剥げさせる感じかなあ。

 

 

 あまり極端にダジェズーの変形スクロールにはしませんでした。この「ロードウィルトン」ですが Y字に目玉が向いている角度はそれほど極端ではないので わざとらしく強調したくなかったので 結果普通に近くなってます。(汗)

 

 

 この辺も古く見せる と言うよりは この辺りが剥げて来るよね~?みたいな感じで、新しい楽器に見えちゃってます(汗)

 

 

 ホントはここまで色は濃くしたくなかったんですが・・・(汗) 今回表現したかったのはオリジナル器にある スクロールの丸ノミの掘り跡。 そこそこ表現出来た。

 

 

 反対側はもうちょっと寄って・・・いつも思うのですが もう少し乾いた感じにしたいんだけどなあ~(汗)

 

 

 この楽器は わざとらしい激しい傷跡は残さないように 比較的おとなしくやって見た。後は所有者の方が使い続けていくうちに自然とオールドの顔になっていく事を期待して。

 

 

今回は普通な感じで あんまりいじくってないので 傷も汚れもない。のでちょっと古くは見えないかなあ。

 

 

 あらら 楽器を持ってる手が映ってしまったな(汗) 弦はいつものドミナントのミッテル。

 

 

 今回も 裏板の杢と側板の杢が似ていない。 大体私のグァルネリはこの辺は気にしないで作っている。側板の杢自体バラバラのを使ったり(わざと) その方が面白いと思う。 ストラドはどちらかと言うとフルバーニッシュの事が多いのもあるが きっちり全部揃えて作る事が多い。その辺にも ストラドとダジェズーの作り分けと言うかキャラの違いが自分の中では出来上がってしまっている。 

 

 

 裏板中央部のキズ、この程度にした。

 

さて弦を張って見てのファーストインプレッションですが、 なかなか良く鳴っています。 やっぱりいつもの私の楽器の音と言えるのかな? けっこう満足いってます。このまま弾き込んでいって調整もして さらにもっと良くなればかなり自作の物中では上位にくると思います。、

 

 

 79作目に戻って 表板にかかります。 2014年のバックマンのファーストグレードを使います。 まずは片面の平ら出しをして その裏側(表面にくる方)に線を描いてなるべく材を小さく、はたがねなどの締めるクランプの距離が短くなるようにします。

 当然 四角いまま締めて問題ない(又はその方が都合が良い)場合は この様に材を小さくする必要は全くありません。

 

 

 工房が劇的に狭くなって(汗)非常に作業がやりにくく、いつものように出来るか多少不安な気持ちになってきましたが・・・。 特に作業机にバイスが固定出来ないので まずは板を間にかましてから装着!となりました。(汗)

 

 

 はい、端折って もう翌日です(笑) クランプを外しました。ちゃんと着いているようで一安心。 この裏面をもう一度平らにします。

 

 

 ハンディータイプの鉋で 表板の高さプラスアルファで平らにします。 これで裏側にけ゚がいた時にカット面が直角になります。

 

 

 接ぎ合わせたセンターラインを見てみましょう(写真中央部)、ほとんど気にならないレベルです。これから裏側にボディーを乗せて 形を写していきます。そしてバンドソーで切り抜きます。

 一言で言ってしまえば けっこう昔から コンピューターなどによって正確な隆起を(MRI)求める事は出来ていて、しかも板にそのまま NC加工で 機械が正確に? 同じ隆起に削るなどの事はされてきていて、 特に工場生産の同じ物を大量生産する目的にかなっているので ストラドと同じふくらみの楽器はかなりそっくりに再現出来ていると言って良いでしょう。

 ではここで そんな大掛かりなNC加工の機械などのない 個人製作家(昔ながらの手工弦楽器製作者)はそんな機械など使わずにどうやって 三次元である隆起を完成させているのか 簡単ではありますが書いて行きたいと思います。

 

 

 今回のモデル レディーブラントはこのベアーの本から選びました。 ここにはまあ一通りの寸法は出ていますが 隆起に関しては出ていません。 以下です。

 

 

 このように各部の寸法が別表に数値として書かれています。 私が前回の記事で手書きにノートに書いたのは いちいち確認の度びにこの重い本を図と表を照らして見るのは面倒だと思ったので 毎回このようなノートを作っていたからです。

 

 

 さあ 製作者のバイブルとも言えるこのサッコーニの「ストラディヴァリの秘密」ですが、 こちらには ストラド黄金期(おそらくはGモールドの)の隆起が掲載されておりますので、参考にします。 まずは隆起を横から見た形です。

 

 

 多くの イギリスの出版社による図がそうであるように(雑誌Strad) これらの隆起の位置は 5か所がもっとも多く、以下

 

1.アッパーバウツの最大幅の位置

2.上のつののすぐ上の一番へこんだ位置

3.センターバウツの最狭幅の位置

4.下のつののすぐ下のへこんだ最狭幅の位置

5.ロワーバウツの最大幅の位置    の5か所です。

 

 これと同じように センターの位置での縦の隆起の図ももちろん出ています。  これらを駆使(参考?)して隆起を作っていくのですが、 ではこのそれぞれ5か所の間の形は出ていませんのでどうしたら良いのでしょうか? そこで大事になってくるのが等高線です。

