白状します。ここのところ読書をサボってました。

いくつか積ん読はしてるんですが、色々忙しくて。

そんな中、ある読書ユーチューバーさんがライブで

読書会を企画していて、課題図書がコレでした。

早速市立図書館に予約を入れたのが届いたので読んでみました。

(ライブの読書会には残念ながら間に合わず。。。)

 

30余才の若さで余命宣告を受けてしまった海野雫(うみのしずく)が、

瀬戸内海に囲まれたレモン島に終の住処を見出し、

「ライオンの家」と名付けられたホスピスに移り住むところから

物語は始まります。

かなり整えられた環境で、自由に生活ができるような雰囲気。

マドンナと名乗るホスピスの代表を始め、スタッフや

「ゲスト」と呼ばれる入居者たち、それに地域の人々、そして

六花(ロッカ)と名付けられた飼い犬。。。また、

このホスピスには独特な「おやつの時間」があって、

毎週日曜日、入居者が「もう一度食べたいおやつ」をリスエストした中から

一つだけ忠実に再現して皆で食べる時間。

いつ自分のリクエストが答えられるかは分からない。

それがゲストたちにとって馬の前につるされたニンジンのようにもなって。

それから毎朝、違う味のお粥が振舞われるのもゲストたちにとっての楽しみ。

日々の小さな楽しみをつまびきながら穏やかに最期のときを迎える。

という設定です。

 

雫が色々と葛藤の中、心乱され、ジタバタする前半のリアリティーは

中々現実味のある迫力で、相当圧倒されます。

そうだよな、そんなに綺麗に己の死など受け入れられないよな。。。

しかし後半に掛けてあれよあれよ言う間に雫は衰え始め、弱っていくのです。

その描写がまた生々しく説得力がありました。

自分の意識ははっきりしてるのにからだがまるで付いてきてくれない現実や、

その意識さえも途切れたりモウロウとしたりする現実を、当事者として語るのです。

「自分もそうなるのかな」と思うと、恐る恐る読み返したりもしました。

 

ただ、死が近づくにつれてどんどんメルヘンチックになるんです。

この辺りは私たち日本人の死生観だな、と思いました。

もう秋川雅史さんの声で「千の風になんたら〜♫」が聞こえてくる。

せっかくバッハのチェロ無伴奏が流れてるのにぃ。

『黄泉がえり』やら『いま、会いにゆきます』やらを彷彿させる世界観。

どうしてもこのオチがないと安心できないんだろうね。

 

小川糸女史の作品は初めてです。とても丁寧で柔らかい言葉遣いが

心地よく、穏やかな読書体験を楽しむことができました。

特に食べ物を文字で楽しませてくれる作品だったと思います。

「粥有十利」(by道元師匠)だそうですよ。おかゆには10の功徳があるとか。

人が生きるということと食べるということとが美味しく重なってます。

 

ただ、いざ本当に自分が最期を迎えることになったとき。。。

こうはならないだろうな。それは覚悟しなきゃ。

自分の死はメルヒェンではないから。リアルだから。