前作『方舟』を読破後、すぐに『十戒』を図書館から借りようと

しましたが、やはり50人近く待たされることに。。。

それでようやく先週、やつがれの順番になったわけです。

 

「犯人を見つけてはならない。それが私たちに課せられた戒律だった。」

帯にデカデカと掲げられたキャッチフレーズ。

「戒律」「十戒」とあるように、これは言わずもがなの旧約聖書

モーセの十戒から取られたイメージ。前作「方舟」が創世記からの

イメージ、今回は出エジプト記からです。

次の作品はレビ記から「幕屋」だったりして(笑)

やつがれの下馬評です。

確かに冒頭に出エジプト記からの引用があり、本編にもちらっと

聖書が出てきますが、前回同様キリスト教(含ユダヤ教)はほぼほぼ

無縁のストーリーです。

 

夕木氏がカルト系宗教に熱心な親の2世で、

それなりに思うところがあり、宗教二世について

いずれガッツリと取り組んでみたい、と

どこぞのインタビューに答えていましたので、

本タイトルに期待したのですが、全くの的外れでした。

(無論、だからと言って本作が期待外れ、なんてことは断じてない!)

 

前作同様典型的なクローズドサークル系のミステリーです。

芸術大学受験のため1浪中の『私』こと大室里央は、

ある日父親といっしょに、交通事故で死去したばかりの伯父が

所有していた和歌山白浜沖の小さな島を訪れます。

  ※ちなみに彼女、オーウェンの『1984』を一晩で読破してる。

  こんなストレス下で一気に。相当の読書家と見た。

その島をリゾート地として再開発をしたいと提案する

観光改札会社、不動産屋、工務店などの関係者9名で上陸します。

ところがまもなく、島とそこに建てられていた数棟の建物は

大変なことになっていることに一同驚愕をすることに。

しかも翌朝一同が目覚めると、同行者の一人が殺害されていて、

その上犯人からの置き手紙が…

それがキャッチフレーズに出てきた「犯人を探してはいけない。」

その置き手紙には他にも指示が列記されていて、

それが10項目に上るところから『十戒』と揶揄されるようになり、

本書タイトルに。

戒律に縛られた『私』を含め残された人々は不安な時間を

共有することになります。

犯人の指示に抗い、犯人探しをすると全員が殺害されると脅され、

その代わり3日間大人しくしていれば何事もなく島から出ることができると

約束されるのです。

ところがその間にも次から次へと事件は起こり…

 

全体で290頁程度の読み物ですから、前回同様の規模です。

あっと言う間にに読み切れてしまうと思います。

クローズドサークルですから、登場人物は限られます。

犯人は読者の目の前で食卓を囲んでいる中の一人。

『私』とともに「いったい誰なんだ?」「何をしたいんだ?なぜなんだ?」

と苛立ちながら、灰色の細胞をフル回転させて読み進めます。

犯人に目星をつけては修正し、読み返しては推理を立て直し、

そんなことを繰り返しながら最後まで読み進めることになります。

一応参考のため本書16〜17頁にかけてブックマークを挟んでおくと、

登場人物たちの簡単な背景や相関関係が容易におさらいできます。

それから舞台となる枝内島の簡単な見取り図が挿絵のように

29頁に差し込まれています。

この頁にもブックマークを挟んでおくと便利かもしれません。

多くの読者が『方舟』を先に読んでおくことを勧めてくれています。

ストーリーの展開に共通項があるので、それが道しるべとなるか、

ネタバレもどきとなるか、微妙だなぁ。

ただ、本書最後の1、2行は『方舟』既読者にとっては

「んっ??これって…」と感じるところがあるかもしれません。

 

『方舟』を楽しんだ方はきっと本作も楽しめると思います。

別段『十戒』を先に読んでも、まるで問題ありません。