『誰か〜Somebody』に続けて図書館から借りて来ました。

文庫本とはいえ600頁を超える(含杉江松恋氏の解説)一冊。

正真正銘の長編ミステリーですわ。

杉村三郎シリーズの2作目、引き続き事件を見つめる主人公、

刑事でも探偵でもない社内報の記者が連続殺人を追う。

そして彼も彼の身の回りの人々も巻き込まれていく。

 

ただ、宮部さんは人の闇が何かを探ろうとしていますよね。

人は何故権力を求めるのか。「飢えてるんだ。それほど凄く、

ひどく飢えているのだよ。」(322頁)

その飢えに餌を与えなければいけないのですよ。

何をどのように与えたらいいのだろうね。

それを杉村たちは「毒」と呼ぶのですよ。

その毒は青酸カリでもなければ、薬物でもない。

人の中に巣食う、人間だけが持っている毒。

その前に人々は無力なのですよ。

 

解説で杉江さんは、

それでも宮部さんは光を描こうとしている、と

解き明かします。それが懐かしい歌謡曲であったり、

チンドン屋の音色であったり、麗しい景色だったり。

でもそれではとても足りない、と感じました。

 

結構長い作品だったものですから、

しばらく宮部作品はいいかなぁ、と思いながら

読んでいました。

そもそも『ペテロの葬列』が気になって読み始めたんですがね。

ところが、解説の影響力とは偉大なもので、

杉江さんの文章を読み終わった頃には『葬列』の予約を

しちゃってましたよ。

 

手に入るまで『三国志』に戻ります。