舞台は播磨。
生まれも育ちも埼玉な私は「播磨」と聞いても何となくあの辺りだなぐらいしか思い浮かべられませんでしたが、この作品のおかげで「播磨」と呼ばれる地域がきちんと明確に理解することが出来ました。
また、物語としてどうしても手にしてしまうものが、攻め込む側でかつ武将視点での作品が多くなってしまいますので、攻め込まれる側でかつ農民視点で描かれるこの作品は非常に貴重で、私の視野を大きく広げてくれた作品にもなりました。

そうなんですよね。
ある視点では、戦略上本格的な戦となる前に、よく武将が「田畑を焼き払え」で、「ハッ」ってさささと描かれることが多いこの事一つでも、焼かれる方は焼かれるまではごく普通に暮らしているわけですし、それが突然の阿鼻叫喚状態になるわけで。
そして今生き残っている大半の方々の先祖は、この阿鼻叫喚側でなんとか生き残ってくれた方々なんですよね。

のんきに信長と秀吉と家康だったら誰が良いと思う?
なんて会話している場合ではないんですよ。
いやいやこれはこれで大事なんですけど、いつまでもこんな感じではいけないなと。
しっかりと認識をさせていただきました。

しかし怖いですよね。
いきなり家に火をつけられて、集団で襲われるわけですよ。
一緒に寝ていた父や母、兄弟、姉妹、子供たちがばっさばっさと殺されていくわけですよ。
そりゃ逃げますよ、しかも夜だったら恐らく真っ暗ですよね。
でその逃げる先がその地域を治めているお殿様のお城なんですよ。

そしてそのお殿様は逃げてきた方々を守るために存在しているんですよ。
ただ年貢を取り立てるために存在しているわけではないんですよ。

ですよですよになってしまいましたが、そういう基本的なこと。
そういうところがこの本を読むまで私のなかでの認識としてかけていたんですよ。
これはなんだか悔しく、情けなかったですね。


といった感じで始まるわけなんですね、この物語は。
ちょっと上の私のグダグダが長くなってしまいましたが、
主人公視点としては、

1.元々は武士の娘さんで現在は妹と弟を支えるの農民の視点
2.元お殿様の近従で大きなトラウマを抱えた武士の視点
3.名家の出ながら大変な苦労をかさね、自ら武の知識を蓄える家老の奥様の視点
4.若輩ながらも領民や家臣を率いるお殿様の視点

5.1の加代さんの幼馴染でこちらも母と妹の世話をする農民の視点


が入り混じるなかなかの骨太の展開、いや骨太すぎる展開。
歴史に詳しい方であればこの二木城をめぐる戦いの行方を知っているのでしょうが、私は知らずに読んでおりましたので、胃が痛くなる思いをしながら読むことができました。

そして凄惨な最後。

 

いや参りました、そして勉強になりました。
ただ例えば最後の主君一族すべての命と引き換えに、その他の命を救うことが決まり、明日命を絶つという前日に敵側からお酒が振舞われて最後の宴会を開く等々、なんといいましょうか、そのような何とも表現が難しい心遣いといいましょうか習慣、風習は必要なことなんだなと。
 
 
 

今はただ恨みもあらじ諸人の 命に代はる我が身と思へば

 

 

 

 


以上