直木賞受賞で知ることができた垣根さんの作品。
私は「光秀の定理」に続き2作目となります。

今回の作品は応仁の乱前夜の頃の京都が舞台となっている作品です。
つい先日ちょうど同時期の関東を描いた作品を読んだばかりでしたので、そこの比較もできてとても面白かったです。

このころの関東はやはり関東公方とそれを支える関東管領といった、なんだかなんだと京にいる公方と管領から任命された方々が上に立ち政治を行っている時代。
ただそこには民衆そっちのけで行われている目くそ鼻くそ取ってしまってもいいような醜い身内と言ってもいい間柄での争いだらけ。

今回の作品はその醜い争いをしている結果にこんな暮らしになってしまっているんだよ、の方々の視点で描かれる物語。
そしてこの作品、主人公視点で一緒に色々と成長と言いますか、一緒になって色々な知見と視野が広がっていくのがとても読んでいて楽しく感じる作品です。

私の勝手な感想なのですが、このあと50年から100年もするといわゆる戦国期の室町時代になり、なんとなくその後の大きな流れというものが分かっていながらの物語になるわけなんですが、この時代はまだその流れが全く定まっていない本当に五里霧中状態。

もちろんそのなのは私だけなのかもしれませんが、ちょっと進めば早雲につながるだ、信玄公につながるだ、信長、秀吉、家康みたいな明確なものが私にとって出来上がっていない時代、山名氏?細川氏?大内氏?それとも将軍様?
この主人公がいったいどこに向かうのかも全く想像つかない面白さ。

そしてなにより立場というか視点が我々のように下から上へなのでとても良い。
良く分からない時代で支配する側ではなく支配される側というとてもレベルの高いシチュエーション。

さらにいうとそんな我々の中であっても、読み書きができて武に優れており、自分でものを考えることが出来るといったものを持っているのも本当に丁度いい。

我々の中の人物でありながら、我々に持っていない何かを持っているもの、詰まり我々からすると丁度いい憧れの存在となる主人公。
このとても微妙なところを突いてくるこちらの物語。

文庫本で読んでいるので上下巻となっており、今回は上巻。
この勢いで下巻も読んでみたいと思います。


以上です。