監督  :三池崇史

出演  :櫻井翔(青江修介教授)、広瀬すず(羽原円華)、玉木宏

    (中岡祐二刑事)、豊川悦司(甘粕才生)、リリー・フランキー

    (羽原全太郎)、福士蒼汰(甘粕謙人)、高嶋政伸、志田未来他

原作  :東野圭吾『ラプラスの魔女』(角川書店、2015)

ジャンル:科学空想ミステリー

 

最近AmazonPrimeの視聴お勧めに頻出するのが煩わしくなり、

観ることにしました(まんまとハマった感満載ガーン)。

 

東野圭吾作品で科学ミステリーと言えばなんたって『ガリレオ』シリーズ。

難解な事件を科学的な理論を駆使して解決する痛快さが売りです。

しかし本作は科学"空想"ミステリーです。確かに科学的な理論で事件解決に

至るのですが、本作で軸となる科学的原理は(今のところ)まだ実現していない。

故に"空想"というミドルネームが付きます。その辺りの揚げ足を取り始めると

この作品は楽しめません。

 

映画プロデューサーと売れない俳優が、立て続けに別個の温泉地で

硫化水素中毒のために死亡。真相を捜査するために麻布署刑事の中岡は、

地球科学の教授青江修介に調査を依頼するが真相解明に行き詰まる。

そこに謎の女性羽原円華が現れ、自らを「ラプラスの魔女」と名乗り、

捜査に強い関心を示し、現場を見たいと青江教授に迫る。

 

さて閑話休題;ラプラスとは、フランス人数学者ピエール・シモン・ラプラス。

ラプラス変換の提唱者。「ラプラスの悪魔」を唱えた事でも名前が残っている。

「もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、

 かつそれらのデータを解析できる能力と知性が存在するとすれば、

 この人にとっては不確実なことは何もなくなり、その目には未来も、

 過去同様に全てが見えているであろう。したがって未来の状態がどうなるか、

 完全に予知できる。」

何か壮大で複雑怪奇な数式を軽快なBGMに合わせて湯川"ガリレオ"学教授

書き殴る場面が思い浮かびますが、実はもっと凡庸な日常の中でもこの原理の

廉価版は起きています。

この間大雪になって、自動車の屋根の上に数十センチ雪が積もって張付きました。

運転する前にそれをガリガリと剥がして落としました。それはそのまま走り出せば

最初は張付いていた雪も車内の暖房で溶け始め、最初の赤信号で停車したならば、

屋根から雪がフロントガラスを塞ぐように滑り落ち、慌ててワイパーで除けよう

ものなら最期、雪の重さに耐えられず、ワイパーのモーターは焼けて故障してしまう。

この一連の流れを雪国のドライバなら「瞬時」に把握して雪を落とすんです。

「未来の状態がどうなるか、完全に予知できる」とは大袈裟ですが、

本作品では、例えば自然界の動きを同じように予知したりできるんかい?

というような謎解きです。

 

羽原"ラプラス"円華が現れてから、ストーリーは大きく展開を始めます。

無関係に思われた二人の死者たちには共通の知人、

映画監督の甘粕才生(豊川悦司)がいることが判明し、家族を巻き込んだ

人間関係が見えてきます。さてさて、硫化水素中毒は自殺か他殺か事故なのか。

羽原円華や他の登場人物はどのように絡んでいるのか。

 

俳優陣は豪華絢爛、福山雅治とは一味違う櫻井翔の教授役も面白いです。

『謎解きはディナーの後で』の執事の雰囲気がなきにしも非らずですが。

広瀬すずさんはもう年齢不詳を含めて「謎の女」です。

クールなTAOさんや高嶋政伸さんも見ものですし、ミステリアスな福士蒼汰

くんも秀逸です。そういえば志田未来さんって、15年くらいに大ヒットした

『女王の教室』の中学生神田和美役だった女の子だよね。

立派な女優さんになったんですね、とか感慨に耽ってしまった。

三池崇史監督のミステリー作品も異色ではなかろうか。

好みは人それぞれですが食わず嫌いは少々勿体無いかもしれません。

ただ愚痴があるとすれば、全体的にテンポがゆっくりで2時間近くの作品が

冗長に感じてしまいました。決して長すぎるというのではありませんし、

どこを割愛できるということでもないのですが、もったり感が拭えない。

それを差し引いても映画ファンにはお勧めできる1本です。