 

 

 これによって どの高さがどこの位置に来るのか 大体の隆起のふくらみの形が目に浮かんできます。 隆起を夜 ライト一つで影をたよりに 削っていく職人技をどこかでご覧になった方も多いと思いますが、 それだけでは 特にエッジに近い周辺などは エッジから平行の位置の高さまでは影では分かりませんので 両方合わせ技で隆起を完成させなければなりません。

 

 

 このように テンプレートを作って 5か所の形を削りながら 等高線が美しい形になるように、更に ライトで出来る陰で

も綺麗な隆起に仕上げます。

 コメントに有りましたように 憧れの楽器(例えば 有名ヴァイオリニストが使用してる何年のストラドで通称何々と呼ばれている楽器)の完全コピーの楽器は入手できるのか? と言えば 一言で言えば 「完成度による」ではないでしょうか?

 どこまで忠実にコピー出来ているのか?製作者の持っている資料の多さや 再現する技術力など なかなか納得いく楽器に巡り合う事は大変な事かと想像できます。そもそも形が全く同じでも良い材料で作られていなかったら・・・なので。

 

 例えば 私の作っている楽器の半分強は 隆起の形まで資料として出ている物ではないので その楽器と製作年の一番近い物のテンプレートで隆起は作っていて、完全にはオリジナルのその楽器の隆起とは違っていると思いますし。外国の製作家の作品であっても オリジナルの隆起も所有しており、しかもその隆起通りに楽器が出来ているか?というのも なかなか確認などは不可能なので、 もしかしたら コピーといっても 楽器の大きさ、Fの形、スクロール、 側板の幅くらいが再現出来ています。くらいのコピーなのかも知れないので、当然本物と近い音がする!とはまず考えられません。 まあ中には奇跡的に凄い音がする物も無いとは言えませんが、 

 

長くなりましたが 実は次は諏訪内晶子さん使用の名器「ドルフィン」を作りたいなあ、と思っていたのですが 資料が入手出来ないので 諦めました(泣)、 今回の「レディー ブラント」は隆起の形だけが分からないので別のストラドの隆起で作ろうと思います。

 

 今年中に製作を始めたいと思っていた 80作目の楽器ですが、やっぱりストラドで「レディー ブラント」1721年に決定しました。 これまで 節目?でもないですが キリの良い所で 10作目ストラド、 20作目ストラド、30作目ストラド(クレモネーゼ)、40作目ストラド(ソイル)、 50作目ストラド(ベッツ)、60作目ストラド(パーク)、70作目ストラド(サラサーテ) と全てストラディヴァリのモデルを作ってきましたので 今回もストラドで今まで作ってなかった初めてのモデルを選びました。 この楽器は確か日本の音楽財団が所有していて あの東日本大震災の時に手放した楽器だったと記憶しています。その金額は1590万ドル(当時は16億円、現在なら25億か)でストラドの最高販売価格として現在ギネスに登録されていますが それも1714年製のヨアヒムの使っていたストラドが抜くと見られています。

 

 

 寸法を書き出してみます。 特に変わった寸法ではありませんね。 しいて言えば スクロールの目玉間と比べてF字の上の目玉間が少し広いので Fホールが若干立って見える?のかも知れないのと珍しくはないがやっぱり側板の一番幅の厚いのが上のコーナー部なので かなり急にネック部まで(2ミリ以上)薄くなる所、 上コーナーブロックを平らにするのは当然としてブロックよりネック方向になった所から表板が折れた?ようにネックブロック面を斜め平らにするのか? まだ良く分からない(汗)

 裏板の方を曲げると言う選択肢はないんだけど(今の所) そう言う楽器見たことないので(汗)。

 

 

 さあ テンプレートを作りましょう! まずは 原寸のカラーコピーを用意します。 摩耗したラインを復元してアウトラインを丁寧に切り抜きます。もちろんボタンはカット。

 

 

 コピーの裏側に オーバーハング(2,5ミリ)プラス側板厚(1,2ミリ)、合わせて3,7ミリの幅に平行線をコンパスで描きます。 コーナー部は過去に作っておいたテンプレートの形を使って上手く合わせて記入します。(つの部は外周と並行ではないので) ここでテンプレートの方を細長く書いてしまうと 側板のコーナー部と表、裏板のつのの形の収集が取れなくなって 可笑しなバランスになってしまうので くれぐれも あまり長く尖らせないように 控えめにするのがコツです。

 

 

 カーボン紙を挟んで 発砲塩ビ板に今書いた線をそのまま写したら まずは大まかにはさみで切り、 小刀で慎重にラインを出していきます。

 

 

 裏表が後で分かるように 今のうちに表側に「オ」と書いておきます(笑) カーボンの線は完全に美しくはないので 影響されないように裏側から見ながら 堅い木にペーパーヤスリを貼った物を使い アールを仕上げます。 出来たらコピーの上に置いて 平行に出来ているか確認及び修正をします。

 

 

 最後に センターラインなどの位置を書き入れて 要所要所に小さな穴をドリルで開けたりして テンプレートの完成です。

この後はもう少し面倒な モールド(内枠)をこのテンプレートを使って作ったら いよいよ楽器の製作がスタートです。