監督:浦山桐郎
出演:吉永小百合、浜田光夫、東野英治郎
ジャンル:ドラマ、ロマンス
その他:モノクロ
「純粋に伝わる熱量が凄まじい。一生懸命に生きる人々を応援!」(Amazonへのレビューを編集)
山本周五郎氏と武田泰淳氏が映画について対談をしている中で、
(これも例に漏れず「KAWADE夢ムック『山本周五郎』」より)
『キューポラのある街』は見たか、と山本氏が質問。
竹田氏は「見たことになっている。もう評論してしまった。」と返答。
冷笑する山本もまた、「最初30分見て映画館を出た」と言って話題が変わってしまいます。
気になるじゃない?
それでAmazon Primeを検索したら視聴できる、という訳で観ました。
1960年前後に原作(早船ちよ、弥生書房、1961年;1959年から雑誌連載)が発表され、
まもなく1962年に映画化。
鋳物製造の街、埼玉県川口市を舞台に、職人意識の過剰な偏屈親父、
その男に泣きながらついていくしかない妻、
そんな家庭環境に辟易している主人公ジュン(吉永小百合さま)、
やんちゃな弟、そしてジュンを取り巻く友人、近所の輩が織りなす下町ドラマ。
父辰五郎が工場を解雇になり、しかも職人意識が高すぎて労働者扱いされることを忌み、
組合の助けを蹴ってしまう始末。家計は火の車。
産んだばかりの赤ん坊を育てるために、母は飲み屋で酔った男客を相手にする一方、
ジュンは自力で修学旅行に参加するためパチンコ屋でアルバイトを密かに始めるわ。
父もジュンの親友の計らいで機械化した工場で再就職をするが、職人気質が仇となってすぐに辞めてしまう。
絶望するジュンは修学旅行を断念、女友達と夜の街を徘徊し身の危険を肌身に感じる。
我に返り、夢だった高校進学を断念、就職を決意する。
他方悩んでいるのはジュンの友人ヨシエも同じ。
北朝鮮出身の父親を持つヨシエは、帰国を考える父親と日本人の母親との間で思い悩む。
ジュンにもヨシエにも弟がいて、彼らの葛藤と友情も心に迫るところがある。
学校の教師(スーパーマン)や友人、社会の先輩たちのサポートを得て、ジュンは成長をし、
「家のために、というのではなく自分のために」生きる道を見出していくようになる。
かつて酔った父に
「ダボハゼの子はダボハゼ。中学卒業したら鋳物工場で働きゃいいんだ」
と蔑まれたジュン、今では胸を張って
「あたいはダボハゼじゃないから、安心して母ちゃん」
と言い切れるようになった。
在日朝鮮人の北朝鮮帰還事業のエピソードが含まれているため、
一部政治的観点から物事を見る人々は、この映画がその事業を推進したと言って批判をするが、
本編を見れば、それは作品に対しては不当な言い掛かりであることはすぐにわかる。
この作品からは生きることへのほとばしるような活力を感じ取ることができます。
ぜひご覧ください。
ただ、何せ古いしカラーではないので、見づらいところはあるかもしれません。