名探偵ポアロのシリーズはずっとスーシェのドラマで

楽しんでおります、はい(読んだことはないのです)。

 

ある日、説教の準備で加藤常昭先生の文章を読んでいたら、

2回にわたってA・クリスティーの『ベツレヘムの星』が

引用されていて気になり、早速市立図書館で借りてきました。

タイトル(含書影)からお察しの通り、

いわゆる「クリスマス・ストーリー」的な一冊になります。

キリスト誕生記念に因んだエッセイや物語を、キリスト教圏の

作家さんたちはよく刊行するんです。もっともクリスティー女史は

晩年「クリスマスにはクリスティーを」と売り込むくらい、

クリスマス節季に新刊を出していたそうです。

 

どうやら女史は英国国教会の信徒として

結構真面目に礼拝に参列していたそうですが、

新約聖書のキリスト伝や教会の伝承を題材にした短編と、

その短編にやんわりと関連する散文が10編前後収められています。

 

冒頭の「ごあいさつ」はまるでクリスマスに歌われるキャロルの歌詞。

第1話の「ベツレヘムの星」(表題でもある)はまさに

受胎告知に肖った短いエピソード。マリアと天使が、

生まれ来る赤子の未来を見てしまう、というもの。

「いたずらロバ」はイエスの誕生を目の当たりにしたやんちゃな子ロバが

やがてマリヤ、ヨセフと幼子イエスをエジプトに逃がすために活躍する、

といったもの。旧約聖書に愚かな預言者バラムを嗜める

ロバのエピソードがありますが、その辺りも盛り込んでの超短編。

加藤常昭牧師が説教で引用したのは「水上バス」と一番の長編「いと高き昇進」。

「水上バス」の舞台設定は現代のロンドン。他人を愛したいのに、

人に触れることも触れられることも嫌で愛せない女性が、

雑踏を避けるために乗船した水上バスで、不思議な東洋人に触れて

変えられる話し。神に触れる、キリストに出会う、という信仰的な

体験をミステリー風に描き上げています。

「いと高き昇進」はカトリックの伝承に重ねた物語のようですが、

紀元2000年(執筆当時からすれば近未来の話)に、

14名の聖人たちが神に上申をして、再び地上に戻り、

人々に仕えたいと願うストーリー。

マーベル・アベンジャーズの聖人版宜しく、楽しく読み流せる内容に

なっています。教会の壁画に見目麗しく描かれて人々から賞賛されるより、

名前も知られずに、困っている人々に手を差し伸べることを選んだ聖人たち。

天国で輝く冠を頭上に被ることを捨てた彼らの選択を「昇進」と呼ぶのです。

ピリピ2章キリストの謙卑と高揚を彷彿させるエピソードです。

ただ、いずれのストーリーもある程度聖書を読んでいないと

ピンと来ないのではなかろうか、と案じています。

そんなわけで、あまり人には紹介できないかなぁ。

一応各エピソードに脚注が付されていて、聖書の引照や、

聖人の特色など最低限の解説はあります。

 

巻末の解説を児童文学評論家の赤木かん子女史が認めていますが、

彼女はきっと聖書をしらない。よってほとんど参考になりません。

「どの話も全部クリスマス、アンド、キリスト…です」だって。

ハヤカワさん、私、解説しましょうか?

(嘘だよ、ウソ)

 

※これまでコロナ対策の一環でばるたんくんはマスクを着用していましたが、

本作から外すことになりました。くれぐれも飛沫感染にはご注意を。