伊吹さんの作品はこれまで何冊か読ませていただいておりますが、こちらもまた素晴らしい作品でした。

長距離バスの運転手である主人公を物語全般を通じのて主人公として、章ごとに一人ずつ変わるスポット的な主人公がいる感じの作品。
その仕組みがいまいちわかっていなかった状態で出会った、第一章に登場する主人公が女で一つで息子を育てた母親。

この母親のこの一言

「自分が意地を張らなければ、息子は日の当たる場所に住めたのかも」
とは地元新潟を離れて、東京で一人暮らしを始める息子が借りた住まいを思い思った言葉

これ、まさにちょうど同じ世代を子供にもつ私としては本当に響きました。

といった感じですぐにどっぷりとハマったこちらの作品。
私としてはめったにない事ですが、物語の登場人物を紹介しておきましょう。
それぐらいハマりました。

主人公で長距離バスの運転手の利一(リイチと呼ばれてますが、本名はとしかずだったはず)。
住まいは新潟にある美越市という白鳥が訪れる場所で暮らしています。
49歳にしては頭が少し硬い。ただそれもまたりいちのいいとろでもあるのでしょう。

東京で小料理店「居古井(いこい)」を営み、利一と良い中である志穂さん。
志穂さんに会うためにお店に通うではないですが、志穂さんに会うためにこちらのページをめくる読者も少なくないでしょう。

利一の息子でなにやら事情があり東京から実家である美越に戻ってきた心優しき兄(にいにゃん)こと怜司。
もう自分の息子のように応援したくなるにいにゃん。
妹思いで父思いで母思いで、おじいちゃん想いで、みんなの事をいっぱい思って。。。

利一の娘で実家をでて友人とシェアハウスで暮らし、ショップ店員をやりながらなにやら人気アイドルとしても活動する彩菜。
しっかりと自分で物事を考えて、沢山の辛いことを乗り越えて、分かり合える友達に囲まれて。
そしてやっぱりにいにゃんや家族の事を考えて。

私は最後の最後まで違った名前で読んでましたが、あの名前を呼ばれるシーンは最高でした。


利一の元奥様で、怜司と彩菜の母である美雪さん。
利一の母といろいろとあり、まだ子供が幼いころに離婚。


新潟にいる父の看病をきっかけに新潟に来る機会が増えたというタイミングで利一と再開すると。
再婚して子供も一人いるようですが、父のこと以外でも色々とあるようで。。。

といったメンバーが主となり、あとはそれぞれの章でとても良い感じの方々が登場するのですが、とくに元有名ロックバンドで現在も細々とながら全国を回って歌を歌い続けているロックスター江崎氏。
そしてその活動を長年支え続ける美越でカフェを営むママさん。

このお2人、瞬間最大風速では本編をしのぐ力を見せつけてくれました。
おそらくですがこの2人で1本直木賞くらすの作品が生まれると思います。
(もしかしたら既にこの2人の作品が出ているのかもしれませんが、それはそれで嬉しい限りです。)

といった面々で語られる物語。
時に心温まり、時に心をえぐられて、時に胸打たれるそんな場面が続きます。


志穂さんが美越に来るタイミングであったり、
怜司、怜司くんよ、どうするどうしたい、私は見守ることしかできないのか、
彩菜ちゃん、あなたの思い考え実行力は素晴らしい、彼と彼の家族はどうでもいいがあとはお母さんとの関係が。。。

といった読み応え抜群な作品。

あとは物語の舞台が新潟という事もあり、私自身としてもとても思入れのある地域の作品。
若かりし頃のこの時期は毎週のようにスキー場に行っておりました。

ただ私が行く新潟は圧倒的に湯沢地域なので、関越トンネルを越えて直ぐのあたりでほんの入り口。
ごくまれにスキーシーズンではない時に海側に旅行に行くと、新潟長いなと感心してしまいます。

 

特に新潟市、あそこに車で行くと湯沢超えてから延々と続くあの感じ、新潟の大きさというか長さをしっかりと感じることができました。
とても懐かしく感じます。
たしかにところどころバス停があったようにも思います。

そんな車での思いたっぷりの新潟ですが、一度だけ新幹線で新潟市に行った事もありますが、あれ車で行った事があるからなのか恐ろしく早く着いたように感じました。
あれこそ本当に時間って買う事ができるんだなと実感できましたが、ただこの作品を読んでしまってはバスで行ってみたいなとも思えるから物語の力は偉大だなあと。

それにあのバスターミナルのカレーは一度でいいから食べてみたいですし。

といった登場人物も内容もロケーションまですべて素晴らしい作品。

「風待ちのひと」「49日のレシピ」「犬がいた季節」そしてこれ。

私が知らなかっただけで、いまさらではありますが凄いな伊吹さんと唸ってこれを書きなぐっております。
まだまだ読んでない作品が沢山ありますので、楽しみで仕方がありません。

といった感じでこちらも読めて良かったです。
ありがとうございました。


以上です。